アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1257

狭山事件公判調書第二審4265丁〜

                         第七十四回公判  (昭和四十九年五月九日)

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(弁護側申請の小川とらの供述録音テープの取調請求について)

大槻検事=「必要ないと思料します。その理由は既に書面によって提出したとおりですが、さらに敷衍(ふえん)すれば要するに小川とらの証人尋問調書を精査するに、結局録音テープを聞かせた後の尋問において、弁護人の誘導的な問に対してこれを肯定するような証言をしているわけです。従って、その録音の中で述べられていることは、証言としてもそれを承認するような供述をしている。ですからそれに加えて録音テープを取調べる必要は全くないというのが検察官の意見です。

   なお裁判長の説明の中に、刑事訴訟法第三二一条一項三号を準用する余地があるということもございましたが、その点について検察官は、法第三二一条一項三号の書面に該当しないと考えます。というのは、先ず形式的な要件として何らかの事情で取調べが出来ないという時に、初めて例外的に伝聞法則を排除するという伝聞法則の例外規定としてのみ、このような書証の証拠能力が付与されるということが刑事訴訟法の建前であって、既に小川とらを公判準備期日に証人として取調べ済みであるという点からして、先ずその形式的な要件を欠くことが明白である。

   もしそれが、供述者の記憶が時間の経過によって曖昧になり、不正確であることを捉えて、仮に法第三二一条一項三号の要件に合致するという風な考え方が容認されるとすると、一般的に警察官が参考人を取調べた場合、作成された参考人調書、これが作成日から非常に時間的間隔をおいて取調べられたとすれば、恐らく証言が不明確になり、総(すべ)て警察官が取調べた参考人供述調書が法第三二一条一項三号書面ということで取調べざるを得ないということになる。という風に考えておりますが、左様なこと自体はやはり刑訴法の建前上、到底容認されないことである。それから、記憶力が減退したということですが、それは一つの推測としてならばそういうお考えをお持ちになることも可能だと思いますが、必ずしもこの小川とらの公判準備期日における供述調書記載によりましても記憶が減退したということを特に強調している節はございません。むしろ、忘れたというような証言は殆ど無かったと記憶しております。ただ耳が遠くなったということは出ております。しかし、耳が遠くなったがために果たして証言能力にどの程度具体的な影響があったかという点になりますと、小川とらの公判準備期日における供述調書によりましても別にそのことが格別証言をする上で障害になったと窺われる節は全くありません。従って耳が遠くなったということが、法第三二一条一項三号により証拠能力を付与するための形式的要件の一つとして規定していますところの身体の障害に当たるとは到底考えられないところである。特信性の問題についても検察官は、前にその点に触れた意見を述べておりますが、なるほど作成の真正については明白でありましょう。しかしこの録音テープの内容を聞いておりますと、この録音を録る前に弁護人は小川とらという人物に接触されて、いろんなことを聞いておられる。その上でさらに、今度はテープを録るぞということで更(あらた)めてお聞きになった形跡が歴然としている。そういうことになりますと、その供述の信用性ということが非常に疑問になる。

   以上述べたような諸点から検察官としてはこの録音テープは刑事訴訟法第三二一条一項三号該当書面ではないと確信致します。従ってこれに準じた書面として扱われることについても異議があります」

(続く)

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◯ふう〜。鉄壁なる検察官の意見であるな。これを法廷において台本など見ずに語るのであるから彼等は凄まじく優秀な人種と言えよう。