アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1259

狭山事件公判調書第二審4270丁〜

                         第七十四回公判  (昭和四十九年五月九日)

                                            * 

裁判長=「二十四。前同事実取調請求書中六、提出命令(二)の足跡石膏(スコップ発見現場で採取されたもの)は、検察官の意見書によれば、既に廃棄処分されて現存しないということなので、その措置の当否は大いに問題でしょうが、今となっては詮のないことだと存じます。

   二十五。つぎに、同じく提出命令(三)の、本件捜査記録に添付されている写真全部の連続ネガフィルムですが、検察官手持ちのネガフィルムをすべて弁護人に開示せよという訴訟指揮は出来かねると存じますが、検察官としても個別的に指定されれば命令を待たずに提出に異議はないとのことですので、先ず、弁護人としてはどの部分が必要なのか釈明を求めます。なお、ついでながら裁判所としては、先ほども申したように、関口邦造作成の実況見分調書添付の写真一連のネガフィルムのほかに、昭和三十八年六月十八日被告人方を押収捜索した際の調書に添付されている写真のネガフィルム、ことに記録第三九七三丁裏第十四の写真を含む一連のネガフィルムの提出は少なくとも相当であろうかと考えています」

副主任弁護人=「今すべてを申し上げることは出来ませんが、できるだけ具体的個別化して後に書面で提出します。弁護人は従前から、少なくとも検察官は我々に本件の捜査記録に添付されている写真のすべてを開示すべきであると主張しております。この主張自体について私どもは誤っているとは考えておりません。ただいま裁判所から個別化するように言われましたが、それが相当な意見であると考えたわけではありませんが、進行を合理化する意味で個別化したいと思います」

裁判長=「検察官は、ネガフィルムを開示されたのではないでしょうか。以前打合せの時、山梨検事がそのようなことを発言されたように記憶しているのですが」

副主任弁護人=「全部開示を受けた記憶はありません。ベタ焼きについて一部見せて頂いた記憶はあります」

裁判長=「開示してもらわなければ特定のしようがないと言われるのですか」

副主任弁護人=「そういう意味でございます」

裁判長=「検察官の方では、このようなものを見たいということになればいつでも出せる用意がありますか」

大槻検事=「現時点で具体的にどのように保管してあるのか、その点私は必ずしも具体的に承知しておりません。係の者に問い合わせたところ、あることは間違いないようですが、今直ちに持参できる状態にあるかどうか、そこまでは確認しておりません」

裁判長=「どこに保管してあるのですか」

大槻検事=「検察庁に保管してあります」

裁判長=「保管してあるものを場合によっては全部弁護人に見せて、これは必要だこれは不必要だ、どういう立証趣旨で必要だということを明らかにすれば、そう害はないのではありませんか」

大槻検事=「全部ということになると、かなりな量になると推測します」

山上弁護人=「構わないではないですか。労は惜しみません」

大槻検事=「当方が困ります。しかも、必要性がどの程度あるか。私は決してこれをお見せしないと言っているのではありません。個別的に必要性を具体的に述べられるならば、これはいくらでも考慮する余地があります」

裁判長=「それでは、本日の決定としては、裁判所が述べました関口邦造作成の実況見分調書に添付の写真および昭和三十八年六月十八日付=小島朝政作成の捜索差押調書に添付の写真を含む一連のネガフィルムくらいではいかがですか」

副主任弁護人=「本日はその二つに決定して頂き、その余については弁護人の方でも出来るだけ個別化・具体化しまして、もう一度書面を提出します」

裁判長=「つぎは、検察官の請求分について決定します。前の構成で決定を留保された分についての弁護人の意見は、昭和四十九年三月二日付書面で、従前のとおりである、要するに全部不同意であるということになると思いますが、そのうち、検察官請求番号五二の遠藤恒義の鑑定書については、検察官は刑事訴訟法第三二一条一項三号に準じて請求すると言っておられますが、この点についての弁護人の意見はどうですか」

副主任弁護人=「意見を申し述べる前提として、検察官に如何なる根拠に基づき法第三二一条一項三号書面に準ずるのか釈明を求めます」

大槻検事=「この鑑定書の作成者である遠藤恒義は、この取調請求の時点で既に死亡しております。従いましてそれは刑訴法第三二一条一項三号の、供述者の死亡という規定の形式的要件における『死亡』に該当し、当然公判期日または公判準備期日において供述することができない場合、に当たる。つぎに、この鑑定書は改めて申すまでもなく本件被害者の中田方へ届けられた脅迫状の筆跡が果たして被告人の筆跡と同一であるかどうかということについて、の鑑定の経過および結果を記録したものです。そういう筆跡鑑定が犯罪事実の存否の証明に欠くことができないことは改めて説明を要しないところであります。また、この鑑定書は、検察官がかつて述べた意見の中にもありますが、従来取調べられたところの鑑定書とは異なる角度から新たな考察を重ねている部分もあり、鑑定書自体かなり詳細且つ具体的な内容で、その信用性においても欠けるところはない。

   以上が、検察官がこの鑑定書を法第三二一条一項三号に準じて請求した理由であります」

裁判長=「鑑定人が死亡した場合のその鑑定書の証拠能力というのはかなり問題があろうかと思われます。判例も、古いのが一つあるくらいです。この点については、休憩後に決定します」

(続く)