アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1231

遺体埋没場所(B地点)から約二十メートルほど離れた所に芋穴(A)、桑の木(C)があった。

芋穴(A)の中からはビニール風呂敷と棒きれが見つかっている。

狭山事件公判調書第二審3803丁〜】

                      「第六十七回公判調書(供述)」

証人=新井千吉(五十八才・農業)

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山上弁護人=「あなた中田健治さんを、農協で理事をしておる方ご存じですか」

証人=「まるきり知らないんです」

山上弁護人=「農協に理事をしておったかどうかということはどうですか」

証人=「狭山市農協と言いましても、堀兼は狭山市農協に属しておりませんから、まるきり中田さんの家は何事も知らないんです」

山上弁護人=「私があなたの、まあ、覚えていらっしゃるかどうか、お話を伺いに行ったことがあるんですが、その時に中田健治さんが、農協の理事をしておるようだと、あなたから教えていただいたんですが」

証人=「それはその後噂が立ちまして結婚したとか、農協の理事をしておるということをほかの人から聞いたからおたくに言ったんじゃないかと思います」

山上弁護人=「この死体を埋めた穴、これは方角で言えば、両側は東と西になりますか、穴の横ですね」

証人=「そうですね」

山上弁護人=「東の方には茶の木ですね」

証人=「そうですね。東には茶の木がありますし、南から西にかけても茶の木があったということです。両側から南にずうっと。みんなで五十間も、端から端まではありますね」

山上弁護人=「高さが四尺から五尺ある木ですか」

証人=「その埋めたところばかりが、そこだけ非常にお茶が、木が大きかったんです。だんだん西に行くにしたがって後で蒔いたものか切ったものか、小さかったんです」

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山上弁護人=「五月一日から四日までの間、新井さんの付近の農家の方がお休みになるというような事情がありますか」

証人=「五月一日は荒神様ですから、あの辺は三軒屋と言いますが、あの辺の人は荒神様のお祭りですから休んだんじゃないでしょうか。鉄道から南の人ですね、休むのは農家の人がねぇ」

山上弁護人=「証人ご自身が新築祝いで休まれたようなことは」

証人=「貸家を二軒建てたもので、五月一日の夜はお酒を飲んで、皆と居たわけですがね」

山上弁護人=「五月二日は」

証人=「二日、三日は貸家の壁塗りの下地をやったんです。いつもならば畑に行くんですけれども、ずっとその仕事ばかりしてて畑に行かなかったわけです」

山上弁護人=「五月一日も、二日も三日も畑に行かなかった」

証人=「その当時はね、ほとんど畑仕事は終えてましたから、蚕に入ってますから」

山上弁護人=「普通ならば一日、二日、三日お仕事に行っておったかも知れんということですか」

証人=「貸家を建てておったから畑に行かなかったんで、普通ならば用がなくても三日に一度くらいは畑に行ったんですけれども、あいにくというか、行かなかったんですね」

山上弁護人=「一日、死体が埋めてあった穴の東西にかけて高い茶の木があったということですが、夜、非常に見通しの悪い所ですか」

証人=「夜でなくても昼間でもなかなか上の地帯は桑畑でしたから南の方からは見えないし、それと同時に、まわりにビール麦が非常によく出来て高くなっていたものですから、昼間でもそこに坐っているくらいではちょっと見えないということです。場所によっては」

山上弁護人=「あなたが一日、二日、三日にお休みになるということは相当広い範囲の人が知っておるんですか、それとも家族くらいですか」

証人=「とにかく貸家を作っていて下地の竹編みをしておるわけでしょう、大工さん二、三人と。ですから、あの野郎ああいうことをしているから畑に行ってないなあということは大勢の人が見て分かりますよ」

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昭和四十七年九月二十五日   東京高等裁判所第四刑事部

                                                裁判所速記官  沢田怜子  印

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○証人は「その埋めたところ(死体)ばかりが、そこだけ非常に木(お茶の)が大きかったんです」と述べている。

    茶の木の大きいところを埋没場所に選んだとすると、この遺体埋没を行なった者は人に見られることを恐れて気付かれないよう知恵を使った行動を取っていることが分かる。だが、灯りなどないこの畑を走る農道で、深夜にそのようなことが判別できるものか、月明かりを頼れば可能だったのかどうか。