忘れた頃に手ぶらで現われ、勝手にスマホで撮影する男をこの猫はどう思っているのだろうか。しかも、これも勝手に頭を撫でつつ一方的に狭山事件とやらの推測を語りかけ悦に入る男を、この猫はどう感じているのだろうか。その答はどうやら彼の表情が物語っているようである・・・・・・。ごめんね。
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(芋穴から見つかったビニール風呂敷と棒きれ。二点の写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用)
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【狭山事件公判調書第二審4128丁〜】
『物証をめぐる諸問題』
ビニール風呂敷、二本の木綿細引ひも、荒縄について
弁護人=福地明人
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(四) ビニール風呂敷と木綿細引ひもとの結び方について。
(イ)6・25員「縄に足してつないで・・・」
(ロ)6・25検 (結び方については何もなし)
(ハ)6・28員「縄につなぎ・・・」
(ニ)6・29員 (結び方については何もなし)
(ホ)7・7検 「ビニールの風呂敷を引きしぼって縄のように丸め、それで善枝ちゃんの足首をしばり、ビニールの端を麻縄に結びました」
(ヘ)被告人供述
問=「どんな風にしてゆわえたですか」
被告人=「こばとこばを合わせてです」
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以上のことから言えることは次のとおりである。
1. どんな結び方をしたのかについては、具体的な説明がないことが特徴的である。
2. そこで、実際はどんな結び方がされているのかを大野喜平作成の実況見分調書添付写真の33、34から判断すると、次のような大変特殊な結び方がされていることに気がつくであろう。
それは図1、図2、あるいは図3のような平凡な結び方ではなく、図4のような極めて特殊な結び方である。図1のような結び方だと、両端が切れた時、結び目から脱落する。図2のような結び方でないことは写真から明らかである。図3のような結び方は通常あり得ないし、木綿細引ひものリングの大きさから判断して、これもすぐ結び目から脱落する。図4のようなやり方は「結んだ」というよりは、むしろ「引っかけた」状態である。(なお、図4の状態からビニール風呂敷の切片を取り除くと、木綿細引ひもは図5のような状態…現状…に戻ってしまう。)
3. 図4のような状態は異例の結着状態であり、(イ)、(ハ)、(ホ)、(ヘ)が示している通常の結着状態とは大巾に異なる。この点は大変重要なことである。
足首に巻きついていた木綿細引ひもの結着状態は、いわゆる「ひこつくし」様であることが添付写真から一目瞭然であったため、捜査官はその結び方を(ハ)で詳細に説明させた。
しかし、ビニール風呂敷と木綿細引ひもとの図4のような結び方は捜査官によって見逃されたから供述調書は通常の結び方として処理されたものである。
4. 以上のことは言うまでもなく、被告人がビニール風呂敷を木綿細引ひもに「結んだ」ことがなく、したがって結び方について何も知らなかったということを示している。
(続く)