アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1269

公判調書3889丁から3905丁は、概ね弁護人選任届等の記載であり、ここではそれを省くこととする。

    不謹慎ながら飲酒しながら本件調書を眺めているため正確性に欠けるが、今回より裁判長判事がこれまでの井波七郎から寺尾正二へとかわった模様である。

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狭山事件公判調書第二審3907丁〜】

                       「第六十九回公判調書」

(この回の引用は原文に基づき最小限に留める)

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人定質問=氏名は石川一雄  生年月日職業住居本籍は原判決書記載のとおり

裁判長=「(被告人に対し)健康状態はどうですか」

被告人=「眼が悪くて、ここからでは裁判長の顔がよく見えませんが、そのほかは特に悪いところはありません」

裁判長=「(本件については、審理が長時日にわたることが予見されるので『判事:和田啓一』が補充裁判官として審理に立ち会う旨を告げた)」

○公判手続きの更新

   裁判官がかわったので公判手続きを更新した。ただし、公判手続きの更新における訴訟関係人の意見の陳述については後記のとおりである。

   なお、右公判手続きの更新における控訴趣意の陳述に際し、主任弁護人は控訴趣意書中「第六量刑不当」の点(記録第九冊第九十八丁から同第一〇八丁まで)を除き同趣意書のとおり陳述した上、第一回公判期日において弁護人の控訴趣意書陳述後、被告人が自分は善枝さん殺しの犯人ではないと、この法廷で述べて以来すべての審理は被告人の無実をめぐって争われて来たことは明らかな事実であるから、特にその点を明らかにする意味で控訴趣意第六量刑不当の点は陳述しないと述べた。

裁判長=「控訴趣意第六量刑不当の点を陳述しないのは、右第六量刑不当の主張を撤回される趣旨ですか」

主任弁護人=「陳述しないということです」

検事=「右控訴趣意書中『第六量刑不当』の点につき陳述しないことに異議ない」

裁判長=「(訴訟関係人の意見陳述を次回に続行する旨を告げた)」

     昭和四十九年二月十四日  東京高等裁判所第四刑事部

                                                裁判所書記官  小森正男  印

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                           「第七十回公判調書」

本調書中、別紙一「弁護人 宇津泰親の意見」の部分は裁判所書記官:野口知典が作成し、その余の部分は裁判所書記官:小森正男が作成した。

                                                   裁判所書記官 小森正男 印

                                                   裁判所書記官 野口知典 印

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                別紙一  「弁護人  宇津泰親の意見」

    私の意見は脅迫状と筆記用具の問題、それから糊づけの問題、三番目に脅迫状が中田宅に届けられた状況の問題、大体この三つに絞って重点的に問題を提起したいと思います。

    脅迫状訂正の問題とか糊づけの問題については、私どもがいわゆる中間弁論と称しておりますところの、先になされた弁護人の各意見の中で橋本弁護人が相当掘り下げて述べているところでありますので、裁判所によく読んで頂いているところだと思います。

    第一の脅迫状と筆記用具の点について、自白の内容は、脅迫状は「五月2日」「さのヤ」とかいう、そういう訂正部分を含めて、万年筆式のボールペン、つまりボールペンで書き直したのだということに、これは一貫してそうなっておりますが、しかし、我々弁護人としては素人目にも、脅迫状の本文と訂正個処の筆跡・筆記用具、それから使用されたインク、これが非常に違っているということに、かなり前から疑問を持って、この点についての鑑定を申請しました。そして秋谷鑑定が裁判所に出ているのでありますが、秋谷鑑定によりますと、脅迫状はボールペンで書かれたものであり、一部訂正個処はペンまたは万年筆を使用したものであると断定しているのであります。これは試験方法、それに基づく考察のところを熟読すれば、この訂正個処がボールペンでなくてペンまたは万年筆であるとの結論は、確信を持って導き出されていると思います。この科学的な分析のプロセス、これは素人の我々でも十分に納得できる明確なものでありますが、そうしますと、秋谷鑑定によって、脅迫状の訂正部分がボールペン以外の筆記用具によってなされたということは、その結果は、石川被告の自白調書の総べての筋書をくつがえすことを意味すると言わざるを得ないのであります。

(以下、次回へ続く)

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○言われてみれば脅迫状本文と訂正された文字は明らかにその使用された筆記用具が異なることに気づく。

   この訂正された文字が万年筆で書かれたと仮定した場合、使用された万年筆は被害者の所持していた万年筆ではあるまいかとの疑いが老生の頭をよぎるわけで、この訂正文字のインク成分の分析が行なわれることを狭山再審弁護団に期待するところである。