アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1275

狭山事件第二審公判調書3951丁〜】

                           「第七十三回公判調書」

証拠調請求およびこれに対する求釈明等に関する裁判長および訴訟関係人の発言の続き。

([第一] 昭和四十九年二月七日付および同年同月十四日付検察官の証拠調請求について)

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裁判長=「それに関連して裁判所から弁護人に伺いますが、昭和四十五年四月の公判手続きの更新にあたって中田弁護人が述べられた意見の中に、不同意の書面がたくさん引用されていますね。例えば更新手続きにおける証拠に関する意見という書面の中で『狭山事件の経過と特質』という標題のうち十一頁(記録第十九冊第三一一七丁)八丁目以下に、『原証言が六月五日に警察官調書、六月八日に検察官調書を作成されている内田幸吉や、被告人の取調べ中に声を聞かせたり、テープを取ったりした後に作成したと思われる六月十一日付増田秀雄警察官調書、同日付増田秀雄検察官調書等の存在に触れていないのは興味深い』とありますね。裁判所としては、手続きにおける正義の実現ということを考えるだけに、本件で問題になっている別件逮捕・再逮捕というものが果たして適法な手続きであったかどうかを突っ込んで考えるためには、訴訟あるいは捜査の経過を知りたいと思うわけです。そういう意味で実はそれらの調書を欲しいのです」

主任弁護人=「只今裁判長からお読みいただいたところは、そういう調書が存在するということに触れただけであって、中味については一切述べておりません。そういう調書が存在するということについては、訴訟記録上、検察官請求の証拠目録によっても明らかであります。私どもは、一応それを前提として語ることは訴訟上許されると考えております。そういうわけで私は、その限度で原証言を批判する際に用いたわけで、中味の提出までをその段階で求めたわけではありません」

裁判長=「それらの供述調書がその日付の日に作成され、内容としては、本日付検察官の証拠調請求書記載の事項について取調べているということを訴訟法上の事実として裁判所は考えていいのかどうかということですが、その点についてのご意見はどうですか」

主任弁護人=「私はそう考えていいだろうと思います。ただし、例えば六月五日にこういう調べがあったということ自体が訴訟上、事実として確定されなければならないというような場面では、やはり厳格な証明方法を必要とすると思います」

裁判長=「そのほか、新聞や週刊誌などを引用されている部分もありますね。新聞は、それ自体非常に伝聞性の強いものですから、厳格な手続きを必要とする刑事訴訟手続きには、そのままは使えませんが、社会にそういう報道がなされたということで、いろいろのご主張を理解するために裁判所も、当時の新聞紙の縮刷版などを見ております」

主任弁護人=「裁判所がお読みになるのは正に公知の事実ですし、個人的な意見を申し上げれば、公刊されているものならば大いにお読みいただいて結構だと思います。ただし、お断りしておきたいことは、それを或る事実を判断する材料として使う場合には・・・・・・」

裁判長=「そういう事はいたしません。公刊されたものは、裁判所は目を通すようにしておりますが、証拠の取り扱いについては、当然のこととして厳密な態度で臨みたいと思っております」

(続く)

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