アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1284

(昭和三十年代の日本の景色。具体的な場所は不明)

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狭山事件公判調書第二審4364丁〜】 

                        第七十五回公判調書(供述)

                                                                被告人=石川一雄

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青木弁護人=「先ほど着物が汚ないということを言われたと。それはもう少し具体的に言うとどういうことなの」

被告人=「結局、一般の人、というとおかしいけれども、普通の人は学生服を着ているんですね。自分たちは服を着ていて、継ぎがあたったり、汚れているから汚ないと。結局風呂に入れない状態だから首の回りにも垢が付いていたと、そういう状態ですね」

青木弁護人=「汚ないと言って一緒に遊ばない」

被告人=「遊んだことは一回もないですね、町の者とは」

青木弁護人=「汚ないと言っていじめるの」

被告人=「はい、そうです」

青木弁護人=「具体的に言うと」

被告人=「殴るんですね」

青木弁護人=「それは小学校一年生頃からあったと」

被告人=「はい、ありましたね」

青木弁護人=「そのほかにはどういうことがあった」

被告人=「そのほかには入曾のほうから」

青木弁護人=「いやこれは後で聞くから。言葉で言われたことはないの」

被告人=「かわだんぼ、とかねえ、意味は分からないんですけれども」

青木弁護人=「それは、しょっ中言われた、学校で」

被告人=「ええ、学校でね」

青木弁護人=「同級生ばかりじゃなくて上の子からも」

被告人=「ええ」

青木弁護人=「意味は分からなかったの」

被告人=「当時は分からなかったんですねえ。今は分かりますけれども」

青木弁護人=「差別だということが分かるようになったのは」

被告人=「ここに来てから、いろいろ勉強してからで、それまでは白い目で見られていることは分かりましたけれども、それが部落差別だということは分からなかったんですねえ」

青木弁護人=「そういうはっきりした認識を持ったのは」

被告人=「控訴してから」

青木弁護人=「いろいろな本を読んで分かった」

被告人=「はい」

青木弁護人=「それまでは、そういう風に差別されていたけれども、それが部落差別だという認識は」

被告人=「なかったです」

青木弁護人=「それから同じクラスの子供が、君は犬の肉を食っているから臭いというようなことを言われたというが、そうなの」

被告人=「はい、そうです。ウサギとかね、ヤギ、そういう肉を食ったり、ということなんですね」

青木弁護人=「それは四丁目の人がそういう肉を食っているということからなの」

被告人=「そうですねえ、食ってるというより、そういう仕事に従事している人が前っ原で四軒あるんです」

青木弁護人=「皮を取扱う人」

被告人=「ええ。鳥と、ウサギ、犬」

青木弁護人=「そういう肉を食っているから臭いということをクラスの子供があなたに言うの」

被告人=「いや、おればかりじゃなくて、ほかの者にも」

青木弁護人=「前っ原の子供たちに言う」

被告人=「はい、そうです」

青木弁護人=「クラスで前っ原の子供は何人くらい居たの」

被告人=「自分のクラスで前っ原は二人です」

青木弁護人=「新宅のほうは」

被告人=「二人ですね、女が一人居たから」

青木弁護人=「その人たちにそういうことを言うの」

被告人=「はい、そうです」

青木弁護人=「いじめられて泣いて帰ったことがある」

被告人=「これはもう何回もあって、勘定なんかしきれません」

青木弁護人=「一年生から」

被告人=「はい」

青木弁護人=「その時、それじゃどうして自分がいじめられるかということまでは分からなかったんですね」

被告人=「ええ、分からなかったんです」

青木弁護人=「それは、しょっ中あったの」

被告人=「ええ、これはもう何回もあったです」

青木弁護人=「五年くらいになってからは」

被告人=「四年生か・・・・・・、とにかく自分が畑仕事をして、鍬なんかを使うようになってからは力が出て来て、それからはあべこべに殴るようになったですから。それからは汚いとか、そういうことはね」

青木弁護人=「直接あなたに言うことはなかった」

被告人=「向かっては言わなかったね」

青木弁護人=「言えば」

被告人=「反対に殴られるからね」

青木弁護人=「けんかしても負けなかった」

被告人=「ほとんど負けなかったですね」

青木弁護人=「それから、今ちょっと出かかったんですけれども、入曾の子供の話をして下さい」

被告人=「入曾の子供って、やっぱり肉なんか食っているから"かわだんぼ"って分かりますけれども、当時は分からなかったけれども、そういうことを言いながら石なんかを投げて来るんですね。入曾の子供が四丁目に投げに来るんですね」

青木弁護人=「わざわざ四丁目に投げに来るの」

被告人=「ええ、そうですね、だいたい一キロくらいありますけれども、それでそういうことなんかは親父に何回も言っても、取り合ってくれなかったんですね」

青木弁護人=「それは何回もあったの」

被告人=「これはもう何回もありました」

青木弁護人=「小学校何年くらいから記憶している」

被告人=「三年くらいですね」

青木弁護人=「それをお父さんに言っても」

被告人=「取り合ってくれなかったですね」

青木弁護人=「ということは、黙っている」

被告人=「かもうなかもうな、と言っただけです」

青木弁護人=「入曾の子供が来るというのは、大勢が来るの」

被告人=「勿論そうです。十五人くらいですね」

青木弁護人=「あなたのほうもやるんじゃないか」

被告人=「やりますけれども、部落ですから、そんなに対抗できるだけいないんですね」

青木弁護人=「だから結局負けてしまうと」

被告人=「兄貴などほとんど、弱かったですね、自分たちより。で、そういうことをしなかったから」

(続く)