アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1327 【判決】㉖未完

 (上二点の写真は石田養豚場)              

(発見されたスコップは、隠し加減に置かれていた)

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                     【狭山事件第二審・判決㉖】

                             (スコップについて)

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   所論は、原判決は、自白の真実性を補強するものの第六に「死体埋没に使われたスコップ一丁は狭山市大字堀兼の養豚業=石田一義方豚小屋から盗まれたものであるが、被告人はかって同人方に雇われて働いていたことがあって、右小屋にスコップが置かれていることを知っており、容易にこれを盗み得たこと」を挙げているが、捜査当局のしたスコップの同一性の確認経過には疑惑があり、スコップが発見された際の状況も被告人の自白と明らかに矛盾しており、殊に発見場所の近くから地下足袋の足跡が発見されていることは他に真犯人がいて当日地下足袋を履いて行動したと考えられる余地もあるというのである。

   そこで考えてみると、証人=石田一義の原審(第五回)、当審(第十五・五十五回)各供述及び六・二六星野正彦・阿部孟郎作成の鑑定書「附記」の記載によれば、五月十一日須田ギンによって発見された本件スコップは、五月六日ころに被害上申書を提出していた石田一義による確認手続を取らずに五月十二日直ちに鑑定に付されており、石田一義をして同人方のものであるかどうかの確認をさせたのが五月二十一日であることが認められる。しかし、被害者の確認手続が遅れたからといって捜査に落度があると非難するのは相当でなく、殊に本件スコップは一見して農作業や土木工事に使われていたスコップではなく、木部に食用の油が付着していたところから、捜査当局が被害上申書が提出されている石田一義方で養豚用に使用していたものだと考えて、まずもってスコップに付着している油の性質やこれに死体発見現場の土壌が付着しているかどうかなどについての鑑定を急いだのはむしろ当然の措置であったと判断される。

   次に、当審で取調べた五・一二司法巡査=小川実ほか一名作成の「現場足跡採取報告書」によれば、本件スコップが発見された場所の近くで地下足袋の足跡が発見されていることが明らかである。しかし、本事件から相当の日時が経過し、その間に降雨もあったことなどを考慮すると、捜査当局においてその足跡が「本件」の犯人のものかどうかの判断資料として採取してはみたものの、適格性に乏しいものとしてやむなく石膏型成足跡を廃棄してしまったと解するのが相当で、その間他意あるものとは考えられない。この点をとらえて他に真犯人があるかのよう言う所論は相当でない。

   その他、スコップ関係の捜査について、不合理なところや、公正を疑わせるような事情を見いだすことができない。

   ところで、被告人が員及び検調書中でスコップの処置に関して、被害者の死体を農道上に埋めてから自宅へ帰る途中で畑の中へ「放り投げて捨てた」とか、単に「捨てた」と言っていること、スコップの第一発見者である須田ギンが、原審(第五回)において、スコップを発見したときスコップは麦の畝に沿って隠し加減に置いてあったと証言しており、五・十一員 福島英次作成の実況見分調書添付の写真(三冊八六六丁裏)を見ても、そのような状態であったことは所論指摘のとおりで、この点において多少の食い違いはあるけれども、だからといって被告人が犯人でないとはいえない。

   してみれば、スコップは自白を離れて客観的に存在する物的証拠であり、被告人が「本件」の犯人であることを指向する情況証拠であるとみて差し支えない。

    原判決が「死体埋没に使われたスコップ一丁は石田一義方豚小屋から盗まれたものであるが、被告人はかって同人方に雇われていたことがあって、右小屋にスコップが置かれていることを知っており容易にこれを盗み得たこと」を自白を補強する証拠に挙げているのはまことに相当である。それゆえ、論旨は理由がない。

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  ◯狭山事件発生後十日程たってから、死体を埋めた穴の付近の麦畑の中でスコップが発見され、そのスコップに付着していた赤土が穴の中にあった赤土と土質においてほぼ一致するとされたことによって、このスコップは犯行に使われたものという推論が導き出された。

   問題のスコップは事件の十日後の五月十一日夕、被害者=中田善枝さんの死体発見現場から約一二四・六メートル離れた麦畑の中(狭山市入間川字東里二九二七番地)から発見されたが、狭山署特捜本部がこのスコップに付着していた赤土と、死体を埋めるために掘った赤土とは土質がほぼ一致するという鑑定結果を出し、この結果を翌十二日報道陣に発表しているのである。するとこの特捜本部の鑑定は、わずか半日内外の短時間で行なわれたことになる。

   警察が、死体が埋没されていた穴自体の中から土壌を採取せず、新しい穴をわざわざ掘って、そこから土壌を採取しているのは何故か。この辺りにも本件捜査の疑わしさが黒く漂うのである・・・。