アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1258

狭山事件公判調書第二審4266丁〜

                         第七十四回公判  (昭和四十九年五月九日)

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副主任弁護人=「弁護人は必ずしもこの録音テープを法第三二一条一項三号書面またはそれに準ずる書面とは考えておりません。むしろ、証拠物と考えております。従いまして、これと事件との関連性があれば一定のものには証拠能力が付与される、もちろん弁護人としても無制限に付与されるとは考えておりません。とにかく刑訴法を作成した当時に録音テープをどのように取扱うかについては明確な考え方はなかったという風に私どもは考えております。録音テープについては、事件によりますが、その事件事件によって具体的に証拠能力あるいは証拠資格を判断して然るべきだと考えております。従いまして、私も法第三二一条一項三号書面またはそれに準ずるものとは考えておりません。そういう観点から裁判所のご判断を頂きたいと思います。

   仮にもし、法第三二一条一項三号の書面に準ずるものと考えられた場合は、先ほど裁判長が言われましたように、成立については争いがなく、問題は実質上異なる供述になるかどうかということですが、私も小川とらの尋問に立会っておりましたが、言葉の上で記憶を失ったということは小川とらは言わなかったかも知れません。しかしその証言自体をみても、記憶を喪失していたことは歴然たるもので、殆ど証言出来なかったという状態でした。そこで法第三二一条一項三号を準用されるとしても、是非ご採用願いたいのです」

裁判長=「物として何か意義がありますか」

副主任弁護人=「録音テープの中に供述されている言葉の意義が問題になるのです」

裁判長=「証拠物であることは否定しませんが、証拠物の中味が供述録取的なもので、それが証拠に関わりを持つわけで、物それ自体は録音テープであるというだけのことではありませんか」

副主任弁護人=「そういうことだと思います。ですから物自体としては意義は無いかも知れませんが、供述調書との違いは、その作成された経過と刑訴法が要求している署名押印という形式的な点が異なるものだと思います。しかし、このものが真実かどうかは何しろ供述者の肉声がそこに入っておりまして、そういう意味では書証と異なると思います。証明される内容という点から言いますと、これは確かに全く書面と同じ意味合いを持っており、供述の内容が問題となるような書証と同じ面を持っておりますが、しかし供述調書と全く同様に考えることはできないと考えます」

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裁判長=「石田弁護人にもう一度尋ねますが、時計の発見経過に疑惑があり、事前工作された疑いがあるということで小川とらに面接を求められたのでしょうか」

石田弁護人=「そういう懸念もあったと思いますし、時計発見現場付近の民家の人達にいろいろ聞いたし、その中で小川とらさんの存在を知り、それで小川さんの当時の自宅に伺ったわけです。ですから、今のご質問の疑惑は、弁護人は当時どの程度まで意識していたか現在は記憶ありませんが、その意識が存在したことは間違いありません」

山上弁護人=「裁判所は当初から、証拠物化したものはいいんだという考えを我々にお示しになっており、そういう意味では正に録音は書面としての意義が問題になるのでしょうが、考え方にもいろいろあるでしょうが、証拠物化した証拠と言いますか・・・・・・」

裁判長=「証拠物化したものではなく、物そのものなのです」

山上弁護人=「ですから、どういう法令上の観点から証拠能力が付与されるかということはともかく、これで取調べて頂ければと思います」

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裁判長=「前同事実取調請求書中、六の提出命令の(一)地下足袋一足については、検察官においても、裁判所が提出を相当とするならば命令を待たないで提出に異議はないということですが、立証趣旨の記載がありませんので弁護人にその点を伺ったうえ採否を決めたいと思いますが、この地下足袋一足によって〈証明すべき事実〉はどういうことになりますか」

副主任弁護人=「被告人の自白調書でも明白でありますが、被告人は当初の段階で共犯を主張し、あるいは、これは私ははっきり記憶致しませんが捜査当局も捜査の初期の段階で共犯者の存在の疑いを持っていたようであります。

   それで、このようなことが言えると私は考えます。この事件について被告人の自白のように被告人が単独で犯行を為したものではない。地下足袋は少なくとも被告人が履いて行った物ではない。被告人は後の自白で一貫しておりますが、五月一日は長靴を履いていたと供述しております。ところが犯行現場に関連のある所で地下足袋が発見された、とすれば、この犯罪には地下足袋を履いた者が関与したかも知れない。いや、あるいは関与した公算が極めて大である、つまり、被告人の自白、被告人が単独で本件を犯したとする被告人の最終的に確定した自白をくつがえす事実ではないかと確信します。それが立証趣旨です」

石田弁護人=「ちょっと補充します。この地下足袋一足は、スコップの発見現場で須田という者によって発見されたというのでございまして、その点、被告人の検察官調書によりますと、検察官は被告人に対して取調べの上で何回か問いを発しております。そして、その問いに対して被告人の答えは否定した答えになっていたと思います。従いましてその被告人の自白が虚偽であることを示す証拠であると考えます。そして同時に検察官・取調官も当時この地下足袋を否定する被告人の犯罪の嫌疑について、それなりの疑念を持っていた筈であるということも立証致します」

裁判長=「それでは、そういう立証趣旨で取調べることに決定致します」

(続く)