【狭山事件公判調書第二審4366丁〜】
第七十五回公判調書(供述)
被告人=石川一雄
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青木弁護人=「それから学校の先生が、前っ原の子供とか、新宅の子供に特別な取り扱いをしたということがあった」
被告人=「ありました。自分の同級生ですけれども、金がなくなって、三年か四年の頃」
青木弁護人=「何という子供」
被告人=「石川寅夫です」
青木弁護人=「どこの、前っ原」
被告人=「新宅のほうです。この自分の単車の件でやった人です」
青木弁護人=「同じクラスだった」
被告人=「そうです。そして金がなくなって、たぶん休み時間で、自分とドッジボールをしていた気がするんです。はっきり分からないけれども、その時なくなったらしいんです。PTAの金が百二十円だと思いました。それで、寅夫というのが取ったろうといって、確か自分たちは遊んでいたから取らないという記憶があるんですけれども、結局認めたんですね」
青木弁護人=「どうして」
被告人=「認めるまで、バケツに両方水を入れて職員室に立たされて、その結果たぶん認めたと思うんですけれども。それでたぶん次の日、親が一緒に来て金を払ったような気がするんですけれども」
青木弁護人=「取ってないのに」
被告人=「取ってないとは、絶対にとは自分は言えないけれども、たぶん自分と一緒にいたから、ちょっとやれないと思うんですね」
青木弁護人=「取られた時刻に君は一緒に遊んでいたから」
被告人=「ええ、ドッジボールしてね」
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青木弁護人=「石川君自身も、何か不当な嫌疑をかけられたことがあると言ったね」
被告人=「ええ、あります」
青木弁護人=「それは何年の時か」
被告人=「十三、四才で山学校に行っててね、十三才ですね。当時の記憶はなくて、狭山警察に電車転覆事件に対して嫌疑をかけられたんですね」
青木弁護人=「山学校にあなた仕事に行ってる時に電車転覆という事故が起きて、嫌疑をかけられた」
被告人=「そうです」
青木弁護人=「そして警察に連れて行かれた」
被告人=「ええ」
青木弁護人=「そして一晩泊められた」
被告人=「泊められないんです。自分は逃げちゃったんです、昼の時にね。自分がほとんど認めてしまったんですね、調書なんか全部取ったからね」
青木弁護人=「どうして認めた」
被告人=「毛ば、なんか引っ張ったんですね、当時ものすごく辛かったですね、当時は坊主だったから、頭なんかこずいたりしてね、ほとんど認めたんです」
青木弁護人=「怖いから」
被告人=「はい。地理的にもよく知っていたからね、転覆があったところは。未遂ですから、三通くらい調書を取ったと思いますね。写真見せられて、これがそうだったって認めたんですね。丁度昼になって、一人で、飯とりに行ったその隙に逃げてしまったんですね。それで次の日、親父と一緒に行ったら、山学校の高橋四郎という人が、雇用者名簿を持っていたんですね。この日は居たからと認めてくれたんですね」
青木弁護人=「それで嫌疑が晴れた」
被告人=「はい、そうです。その時はものすごく狭山で騒いだんですね」
青木弁護人=「その時も君はやっていないのに電車転覆の未遂かなんかを認めたというの。警察にひっぱたかれたりして怖くて、ひっぱたかれたかどうか、まあ、嘘の自白をした」
被告人=「はい、そうです」
青木弁護人=「アリバイを高橋四郎という人が証明してくれたので」
被告人=「親父と一緒に警察に行ったんですけれども、逃げて、次の日、家に帰ったら警察が来ていたらしく、明日一緒に来てくれと言われて次の日行ったんです。その日はちょうど入間川警察から狭山警察に変わる日だったんですねえ、何日かは今、記憶ないんですけれども、名前が変わったその日なんですねえ。それではっきり分かるわけなんです」
青木弁護人=「高橋四郎という人は大学の先生をしておった人だそうだね」
被告人=「そうです」
青木弁護人=「先ほど言ったけれども、狭山の地方では部落の人のことを"かわだんぼ"と呼ぶのか」
被告人=「そうです。そういえば、ほとんど四丁目の人だということを知らない人はないね」
青木弁護人=「"かわだんぼ"というのは四丁目のことか」
被告人=「そうです」
青木弁護人=「柏原部落というのがもう一つあったね」
被告人=「はい、二キロくらい離れてね」
青木弁護人=「あそこの人のことは」
被告人=「ちょっと分からないですね」
青木弁護人=「知らない」
被告人=「ええ、学校が全然違いますからね」
青木弁護人=「四丁目の人のことは"かわだんぼ"と呼ぶ」
被告人=「はい」
青木弁護人=「子供たちも大人もみんな言うんだね」
被告人=「それは、そうです」
青木弁護人=「四丁目とも言うのか。四丁目、それだけでも分かるのか」
被告人=「分かります」
青木弁護人=「四丁目の人といったらもう部落の人だと」
被告人=「そうですね。"かわだんぼ"と言うほうが一番よく分かりますね。床屋がひどかったからねえ、一番に」
(続く)
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◯さて先日、「所沢 彩の国古本まつり」で購入した『推理小説入門』(300円)であるが、これを購入した理由をここへ記しておく。

何と言ってもまず、松本清張が「推理小説の文章」という意見を述べている点が読書欲をそそり手に取ったのだが、他の執筆陣の職業を確認後、これは何としても読まねばなるまいと、本が歪むほどに力強くこれを確保した。
本書には七名の執筆者が関わっているが、、そのうち二名が警察関係者による執筆、残る二名は東京都監察医の方なのである。それを記すと、『裁判と証拠』の項は警察庁刑事局=桐山隆彦、『毒物の知識』の項は東京医科大学教授(元東京都監察医務院)佐藤文一、『監察医の話』の項は東京都監察医務院課長=吉村三郎、『犯罪捜査』の頃は元警視庁刑事部鑑識課法医学員、現・シナリオライター=長谷川公之となっている。
推理小説家のみで著作されたものであったならば購入は見送ったが、このような、いわゆる捜査関係者が執筆に関与しているとなるとこれは興味をそそり、買わずにはいられなかったのである。推理・推測と事実・現実が融合している、なかなか期待できる古本である。
なお、本書を『日本の古本屋』で検索すると、底値が千円、程度が良いと二千ほどで見つかる。したがってこれが三百円で販売されていた所沢の古本まつりは良心的な催しであると評価出来よう。また、とある古書店で五桁の値が付いている詩集が千円で販売されていたという話も聞く。次回もこのまつりには参戦しようと決意する。
