アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1410


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(左は石川被告の筆跡による上申書。右は被害者宅に届けられた脅迫状。警察・検察は、それぞれの文字は同一人物の筆跡であり、すなわち脅迫状は石川被告によって書かれたと断定した。)

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狭山事件公判調書第二審4248-16丁〜】

                                     『意見書』

                    東京高等検察庁  検事  大槻一雄  

                                                        昭和四十九年二月七日

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第二   脅迫状の筆跡

   一   本件証拠物の脅迫状、封筒の筆跡が被告人の筆跡であることは、原審記録中の関根政一・吉田一雄の鑑定書、長野勝弘の鑑定書および当審鑑定人=高村巌の鑑定書、当審証人=高村巌の第五十八回公判および第六十七回公判における供述により明白であると思料する。

   弁護人はこれら三者の筆跡鑑定が従来の経験の集積に立つ伝統的鑑定法によるもので、非科学的であり信用できないとして、当審鑑定人=戸谷富之の鑑定書および当審証人=戸谷富之の供述を援用するが、これに対する意見は、検察官の昭和四十五年六月十七日付:事実取調請求に対する意見書二十三丁裏九行目から二十四丁裏七行目記載のとおりである(注:1)。

   また、本件脅迫状の筆跡および本文の記述能力等につき、当審で弁護人から提出された綾村勝次=作成の鑑定書、同補遺、磨野久一=作成の鑑定書、大野晋=作成の鑑定書に対する検察官の意見は、第六十六回公判調書記載の検察官意見のとおり(注:2)である。

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注:1  該当する箇所をつぎに引用する。『しかしながら筆跡鑑定の方法は色々あり、殊に具体的対象物についての筆跡鑑定では、常に推計学的方法によるのが科学的であるとする当審における戸谷富之鑑定人のいう一般論のみをもって、前記三者の鑑定をすべて非科学的なものであると排斥し去る根拠とはし難い。

戸谷鑑定人のいう相同性、相異性、稀少性、常同性の点も、前記関根ら三鑑定書を仔細に検討すれば、量の相違、表現の異同はあってもその根底には十分加味、検討された上のものであることが認められる。しかも関根政一外一名及び長野勝弘が対照資料とした被告人の上申書、早退届等と、高村鑑定人が対照資料とした被告人の内田裁判長宛手紙、中田栄作宛手紙とは異なるものであるにも関わらず、これらと本件脅迫状の筆跡が同一人の筆跡であるとすることにおいて三者とも同様の鑑定結果となっていることは、その鑑定に普遍性と信用性が認められるところであると考える。

戸谷鑑定も本件の脅迫状については、結論として、「かなりの類似点が見られ、通常の学歴を持つ人の場合には、同一人(被告人)の筆跡であると判定するのにあるいは十分であるかも知れないという印象を受けるが」とし、「本人が学歴低く、日常、字を書くことの殆どないグループに属することを考慮するとき、本人の字の稀少性はグループ中では薄れるため、同一人と直ちに判定することには理論的に同意し難いように思う」というのであって、本件脅迫状の筆跡については通常ならば被告人と同一筆跡であると判定するのが不合理ではないとの趣旨に見られ、同鑑定のとる、いわゆる科学的方法によっても本件脅迫状が被告人の筆跡ではないとの結論をしてはいないのである。

従って右のような観点からと、また、重要証拠物である右脅迫状を、請求のような鑑定をするについてとられる方法によっては毀損、消失等の結果を生ずるのではないかとの虞れも合せ考え、弁護人請求のような鑑定を今更敢えて行なう必要はないものと考える』

注:2  拙ブログ"狭山の黒い闇に触れる"1181丁及び1182丁参照のこと。