アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1323

画像は被害者のものとされる通学鞄を溝から掘り出す捜査員。この鞄に入っていた教科書は約百五十メートル離れた地点から発見されているのだが、教科書を鞄から取り出しているはずの石川被告は、逮捕後の自供においてこの鞄の口がチャックであったかバンドであったか分からないと述べたりしている。また鞄の下から見つかった牛乳ビン、ハンカチ、三角巾については最後まで何の供述もされていない。

発見された通学鞄。写真三点と文は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用。

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狭山事件公判調書第二審4054丁〜】

自白論  その(1) 『鞄・万年筆・腕時計と自白』

                                                               弁護人=宮沢祥夫

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("被告人の六月二十日付、六月二十一日付警察官調書は誘導によって作り出された虚偽のものである"の続き) 

   (二) 鞄の発見について誘導と作為があったことは次の中田主任弁護人と被告人との間の尋問状況を見れば明らかである。

中田弁護人=「自白をした後にカバンをどこに捨てたということについて調べを受けたでしょう」

被告人=「ええ、受けたんです」

中田弁護人=「カバンの点は調べられましたか」

被告人=「カバンをどこに捨てたと言ったから、かまわず横山の山の中に丸い穴がたくさんあったんです。そこの藁のところにあると言ったんです、かまわずに」

中田弁護人=「かまわずにということは、勝手に想像してということですか」

被告人=「ええ、そうです。そこの藁のあるところにあると言って関さんに渡したんです」

中田弁護人=「何か横山の、本が出たところという風に前に示されたため、その場所の近くを言ったんですか」

被告人=「ええ、そうです。そこの藁のあるところにあると言って関さんに渡したんです」

中田弁護人=「地図を書いた」

被告人=「ええ、書いたんです」

中田弁護人=「警察の人はどうしました」

被告人=「関さんともう一人の人が行っちゃったんですね、そしたら長谷部さんが、今電話がかかってくると言ったんです」

中田弁護人=「関さんが出てからあと」

被告人=「今、関さんから電話がかかって来てから見てみろと、違うじゃないかって、本当に電話がかかって来るんだね、長谷部さんが本が出て来た所は川だと言ったから、それは溝だと言ったら、そこを書いてくれ、と言ったんですね」

中田弁護人=「横山の穴のあるところの地図を書いたわけでしょう。藁があるところだというようなことで」

被告人=「ええ」

中田弁護人=「そしたら関さんが探しに行ってる間に、お前書いた場所は違うだろう、今電話がかかって来るぞと言った、そして実際埋めたところは川のところじゃないか、と長谷部さんが言ったんですね、そして川のところを地図で書けと言ったんだね」

被告人=「ええ」

中田弁護人=「その時、そこは川じゃなくて溝だという話をしながら書いた」

被告人=「その内、関さんが帰って来たんだね、おれの尻を見ろ、真っ黒になってしまった、関さんに今度は間違いないから今度行ってくれと言って、今度は本当に出て来たんだね、何でも分かっちゃうんだものな、カバンのことも分かっちゃったんだな」

中田弁護人=「よく当たるということで皆が笑ったというんですか」

被告人=「ええ、そうです」

中田弁護人=「皆というのは」

被告人=「遠藤さんと、メガネをかけた背の高い人はいなかったと思います。青木さんは居たし、斉藤さんも居たような気がする、あとは分からない、ちょっと」

中田弁護人=「長谷部さんはその時何か言いませんでしたか」

被告人=「おれは犬よりいいんだと言いましたね、君は警察にしてやりたいようだと言ったんです、おれのことを」

中田弁護人=「ちょっと意味がわからない」

被告人=「おれが言ったところ、ぴったり当てて書いたから警察にしてやりたいようだと言ったんです」

中田弁護人=「実際には長谷部さんに言われて地図を書いたんでしょう」

被告人=「そうです」

中田弁護人=「何か長谷部さんが、おれはだてに刑事をやっているんじゃないんだというようなことを」

被告人=「ええ、言ったです」

中田弁護人=「それで皆笑ったわけね」

被告人=「ええ、そうです」

中田弁護人=「自分の勘はよく当たるんだと」

被告人=「何でも当たるって」

中田弁護人=「あなた自身本当に長谷部さんの勘が当たったんだという風に考えたんですか」

被告人=「ええ、考えたんです。実際に当たっちゃったんだもの」

中田弁護人=「長谷部さんはおっかない人だという風に思いましたか」

被告人=「思わなかったです」

中田弁護人=「えらい人だという風に思った」

被告人=「ええ」

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(続く)

通学鞄発見時の模様。