アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1229

狭山事件公判調書第二審3799丁〜】

                      「第六十七回公判調書(供述)」

証人=新井千吉(五十八才・農業)

                                            *

(証人が芋穴の蓋の上で休んだと聞いた裁判長は・・・)

裁判長=「それはいつのことですか」

証人=「穴に下げたということは、ずっと後で聞きましたから、聞いてびっくりして、その後はしなかったんですけれども」

裁判長=「農道で死体を発見されて、警察が来ていろいろな調べがあった、その時を境にして今の、あなたがその上でお茶菓子を食べたとかいうのは前なんですか、あとなんですか」

証人=「あとなんです」

                                            *

橋本弁護人=「五月四日の当日ではないんですね。それは死体が見つかったその日に、お茶を飲んだということじゃないんですね」

証人=「死体が上がってからも、何も穴倉の蓋については知らなかったものですから、その上で十時とか三時には休んでいたんですよ」

橋本弁護人=「死体が発見された日、大騒ぎになって警察も来たしヘリも来ましたね。その日、芋穴の蓋の上にビニールの風呂敷が置いてあったのを自分の家のものかなと思って手にとって見ようとしたということがあったようですが、あったんですか、あなたの記憶では」

証人=「そう書いてあったということであればそうかも知れませんが、忘れてしまったわけですね」

橋本弁護人=「あなたの家に赤白のビニール風呂敷があったんですか」

証人=「どちらの家庭でも白地に寿の風呂敷はあるんじゃないでしょうか」

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裁判長=「前の証言をちょっと読みますから思い出すことがあるかどうか。昭和三十八年十月二十三日、第三回公判で、浦和地方裁判所であなたが述べたことなんだが、最初検察官からの問いです。(この時裁判長は原審記録第二冊四六五丁以下四七四丁表:十一行目までを読み聞かせた)石というのはどんな石です」

証人=「石と言いましても畑に混じっているような石があるわけです。麦を蒔くのに土を振るいますから、鋤簾(じょれん)に石がかかるんですから」

裁判長=「それは河原なんかにあるような石ですか」

証人=「畑にある石は河原にある石と違って細っぽいんです。これはまあいろいろありますけど、形が、丸いのはないですね。非常に角ばった感じで細っぽいんですよ」

裁判長=「大体の大きさは」

証人=「これくらいですね(約四センチくらいの、指で輪を作った)。あと小さいのもありますよ、いろいろですから」

裁判長=「(裁判長は再び、同四七四丁表:十二行目から四八二丁表:三行目までを読み聞かせた)」

証人=「その日には入って見ないと思いましたねぇ」

裁判長=「そう書いてあるが、あなたの前の証言で、その辺は記憶が今と昔では違うかも知れませんね、今は」

証人=「その日には穴のことは知らなかったんですから」

裁判長=「今はそのことを思い出せないということですか」

証人=「その日には入らなかったように思いますがね」

裁判長=「そこのところを詳しく言っているんですよ、"もう皆さんが帰る時期になってから自分も気味悪いですから中へ入って中を見たんです。何かまだあっちゃ困ると。したら何をなかったということです"と」

証人=「そうですか、書いてあればそれで結構なんですけれども、ちょっと忘れてしまったから」

裁判長=「後はまあいいでしょう。大体そんなところです。今日答えられたことと多少自分の記憶と違った点もあると」

証人=「はい」

裁判長=「このように述べた記録があるならばその当時の証言のほうが正しい答えだと、そういうわけですか」

証人=「そうですねえ」

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(続く)