
【狭山事件公判調書第二審4249丁〜】
第七十四回公判 (昭和四十九年五月九日)
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(1.証拠調請求に関する釈明・意見の陳述等および決定ならびに証拠の取調べは別紙一および別紙二のとおり。
2.証拠調請求却下決定に対する異議の申立ておよびこれに対する決定は、別紙三記載のとおり)
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◯別紙一 証拠調に関する裁判長の発言ならびに検察官および弁護人の釈明等。
寺尾正二裁判長(以下裁判長と略す)=「それでは決定手続きに入ります。決定をするについて訴訟関係人に釈明を求める必要のあるものもありますが、それらについては釈明をまって順次決定していきます。まず、申しておきたいことは、検察官・弁護人の強力を得て、多少の遅れはございましたけれども、一部を除いて双方からほぼご意見が出揃いましたので、裁判所はこれらの採否について、およびすでに採用が決定されている証人の取調べの要否をも含めて、その一つ一つを個別的に、これまで取調べられている全証拠との関連を考慮しながら慎重に合議を重ねてきたわけですが、その結果を順次決定致します。
一 先ず、順序として、決定済みの証人=上田正雄につきましては、すでに同証人の精密な鑑定書が取調べられておりますので、重ねて証人として取調べる必要はないということになりました。したがって前の決定を取り消し、取調べないこととしたいと存じますが、この点につきご異存はございませんか。
特にご発言がございませんので、証人=上田正雄については、さきの決定を取り消し、請求を却下します。
二 つぎに、昭和四十九年二月十四日付弁護人の事実取調請求書中、四の書証(一)ないし(十五)は検察官がこれらを証拠とすることに同意されておりますが、その内の(一)ないし(三)については、承諾書や「ポリグラフ検査結果の確認について」という書面自体からして弁護人が〈証明すべき事実〉として記載されていること、すなわち、被告人は逮捕の当日から強盗強姦殺人・死体遺棄事件について取調べをされていること、言い換えると、本件が明白な別件逮捕であることがわかる承諾書等であるということか、それとも他の証拠と相俟って右事実を立証するということなのでしょうか。
この内、承諾書二通は検察官証求のものと同一のものと考えられますが、検察官申請の関係について弁護人は不同意としておられますが、これは、異議なし程度でよいのではないでしょうか。そうでないと平仄(注:1)が合わないように思いますが」
橋本副主任弁護人(以下、単に副主任弁護人と記載する)=「承諾書二通については、さきの不同意を撤回します。同書面の取調べに異議ありません」
裁判長=「それでは(一)ないし(十五)の書面を採用して直ちに取調べます。
三 つぎは、前同事実取調請求書中、七の公務所照会の(一)についてですが、これについては、検察官も然るべくと意見を述べておられますが、具体的にどのような名称の帳簿の取調べを求められるのでしょうか。例えば留置人カードとか、留置人の出し入れ簿とか、接見関係簿とか、弁護人との接見指定書の綴りとか、糧食金銭差入簿もしくは、物品授受簿とかいう類のものを指すのでしょうね」
副主任弁護人=「そのとおりです。帳簿の正式の名称は調査のうえ書面で申し出ます」
裁判長=「それと対象となる帳簿類の始期は、被告人が逮捕された昭和三十八年五月二十三日以降のものでしょうが、終期は何年何月頃までのものを求められるのでしょうか。照会をする都合もありますので明らかにされたいのです」
副主任弁護人=「被告人が逮捕された日から東京拘置所へ移監された日までで、東京拘置所に移監された後については照会を求めません。なお、浦和刑務所における身分帳その他は、被告人の身柄が東京拘置所に移監されたとき一緒に送付されている模様ですから、浦和刑務所在監中の関係については東京拘置所あてに照会されるよう希望します」
裁判長=「終期については記録上明らかな日でいいのですか」
副主任弁護人=「それで結構です」
裁判長=「官庁の書類には一般的に保存期間があると思うのですが、これらの帳簿が現在まで保存されているでしょうか」
石田弁護人=「他の事件の例から見て、被告人が勾留されている間は保存されていると思います」
(続く)
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注:1「平仄(ひょうそく)」=つじつま。