アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1261

狭山事件公判調書第二審3864丁〜】

「第六十八回公判調書(供述)」(昭和四十七年九月)

証人=中根敏子(二十四才・会社員)

                                            *

城口弁護人=「前にあなた、朝あなたが中田さんの通学姿を駅の辺りで見かけたというようなことを述べたことはございませんか」

証人=「忘れました」

城口弁護人=「それから中田さんの所持品の一つについてお尋ねしますが、中田さんの財布というか物入れ、そういうものについて何かご記憶ないですか」

証人=「財布ですか・・・・・・・・・ちょっと記憶ないです」

城口弁護人=「中田さんの身分証明書を見たことがありますか」

証人=「ないと思います」

城口弁護人=「身分証明書は誰もが貰うことはご存じですね」

証人=「はい」

城口弁護人=「それを入れておく所は個人個人によっていろいろあると思いますが、中田さんがどこに仕舞っておったかということについて、見たとか聞いたということはありませんか」

証人=「ないと思いますけれども」

城口弁護人=「中田さんの中学校の全景を写したカラー写真、そういうものを見たことはありますか」

証人=「ないと思います」

城口弁護人=「手帳などについてご記憶ありますか」

証人=「手帳ですか・・・・・・。そう言えば身分証明書が手帳の中に入っていたんじゃないかと思いますけど」

城口弁護人=「中田さんの持っていた手帳」

証人=「グリーンのしか知らないです」

城口弁護人=「それは学校で皆に配布するものですか」

証人=「そうです。グリーンか、紺じゃないかと思います」

城口弁護人=「あなたの言うそれは全ての学生に、たとえば学校の規則について書かれたりしている全員に配布されるもの、それとも個人個人が自分のメモに使用するための手帳ですか」

証人=「全員にだと思いますけど」

城口弁護人=「あなたも同じものを持っていたと」

証人=「校歌など入ってましたから多分間違いないと思います」

城口弁護人=「それに身分証明書が入っていたというのは、先ほどそういう趣旨のことを言われましたね」

証人=「ええ、その中の一ページになっていたんだと思います」

城口弁護人=「手帳の一ページ」

証人=「初めの一ページというんじゃなくて、その中に一緒になっていたんだと思うんです、今から思うと」

城口弁護人=「(東京高等裁判所41年"押"第187号符2号『身分証明書』を示す)ちょっとよく見て下さい、これは身分証明書ですね」

証人=「はい」

城口弁護人=「当時あなたも似たものを持っていたでしょうね」

証人=「はい」

城口弁護人=「先ほどのご証言なんですが、あなたのご記憶をまあ、合理的に考えてみれば、これは手帳の一部にくっついて入っていたというようなものではないように思いますが、あなたのご記憶ではそういう手帳があって身分証明書がその中に入っていたというようなご記憶なんでしょうか」

証人=「じゃ、もしかしたら赤十字のと間違えたのかも知れません」

城口弁護人=「赤十字のですか」

証人=「一員だというのがあるんですね、それと間違えたのかも知れません」

城口弁護人=「それは手帳と一体となって入っていたものですか」

証人=「と思いました、何か、その中に入っていたんです」

城口弁護人=「赤十字のか身分証明書か分からないけれども何か、そういうものが入っていたと思うと」

証人=「はい。手帳の間に、場所ははっきりしないけれども入っていたという気がしたもので」

城口弁護人=「当時、ペン習字というものがありましたね」

証人=「はい」

城口弁護人=「最初頃からありましたか」

証人=「ええ、一年の時から、そうですね」

城口弁護人=「一週何回か、という決まった時間にあったんですか」

証人=「そうです」

城口弁護人=「万年筆とか、つけペンとか、いろいろありますが、そういうのは」

証人=「万年筆だと思いました」

城口弁護人=「ペン習字に際してあなたがインク壺というか、インクビンを学校に持参するというようなことはございましたか」

証人=「ありました」

城口弁護人=「当時から」

証人=「ええ、中学の時から持ってましたから」

城口弁護人=「あなたの万年筆は何式ですか。スポイト式とか、付け替えるのがありますね、あれ」

証人=「スポイト式かな、インク持参でしたから」

城口弁護人=「あなたの使うインクの色というのは」

証人=「インクですねぇ、パイロットの紺だと思います」

城口弁護人=「いわゆるブルーブラックですか、ただブルーですか」

証人=「ブラックではなかったですね。ブルーだったと思うんですけど」

城口弁護人=「比較的明るいほうの色ですね」

証人=「さあ・・・・・・」

城口弁護人=「ちょっとはっきりしませんか」

証人=「そうですねぇ、あんまり黒は使ったことないですが・・・・・・」

城口弁護人=「いわばブルー系統のインクには何種類かあるということは知ってますね」

証人=「ええ、濃いのも薄いのも」

城口弁護人=「どちらだったかご記憶ですか」

証人=「薄いほうだったかしら・・・・・・。ちょっと分からないんです」

城口弁護人=「薄いほうだったかも知れない」

証人=「はい」

(続く)