アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1251

狭山事件公判調書第二審3839丁〜】

証人=高村巌

                                            *      

山上弁護人=「幸いに、これは五字続いて出ているわけですね」

証人=「続いてますね、ただこれは横書きですからね、横書きの場合にはこの人偏が長いということは、ここのところで言う長い短いということは横書きでもあるし、どうでしょうな、これは特徴として言うのはどうでしょう。これは私はこういうものを特徴としてとったことはございませんがね、今までに長い短いという、この人偏の縦と横の比率を、長い短いという程度でとったことはございませんですがね」

山上弁護人=「そうしますと、ここに五つ人偏が出ている、そのいずれもやや二筆のほうが長い、これは今あなたがご証言になった通りですが、第一筆のほうを長く書いたり、第二筆のほうを長く書いたりするということが一人の筆跡でありうると、こう仰るわけですか」

証人=「ええ、あり得ますね、それは」

山上弁護人=「それは横文字だからですか」

証人=「いや、そんなことはないと思いますが、横文字の場合であっても縦文字の場合であってもそういうことはあまり関係がないかも知れません、それは」

山上弁護人=「この五つの文字が、まあ人偏が五つ出てきておりますが、一筆と二筆のバランスの関係ですね、この脅迫状を見ただけであなたは、筆者はこういうバランスをとる癖を待っておるんだということについて、そうではないと断言できますか」

証人=「それはそうではないということは言えないでしょうな、断言するということはしないと思いますが、しかしこれは私たちとしては特徴としては捉えないわけですね」

山上弁護人=「まあ、あなたの鑑定の結果ですね、こういう人偏等の第一筆と第二筆のバランス、これは高村さん、やはり固有の癖があるんじゃないんですか、あなたの経験上言えませんか」

証人=「いや、それはバランスが時としてはその特徴のあることもございます。ありますけれども、この書き方は専門的に見ますと下のほうへ引っぱっておりますからね、こういう引っぱっておる時にはこれが長くなるんですよ、これは下のほうへ」

山上弁護人=「ところがこれは五つの文字全部引っぱってますわね」

証人=「ええ」

山上弁護人=「だから私はこの脅迫状の筆者は第二筆を長く書く潜在的な個性を持ってると、見られないかと」

証人=「これは潜在的個性には当たらないと思いますが」

山上弁護人=「というのはこれ、まあ、ここでは文書を示しませんけれども、実は別の文書が、まあ犯人とされている人が人偏を明らかに第二筆のほうを相当短く書いてる、連続して二つの字があるから、確かめておいたんですが」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

                                            *

      昭和四十七年十月六日     東京高等裁判所第四刑事部

                                                  裁判所速記官  重信義子 印

                                            *

狭山事件公判調書第二審3845丁〜】

        「第六十八回公判調書(供述)」(昭和四十七年九月)

証人=大沢利昭(四十一歳・東京大学教授)

○証人は、予め裁判長の許可を得たうえ、昭和四十七年五月三十一日付、鑑定人=大沢利昭  同三木敏行連名の鑑定書の写しを参照しながら答えた。

 

裁判長=「鑑定書をご覧になってお答えいただいて結構ですが、証人は薬学部教授と言われましたけれども、学校を出られてからの簡単な経歴をお話しいただきたいのですが」

証人=「東京大学医学部、薬学科、当時、薬学部は独立しておりませんで、医学部薬学科を卒業いたしまして、旧制の大学院の当時、特別研究生になりまして、それを四年やりまして、それから東京医科歯科大学の総合法医学研究施設裁判化学部門に助手として勤務いたしました

   それで、昭和三十七年から三十九年までアメリカ合衆国ハーバード大学医学部の研究員を勤めました。三十九年十月から四十二年三月まで東京医科歯科大学助教授といたしまして、やはり東京医科歯科大学医学部、総合法医学研究施設の裁判化学部門におりました。昭和四十六年から東京大学の薬学部の薬害研究施設の助教授として勤務をいたしまして、昭和四十六年四月、東京大学薬学部の生体異物研究部門の教授としてそれ以後は勤務しております」

裁判長=「医学部薬学科と仰ったんですが、医学部本来のお医者さんのやるような医学方面のことも勉強されたんでしょうか」

証人=「それはやっておりません。いわゆる薬学のみでございます」

                                            *

福地弁護人=「最初にこの鑑定書の作成についてお尋ねいたしますが、これは大沢先生と三木先生とでお作りになったんですね」

証人=「はい、さようでございます」

福地弁護人=「大沢先生と三木先生との間で、あらかじめテーマにより分担されたようなことは」

証人=「分担いたしました。それで分担のやり方は、鑑定事項の一と二、糊に関する問題でございますが、それについては私が担当いたしまして、鑑定事項の三番目、唾液に関する事項に関しましては三木教授が担当いたしました」

福地弁護人=「一応、考察ないしは結論については、先生と三木先生との間である程度のご討議はあったんでしょうか、それともお互いに相手に任した分についてはお任せになっておられたんでしょうか」

証人=「原則的には任しております。しかし両方の鑑定結果というもの、鑑定の考察、結論というものを持ち寄りまして、お互いに若干の意見の交換はありましたが、原則としてはお互いの専門の分野でございますからお互いの意見なり結果なりというものを尊重いたしまして鑑定書を作成いたしました」

(続く)