アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1287

狭山事件公判調書第二審4370丁〜】 

                        第七十五回公判調書(供述)

                                                                被告人=石川一雄

                                            *

青木弁護人=「今度は、学校をやめてからの職歴について聞くけれども、初め、子守り奉公に行ったんですね」

被告人=「はい」

青木弁護人=「それは何年の時です、小学校の」

被告人=「五年頃ですね」

青木弁護人=「そうするとまだ、学校に行きながら行ったのかね」

被告人=「いや、学校やめてです」

青木弁護人=「六年も少し行ってるね」

被告人=「半年くらい行っていたんじゃないんですか。一回逃げて帰って来て、もう一ぺん連れ戻されて、もう一回行ったんですねえ。逃げ帰ったって、家へ直接じゃなくて、その時親父が大谷くにみちに行っていたんですね、親父が仕事に。大谷くにみちというのは、自分はその時知っていたから、その本家というのが十一軒(原文ママ)のすぐそばにあるんです。十四軒(注:1)というところに自分は子守りに行っていてすぐそばに、そこに逃げて帰ったら名前を聞かれて自分の親父が大谷くにみちに働きに行ってると言ったらそこに連れて行ってくれたんですね、お父さんが。それでまた親父と帰ったんですけれども、二、三日で連れ戻されて、また帰ったんです」

青木弁護人=「それは小学校六年くらいの時じゃないか」

被告人=「五年頃だと思うんですけれども。十二の時だと思うんですけれども」

青木弁護人=「その子守り奉公というのは、家からどれくらい離れていたところ」

被告人=「二キロか、三キロくらいかな」

青木弁護人=「どういう家」

被告人=「百姓家です」

青木弁護人=「本当の子守り奉公か」

被告人=「そうです」

青木弁護人=「子供をしょって」

被告人=「ええ、ねんねこを着て、しょって」

青木弁護人=「幾つになる子」

被告人=「三才だと思いましたね」

青木弁護人=「それをしょってどうしてるの」

被告人=「何時から何時までと、お乳を飲ませる時間だからと言われていて、近所を歩いているんです。何時に帰って来いと言われて、帰って来るんです。だいたい朝七時から夜の八時頃まで。百姓家は飯を食うのが遅いからね」

青木弁護人=「子供をおぶってどこかその辺を」

被告人=「ぶらぶらしているんです」

青木弁護人=「そこにはどれくらいいたの」

被告人=「半年です」

青木弁護人=「その時に何か、うどんを八杯食って笑われたと」

被告人=「ええ、そこでです」

青木弁護人=「そうすると奉公するようになってからは食い物は良くなったの」

被告人=「良くなったというか、自分の家はあまりにも悪すぎましたからね」

青木弁護人=「家にいるよりは」

被告人=「ずっと良かったですね」

青木弁護人=「腹一杯食えた」

被告人=「めし、というか、めしを食えたからね、麦めしでも」

青木弁護人=「その次はどこへ行ったの」

被告人=「それから自分のお袋の兄貴の・・・」

青木弁護人=「石川靴店

被告人=「ええ、そうです。子守り奉公から逃げてきて少し経ってから」

青木弁護人=「逃げてきたの、結局」

被告人=「二度目に逃げてきて、それから行かなかったんです」

青木弁護人=「その石川靴店はどこにある」

被告人=「国分寺です」

青木弁護人=「ここはどれくらいいた」

被告人=「ここはちょうど半年です」

青木弁護人=「何か親類になるの」

被告人=「お袋の兄貴だと思いました。名前は分からないけれども」

                                            *

裁判長=「石川茂じゃないの」

被告人=「それはおじさんの子供ですね。"のぶ"というのがもう一人おりますけれども、おじさんは何て言うか分からないんです」

                                            *

青木弁護人=「どういう仕事をしたの」

被告人=「修繕する靴や皮を洗ったんです」

青木弁護人=「それから」

被告人=「それからあとは朝早く起きてウインドを拭くとか」

青木弁護人=「靴を洗うというのは」

被告人=「修繕だからその底を洗うんですね、たわしで」

青木弁護人=「皮を洗ったこともある」

被告人=「はい」

青木弁護人=「皮というのはどういう皮」

被告人=「修繕する皮を二枚重ねて使うから、石なんか入っているとうまくないから洗って重ねるんです。当時は皮が足りなかったから、そういうので誤魔化していたんですね」

青木弁護人=「古い皮」

被告人=「ええ、古いのです」

青木弁護人=「古い皮を洗うの」

被告人=「ええ。洗って二重にするのの中のほうに入れてしまうんです。間にね。わからないから」

青木弁護人=「上に新しい皮を張って、中に古いのを入れる、それを洗うの」

被告人=「ええ、そうです。それが仕事だったんです」

青木弁護人=「ここの家の人から何か言われたことは」

被告人=「あります。当時は分からなかったけれども、今は分かりますが、当時は菅原町から来たということを近所に言わないでくれと」

青木弁護人=「誰から言われた」

被告人=「姉さんって言っていたけれどもおばさんなんですね、ひとえさんとか」

青木弁護人=「ご主人の奥さんかね」

被告人=「ええ、そうです」

青木弁護人=「四丁目から来たということを言わないでくれというのは、じゃ、その姉さんのほうは、四丁目というのは、部落から来たことを人に知られるのが嫌だからかね」

被告人=「その時は認識しなかったけれども、当時はそういう風に言わないでくれというのは分かりませんでした。今は分かりますけれども」

青木弁護人=「それから言葉を注意されたことは」

被告人=「あります」

青木弁護人=「誰から」

被告人=「おばさんとか、姉さんなんかに注意されたんです。四丁目では毛虫のことを"けんむ"と言うから、"けんむ"というのはうまくないから毛虫と言えと。"けんむ"と言うと分かるからねえ」

青木弁護人=「言葉づかいで分かるから、そういう言葉を使わないでくれと」

被告人=「ええ、そうです」(続く)

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注:1「十四軒(じゅうしけん。なお"トヨノキ"と呼ばれた時期もある)」=埼玉県所沢市下富地区に存在する地域名。正式な地名ではないが、交差点名として使われているほか(写真①)、自治会の名称にもなっている。

(↑写真①)

◯画像上部に見える「狭山市」との表示のやや右付近が当時、石川被告の住んでいた家の位置であり、供述に出てくる「十四軒」という場所は画像下部に確認できる。見ての通り、歩いて移動するにはなかなかの距離があり厳しいものがある。まあ、両者の位置関係としては画像が示す通りである。