アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1405

狭山事件公判調書第二審4248-8丁〜】

                                     『意見書』

                    東京高等検察庁  検事  大槻一雄  

                                                        昭和四十九年二月七日

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 七   前記のように、第一次逮捕・勾留は、もとより別件である窃盗、暴行、恐喝未遂の取調べを目的として行なわれたもので、別件についての勾留の理由と必要が存続したと認められる勾留の全期間にわたって、勾留の基礎となっている恐喝未遂等の取調べを行なう傍ら、これと密接な関連があると考えられた本件についても、右別件の取調べに付随し、これと併行して取調べを行なったものである。すなわち

①  第一次逮捕・勾留中に司法警察官並びに検察官が作成した供述調書は、合計二十九通に上る。これらの供述調書は、原審で取調べたもののほか、当審において被告人の取調べ状況およびその供述経過を明らかにするため、すべて検察官から提出済みである。

   これらの供述調書によれば、一部には本件に関する間接事実、たとえば五十子米店から配布された手拭いを被告人の父=富造、兄=六造が探していたとか、被告人が石田一義から血液型を尋ねられてA型と答えたなどということについての供述も見られるが、その殆どが、別件および第一次勾留の満了時に為された第一次起訴に際して別件の窃盗、暴行、横領等の各事実に関するものである。

   本件についての供述を録取したものは、検事=河本仁之の作成した六月十一日付の被疑者の署名押印を欠く供述調書一通に過ぎない。もとより、本件についての取調べ経過は、その都度、逐一、供述調書に録取されるわけではないので、調書上現われていない本件関係の取調べが行なわれなかったわけではない。

   しかし、それにしても、右供述調書の作成日付、数量、内容等から見れば、別件の取調べは、第一次逮捕・勾留の全期間にわたり相当な時間を費やして行なわれたことが窺(うかが)われるのであって、少なくとも逮捕・勾留の基礎となった別件が本件取調べのための単なる名目、手段という如きものでないことは明らかである。このことは、これら別件がすべて起訴された結果、有罪判決がなされたことからも十分証明されている。

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②  しかも、別件のうち、窃盗、暴行の事実については、第一次逮捕・勾留の初期の段階において自白調書が作成されたが、恐喝未遂の事実については勾留期間満了の間近になって作成された被告人の署名押印のない検察官調書、司法警察員調書各一通を除いて、終始被告人は否認をしていたのである。

    そして、記録によれば、第一次逮捕・勾留期間中、恐喝未遂の被疑事実については六月十日頃までの間に脅迫文の筆跡に関する二つの鑑定書が完成して、それが被告人の筆跡に相違ないことが確認されたこと、五月二十三日に被告人方から押収した地下足袋五足のうちの一足の右足が、鑑定の結果、五月三日朝、佐野屋付近の畑から採取した犯人のものと思われる石膏型成足跡の一つに合致することが明らかになったこと、内田幸吉に被告人の面通しをした結果、五月一日の事件当日、右内田方で中田栄作方の所在を尋ねた犯人と目される男は被告人と認められること、中田登美恵および増田秀雄により、五月二日夜、佐野屋付近の茶畑から中田登美恵に呼びかけた犯人の声は被告人の声と同一音声と認められることなど、被告人の嫌疑を深めるに足る諸事実が明らかになってきたのであるから、第一次逮捕・勾留の全期間を通じて、恐喝未遂の事実については被告人の身柄拘束を継続すべき理由と必要が存続したことは明白である。

(続く)

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       左側の写真が石川被告が書いた「上申書」であり、右側の写真は真犯人が書いた脅迫状である。
◯捜査当局は、というか裁判所は、上の二枚の執筆者は同一人物であると判断した。②にある、「脅迫文の筆跡に関する二つの鑑定書が完成し、被告人の筆跡に相違ないことが確認されたこと」が裁判官の判断の基礎となっている。いやしかし、これはどう見てもこの二枚の文章の執筆者は別人でしょうな。

   ところで、福井市で1986年に女子中学生を殺害したとして、殺人罪で懲役七年が確定して服役した前川彰司さん(60)の裁判をやり直す再審で、名古屋高裁金沢支部(増田啓祐裁判長)は18日、「男性を犯人だと認めることはできない」として無罪を言い渡した。判決のあと裁判長は「39年もの間、大変ご苦労をおかけし、申し訳なく思っています」と謝罪している。

   なぜこの判決をもたらしたのか。これは増田啓祐裁判長らによる事件の目撃者の証言を精査した結果によるものである。

   狭山事件再審を是非この増田啓祐裁判官に委ねてみたいものである。氏のような、冤罪に対し本気で取り組むような人物でなければこの事件は解明できまい。