アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1394

狭山事件公判調書第二審4231丁〜】

                                 『玉石と残土』

         死体埋葬現場の客観的状況と自白内容との矛盾

                                                                弁護人=藤田一良

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五、玉石は何を物語るか

   (2)   ついでに、ここで荒縄について一言触れておく。この荒縄が、死体の逆さ吊り用に使用されたものではないことについては、すでに他の弁護人が論証したとおりである。

   実況見分調書添付写真に写っている、複雑に絡み合っている縄の姿は、断じて石川君の自白のように、「それから善枝ちゃんを吊るしておいた縄はそのままくっつけたままで埋めました。」という言葉に合致するものではない。現に、実況見分調書の作成者である大野喜平自身が、現場写真八号の説明に、「被害者着用のスカートの一部及び死体に巻きつけられていた荒縄の一部が出た状態」と記載している事実をここに指摘しておきたい。荒縄は死体の上に置かれてあったのではなく、巻きつけられてあったのである。(荒縄の巻きつけは、死体の逆さ吊りとは絶対に両立しない。)

   捜査官達は、犯人が荒縄をどのように用いたのか合理的に解釈することが出来なかったためか、あるいは、そう自白させる以外には石川君を犯人にすることが出来ないので、石川君にさりげなく「くっつけたまま埋めた」という限度で虚偽の自白を強いることをとどめたものと理解せざるを得ないのである。

(被害者の遺体が発掘された時の模様を描いたもの。写真は"差別が奪った青春"部落解放研究所・企画・編集=解放出版社より引用)

   (3)   死体の頭部の上に置かれてあった玉石が、墓石の墓制につながりのあるものとして理解するのが最も合理的な解釈であることは、民俗学の権威である東京大学教授=和歌森太郎京都大学教授=上田正昭、両氏の鑑定書のとおりであり、当弁護人が敢えてそれ以上附言するところはない。犯人は、埋葬の意味を込めて善枝ちゃんを埋めたのである。

   石川君は、このように重要な意味のある玉石について、調書では全く述べていないのである。当審において、

   「(写真で見せられた)頭の上の石というのはどのくらいの大きさでしたか」

   という主任弁護人の質問に対し、

   「ものすごく大きい石でした。頭よりちょっと小さいけれど。何のおまじないでやったかと言われましたが分からなかったから言いませんでした。」

   と答えているだけである。玉石について何も述べていない石川君が犯人であるはずがないことは言うまでもないところである。

   捜査本部長であった中勲(なか いさお)が、当審において、「玉石についてははっきりと覚えていない。」と証言したり、また大野喜平や長谷部梅吉が玉石のことになると、同じく証言をぼかしてしまうのは、玉石についての石川君の自供の欠落が、石川君を犯人にでっち上げる警察の策謀にとって、極めて重大な弱点となっていることを良く知っているため、ことさら「玉石」は捜査官達の関心をそそるほど重要な物証ではないことを示すための儚(はかな)い演技に他ならない。

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被害者の遺体と共に発見された玉石。