アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1276

何ということであろうか。第三次再審請求を申し立てていた石川一雄氏の死去を理由に、三月十七日、東京高裁は審理の打切りを決定したという。妻の早智子さん(78)は「私が一雄さんの分まで頑張る」と、再審請求を引き継ぐ覚悟を語っているというが・・・。

   まるで石川氏の死を待っていたかの如く、再審請求の審理打切りは驚くほどの早さで決定されたが、この事実は、不都合な結果を招く事案には有り余るほどの時間を浴びせそして待たせ、対して己れに利する事案に対しては速やかにその業務を遂行するという法曹界の、特に検察・裁判所の悪癖を証明する結果となっている。

   袴田事件の無罪が確定し、飯塚事件や和歌山カレーヒ素混入事件、福井事件など、まだまだ冤罪=無罪判決が出される可能性大の案件が待機している中、法曹界にいる関係者らは汚点を一つでも消せるということで今回の決定を急いだと老生は推測している。

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狭山事件第二審公判調書3953丁〜】

                           「第七十三回公判調書」

証拠調請求およびこれに対する求釈明等に関する裁判長および訴訟関係人の発言の続き。

([第一] 昭和四十九年二月七日付および同年同月十四日付検察官の証拠調請求について)

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検事=「本日付検察官の証拠調請求書の番号1ないし6の、内田幸吉・増田秀雄・中田登美恵の検察官および司法警察員に対する各供述調書の取調べ請求は、先ほど主任弁護人が触れられたように、供述内容自体を立証しようというのではなくて、その請求書の作成日付欄記載の日に、立証事項欄記載のような内容の供述調書が作成されたという、いわゆる捜査の経過を明らかにするために取調べを請求するものです。

    弁護人の、本日付事実取調請求書中、一、検証の(一)に『本件各現場の検証』とありますが、『本件各現場』とは何処かを具体的に明らかにしていただきたいと思います」

裁判長=「先ほどの弁護人の釈明のうち、検察官の昭和四十九年二月七日付証拠調請求書記載の番号1・2・3および5の書面については、作成の法的根拠・内規等があるかどうかによって、訴訟法上適法な証拠方法となり得るものかどうかをお確かめになる趣旨でしょうか」

主任弁護人=「そういう問題も起こるかも知れません。どういう経過でこれらの書面が作成されたのかということを証拠としてお出しになる以上、検察官は明らかにすべきでしょうし、立証趣旨との関係では、私どもが意見を述べるにあたって重要な意味を持つと思うわけです。例えば、番号2の書面では、七月二十三日のことが八月十五日に報告されておりますが、そうすると一ヶ月間に報告せよということにでもなっていたのかどうか、そうとすればそういうことを根拠づける書類があるだろうし、そういうようなことを私どもが証拠価値あるいは証拠能力を批判する前提として伺いたいわけです。もし公文書的な性格が付与されているとすれば刑訴法第三二三条で、判断の材料とされるというようなことがあり得るかもわかりません。仮に検察官から、あの被告人はちょっとあれだからよく調べておけというようなことを言われて書いたというような経過であるならば、その作成された経過自体を私どもはかなり問題にすべきだということになりましょうし、その辺のところが今の段階では何とも申し上げかねるのでああいう風にお伺いしたわけです」

裁判長=「それでは、先ほどの検察官の釈明によって明らかになったものについては本日意見を述べられることになりますか」

主任弁護人=「今の釈明によっても、もう少し伺いたいところもあるのです。例えば木綿細引紐の問題、それから中島いくの旭町ガード下の問題というのは、これはこの段階における全く新しい主張であって、我々としてはある意味では予測出来なかった問題です。そういう意味では、少し全体を検討したいと思いますので、本日意見をまとめて述べることは差し控えて、検察官の他の点に関するご釈明があった後、弁護団として更(あらた)めて検討のうえ、三月二十二日にはご決定いただけるように考えたいと思います」

裁判長=「裁判所は合議をする必要がありますので、必ず今月末までに意見を出すようにしてもらいたいと思います」

主任弁護人=「今日検察官が釈明された点についても私個人としては幾つか更に釈明を求めたい点があります。そういうこともあるので、残された分の釈明についても公判を開いて、そうすればその段階ではあるいは、釈明如何によっては更に検討を要することがあるかも知れませんが、それに接着した時点において意見をすべて申し上げることにしたいと思います」

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第二、【昭和四十九年二月十四日付弁護人の証拠調請求について】

主任弁護人は右二月十四日付弁護人の事実取調べ請求書記載のとおり述べたほか、右請求書中、一、検証の(一)本件各現場の検証について、

「本件各現場の検証は何よりもすでに十年の年月を経過して、かなり変わってはおりますが、新しい構成のもとで裁判所に直接現場をご覧いただきまして、これまでの証拠調の結果を正確に理解していただくためにはどうしても必要であろうと考えます。なお、取調べのいわば大きな前提となることであろうと思います」と述べた。

(続く)