アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1254

狭山事件公判調書第二審4256丁〜

                         第七十四回公判  (昭和四十九年五月九日)

                                            * 

裁判長=「本日開廷前に一部の弁護人が見えて、北原泰作証人については、採否の決定を留保して欲しいという趣旨のお申し出がございましたが、弁護人側はそのとおり希望されるのですか」

副主任弁護人=「そのとおり希望します」

裁判長=「裁判所としては、同証人の申請についても一応決定をして、その上で異議があればそれを伺いたいと思います。つまり本日決定できるものは決定したいと思うのです」

山上弁護人=「裁判所のお考えはごもっともと思いますが、実は弁護人の有志が集まって検討した結果、部落問題の解明については、北原証人に代えて余人を申請することができるのではないか、ということになり、結局北原証人でその問題の解明をはかるか、あるいは北原証人を撤回して余人を申請するかを検討したいので、同証人については採否の決定を留保して頂きたいのです」

裁判長=「それでは、北原証人に対する採否の決定は留保します。

   十三、つぎに、証人中(二)ないし(四)の鑑定的な証人ですが、この点は、部落問題に造詣の深い青木弁護人から、更新弁論に際しても、更新弁論は冒頭陳述の性格をも併せ持つものであると述べられ、切なるご請求であろうと存じまして、裁判所も慎重に合議したわけです。実を申すと、私個人といたしましては、少年時代に島崎藤村の小説"破戒"を読んで、子供心に、こんなこともあるのだろうかと感じた程度の知識しか持っていなかったわけですが、一昨年頃、ひょんなことから同和対策事業特別措置法の衆参両院内閣委員会議事録を見る必要に迫られ、ついで、そこに出てくる松本英一議員の言葉から後藤秀穂氏の『皇陵史稿』を見ました。その後、巡り合わせで本件を担当することになってからは、読んだ順序は不同ですが、藤谷俊雄氏の『部落問題の歴史的研究』、これはご承知のとおり、実に読みごたえのある書物で、その中に青木弁護人が部落問題に絡む紛争について骨を折っておられることも実は拝見したわけです。それから、同じく同氏の『現代と部落問題(増補改訂)』、松本治一朗氏の『部落解放の三十年』、証人請求のあった北原泰作氏の『屈辱と解放の歴史』、同氏と井上清氏との共著にかかる『部落の歴史』と塚原美村氏の『未解放部落』等、部落問題一般についての書物を読み漁ったわけです。そのほか、本件に直接関係するものとしては、当審で証人として取調べ済みの、野本武一氏の『部落差別と狭山裁判(世界一九七二年七月号)』、同じく中田主任弁護人の『狭山裁判  "自白はこうして作られた"』ほかに狭山差別裁判糾弾要綱シリーズ4および7、北川鉄夫氏の『狭山事件の真実』、亀井トム氏の『狭山事件』、土方鉄氏の『差別裁判』、それに『狭山差別裁判・第三版』、最近出た『狭山差別裁判・第五集』、その他"週刊埼玉"や"朝日ジャーナル"等もありますが、そういったものを読んでおります。このことは、両陪席裁判官においても、程度の差こそあれ、かなりの分量のものを読んでおられます。

   さて、前回の公判後に、青木弁護人から本年一月号の『部落』を送って頂きましたのを拝見致しますと、証人として請求されている平井清隆氏の『狭山事件と部落問題』、同じく木村京太郎氏の『狭山事件の背景』という論説が載っていまして、これらは、立証趣旨にも適合していて、大変参考になるかと存じます。

   ついては、裁判所としては、もちろん検察官のご意見を伺わなければなりませんが、もし検察官にご異議がなければこれを取調べることは大いに結構ではないかと考えますと共に、すでに野本証人も取調べ済みでありますから、三名の証人はいずれも取調べないことに致します」

(続く)

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   ◯寺尾裁判長が目を通した書籍類まで老生は収集出来ていないが、とりあえず狭山事件に限らず、このカテゴリーに嵌(はま)ってしまった末、おおよそ写真に写る書籍を入手し読み込む運命となってしまった。犯罪の記録物という妙な魅力に取り憑かれた結果であるが、ところがまだまだこれ等(狭山事件以外)に関連した書物は多数存在し、中にはその値段が五桁を付けているというブツもある。事件・犯罪という分野も、いざ集め出すとそれなりに困難を極める。