(昭和三十八年頃の狭山市・堀兼付近)
【狭山事件公判調書第二審3861丁〜】
「第六十八回公判調書(供述)」(昭和四十七年九月)
証人=中根敏子(二十四才・会社員)
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城口弁護人=「中田さんなどと勉強のことで少し放課後時間をつぶしたというようなことはご記憶ないですか」
証人=「その日ですか・・・・・・、ちょっと忘れました」
城口弁護人=「たとえば英語を教えてもらうのか、教えてやるというのか、一緒に勉強したということは思い出せないですか」
証人=「分からないです」
城口弁護人=「先ほど放課後は、ほぼ雑談をして過ごすと、帰りの時間までを。それは一般的なことを言ったわけですね。その日のことを特にそう記憶しているという趣旨じゃないでしょう」
証人=「そうではないです」
城口弁護人=「先ほどあなた中田さんと調理の時間、同じ班であったかなかったかは」
証人=「忘れたんです」
城口弁護人=「所属していたかも知れない」
証人=「記憶ないです」
城口弁護人=「中田さんとは入学以来、比較的よくお付き合いしてるほうだったのか、非常に疎遠だったのかは」
証人=「全然なかったです。ただ、私の前だったもので、席が。だから話は少ししたことはあるけれども、人柄は全然分かりません」
城口弁護人=「何か、本の貸し借りというか、そういうことをした記憶はありますか」
証人=「本ですか・・・・・・、本は記憶ないんですけど」
城口弁護人=「雑誌みたいなもの」
証人=「ちょっと分かりません」
城口弁護人=「鎌田さんご存じですね」
証人=「はい」
城口弁護人=「鎌田さんからあなた『女学生の友』というのを借りて、読み終わって中田さんに貸したということはあったですね」
証人=「借りた覚えはありますけれども・・・・・・貸したことについては覚えておりません」
城口弁護人=「のちに、そのことで調べられたことありますね」
証人=「ああ、そうですか。忘れました」
城口弁護人=「その日に中田さんに貸したのだということについて過去に供述したことはございませんか」
証人=「記憶ないです」
城口弁護人=「中田さんがその日の放課後、教室にいたということについて記憶するところはありますか」
証人=「ええ、そうですねぇ、直ぐには帰らなかったと思います」
城口弁護人=「中田さんが何をしていたかということについてはどうですか」
証人=「分からないです」
城口弁護人=「その日にあなたがクラブ活動に出たとか中田さんがクラブ活動に出たとかいうことは」
証人=「ちょっと分からないです」
城口弁護人=「事件があってから、中田さんがその日の放課後どういう状態であったかということについて、お友だちの間で思い起こしてみるというようなことはしませんでしたか」
証人=「あんまりしませんでした」
城口弁護人=「そうすると、特にその日のことについてはあなたは記憶ないということになるわけですね」
証人=「そうですねぇ」
城口弁護人=「直ぐにはその日、中田さんは帰らなかったように思うと言われましたが、雑談の中に入っていたように思うのか、それとも中田さんは本を読むとか、勉強をしてるとか、ほかの用事をしてたというのかということについて覚えていませんか」
証人=「一緒に雑談していたというんじゃないんですけれども、帰りがいつもより遅かったような気がしたんです」
城口弁護人=「いつもというのはどういう帰り方でしたか」
証人=「終わると、やはり早く帰るほうでしたから中田さんは」
城口弁護人=「終わって、分数で言いますと十分くらいで帰るとか、三十分以内で帰るとか、そういうことはどうですか」
証人=「時間は分からないです」
城口弁護人=「しかし印象としては早く帰っていたようだったと」
証人=「そうですねぇ」
(続く)