アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1265

写真は現在の狭山市上赤坂・堀兼付近。この緑豊かな景色は、事件当時とほぼ変わっていないと思える。

   狭山事件というものに興味を持ってから、老生は幾度となくこの地を散策しているが、驚くことに四月下旬から五月初旬にかけて、これはつまり当時の、事件発生と同時期という趣旨だが、現地の農作業現場では未だに人力による農薬散布やさまざまな畑の手入れなどに勤しむ人々の姿が見られるのである。さて何が言いたいかというと、このような状況の中を、とある青年が女子学生を連れ歩行した場合、かなり目立つということである。男と女が連れ立って歩くような場所ではないのだ。

   狭山事件での、石川被告人と被害者の出会い地点はここではないが、状況としてはほぼ一緒である。

狭山事件公判調書第二審4311丁〜】

   別紙三、事実取調請求却下決定に対する弁護人の異議申立ておよびこれに対する決定。

   二   異議申立ての理由

   2   ビニール風呂敷についての鑑定請求を却下する決定について。

副主任弁護人=「ビニール風呂敷について先ほど裁判所は、被告人の自白が曖昧であり『ちょっと引っ張ったら切れた』という自白もあれば、『少し力を入れたら切れた』という自白もあって、必ずしも具体的に特定できない状況で鑑定してもあまり意味がない、という趣旨のことを言われました。確かにその点を捉えれば裁判所の言われるとおりですが、しかし弁護人の鑑定事項には、このビニールに加わる張力あるいは引っ張る力だけを掲げているわけではありません。例えば、自白のように引っ張った場合に果たしてビニールの両角が同時に切れるものであるかどうか、これはかなり重要な意味を持つものです。本件のビニール風呂敷には、恐らく犯行以前に生じたであろうと思われる疵(きず)があります。自白のように引っ張った場合、その疵がどうして関係して来ないのか、ということはなかなか私ども素人に分かる問題ではありません。客観的な、あるいは科学的な事実認定のためには、これらの点を正式に調査するような鑑定が必要であると私どもは考えます」

                                            *

山上弁護人=「ビニール風呂敷の鑑定請求について、裁判所のご判断の基礎になっている理由は、不確定的な要素が多い、したがって鑑定結果が出ても資料に用いる実効性が乏しい、あるいは意義がない、ということであろうと思います。

   しかしながら、私どもがいろいろやってみて、不確定的な要素がありながら尚且つその中に物理的な法則がある、そういうものが自供調書の信憑性あるいは、いろいろな角度からご検討いただく場合に極めて示唆に富んだ結果を持っているのではないか、ということで不確定的な要素があるということは或る程度含んだ上で鑑定請求をしたわけです。

   そういう不確定的な要素を超えて鑑定する法則性があるのだという科学者の極めて大雑把なことではありますが、吟味的な実験をした上での鑑定請求であるということも含めて考えて頂きたいと思います」

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   3.証人尋問の請求を却下する決定について

副主任弁護人=「部落問題について裁判所は多くの刊行物を研究されて、この問題について関心を持っておられることに対しては敬意を払います。しかし、公刊されている物の研究だけで私どもの立証しようとすることが総(す)べて儘されているかといいますと、そうはいきません。特に本件の具体的な被告人の生活歴、被告人の当時の具体的な行動と結び付けて、これらの証言をしてもらうということになりますと、裁判所が先ほど挙げられたような著作では、まだまだ不十分であると私どもは考えております。

   次に、小島朝政と石川六造につきましては、現場の検証と密接な関係があります。両証人については既に当公判廷で取調べが済んでおります。その意味では再尋問の申請ですが、弁護人はこの両名によって、石川被告人の自宅で六月十八日あるいは六月二十六日の捜索差押の状況を再現してもらって、これは対質的な意味において取調べて頂きたいのです。

   このことによって、被告人の自宅の鴨居に隠されていたという万年筆の問題は決定的に明らかになると私どもは考えております」

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山上弁護人=「部落問題について寺尾裁判長は、『破戒』に始まって、ものすごい勉強をされたとのことですが、ただ本を読めば読むほど部落出身者の声を直接聞きたいという心の中の要求が起こるほどにはまだ読み方が足りない。

   徹底的に真剣に読むならば、当事者に当たって聞いてみたい、差別的な中で育った環境にある者が警察に対して、あるいは自分の身を守るためにどういう風な反応をとるだろうか、ということが青木弁護人の弁論の中核をなしているわけです。本で読んだだけでは不十分であると同時に、読めば読むほど実際に体験した者に当たってみたいという気持ちが起こるような読み方をして頂きたいと思います。

   その点から再度の考案をお願いしたいと思います」

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   4   まとめ

副主任弁護人=「実体的真実を発見するという意味におきましても、被告人の防禦を全うするという意味におきましても、本日異議申立てにかかる証拠調べは是非とも必要であると私どもは考えます。

   裁判所は、客観的な科学的な事実認定のためにも、そして、更新に当たって直接主義の要請を満たすためにも、これらの証拠は不可欠のものと考えます。

   裁判所が、これらの証拠調べ請求を却下したことは、とりもなおさず、刑事訴訟法第一条の実体的真実を極める努力を怠るものであると私どもは考えざるを得ません。是非ともご再考をお願いして、これらの証拠調べ請求を認めて頂きたいと思います」

(次回、異議申立てに対する裁判所の決定へと進む)