アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1188

 

【公判調書3676丁〜】

               「第六十六回公判調書(供述)」(昭和四十七年)  

証人=石川一雄被告人

                                            *

山梨検事=「さらにその石田さんは、五月一日は何をしていたかと君に尋ねなかったか」

証人=「そんなこと聞かなかったですね、そんなことまで聞いたら自分はただじゃおかないですよ。いくら自分ちの隣だって、そこまで聞いたらただじゃおかないですよ。それじゃ自分が犯人だと思っていることになるじゃないですか。だから石田一義たってここに立ってそこまで聞かなかったと、A型かB型かまでしか聞いてないとしか言ってないじゃないですか。調書を見れば分かりますよ。おれは読んで来たからね」

山梨検事=「その時おれはA型だから大丈夫だと、五月一日は六造兄貴と大工と三人で近所の屋根張りをしていたという答えをしたんじゃないか」

証人=「そうですね」

山梨検事=「何だ、お前さんの話はおかしいじゃないの。さっきはそんなことを尋ねたらぶん殴ったかも知れないと言っていたじゃないの」

証人=「自分はうち(家)で何やっていたかと言ったからたぶんうち(家)の屋根瓦か何かやっていたと答えたかも知れないですね」

山梨検事=「そんなことを尋ねたんだね」

証人=「一日の行動を尋ねたかどうか分かりませんね」

山梨検事=「何を尋ねた」

証人=「A型かB型かと」

山梨検事=「それから、それ以外に」

証人=「他のことは言わなかったと思いますね、本当に簡単だから、すぐ帰っちゃったからね。たぶん一義もここでそういうことを言ってなかったんじゃないんですか」

山梨検事=「今あんたの記憶を聞いているんだよ」

証人=「そこまで言ってないと思いますね」

山梨検事=「さっき言ったかも知れないと言ったじゃないの」

証人=「だから言ったかも知れないけど、とにかく本人の石田一義がここへ立って述べたことはだいたいあれでしょうから、それ読んで聞かして下さい。そこまで言ってないと思うから。A型かB型か、たぶんそれを聞きに来たことは事実です」

山梨検事=「A型かB型かという質問に対してあなたとしてはA型という風に答えたと思うと、こういうことだね」

証人=「そうかも知れないですね。それに対してどうかというんでしょう、それに対しては犯人じゃないからそこまでは考える必要はないと思ったんです」

山梨検事=「出鱈目を言ったということですか」

証人=「出鱈目じゃないです。A型かB型かどっちかだと言ったんです」

山梨検事=「どっちか分からないと言ったんでしょう」

証人=「そこまで言う必要ないでしょう」

山梨検事=「A型であるという必要はないでしょう」

証人=「もちろんB型であると言う必要もないでしょう」

山梨検事=「相手が心配して尋ねに来てくれたんだろう」

証人=「心配かどうか分からないでしょう」

山梨検事=「そうすると、もう一度聞くが、石田一義はあんたに血液型のことを尋ねると同時に、五月一日は何をしておったかということを尋ねたんじゃないかな」

証人=「そこまでははっきり分からないですね。血液型がB型かA型か、それを聞きに来たことは事実だけど、それに対して答えたことも事実だけど、そのほかは答えたか答えないかちょっと言っただけですから、それで水村正一なんかとキャッチボールをしていたから何しに来たかというんでそれに対して答えたんだから、それ聞きに来たんだから」

山梨検事=「それだから」

証人=「だからそれ以外は答えてなかったかも知れないですね。自分としてはそれだったらどういうことを話したかと正一やこうぞうなんか一緒にいたからそれをまた話したから、それ話していないところを見ると言わなかったかも知れませんね。また一義はあっても、兄貴の同級生だからそんなことを言ったら自分としても黙っていないと思いますね。そういうことを考えてもそういうことは言わなかったと思いますね。また一義も当法廷においてそんなこと言ってないと思います」

山梨検事=「そのことは触れてないわけだ。弁護人の質問がないから答えてないだけの話だ」

証人=「・・・・・・・・・」

                                            *

裁判長=「今の石田豚屋が来て話をした時には二人だけだったと思いますと、石田一義が四十一年四月十四日の証言で言っているから、ほかのやつに聞いてもしょうがないな。一義と二人だけの話だから」

証人=「・・・・・・・・・」

裁判長=「(この時裁判長は被告人に昭和四十一年四月十四日の第十五回公判における石田一義証人の調書のうち、一五三五丁表の終わりから二行目から、一五三七丁表の終わりから二行目までを読み聞かせた)」

                                            *

山梨検事=「だいぶ情勢が変わってきたな」

証人=「検察官も今言わなかったと言ったんじゃないんですか。自分ももちろん、あるいは読み落としたかも知れないが、検察官も弁護士が聞かなかったから答えなかったんじゃないですかと」

山梨検事=「君の話なんだよ、君自身のことを聞いているんだよ」

証人=「検察官がそういう何というか読み落としがあったでしょう、自分ももちろん多分言わなかったと思ったですね、そういうことは」

山梨検事=「今記憶を改めると、どういうことになるの」

証人=「いや、言ったかも知れないですね」

山梨検事=「なぜそういうことを言ったのかと」

証人=「だから、聞いたから言ったんじゃないんですか」

山梨検事=「だからどういうことを言ったんですか」

証人=「だから今言ったのと、その調書の通りじゃないんですか」

山梨検事=「どの調書」

証人=「その調書に」

山梨検事=「何の調書」

証人=「今一義が述べた通りに言ったかというんでしょう」

山梨検事=「だから五月一日はどうしていたのかと」

証人=「だから兄貴と一緒に仕事していたと言ったかも知れないですね」

山梨検事=「そうすると、今控訴審で君が言ってるのと、また違うんですね」

証人=「どこが違うんですか」

山梨検事=「控訴審は五月一日に兄貴と一緒に仕事をしていたと言うんですか」

証人=「だから、その当時はそうでしょう」

山梨検事=「要するに一義は、五月一日はどうしていたのかねと聞いているんだよ」

証人=「だから兄貴と一緒に仕事していたと答えたと言ったでしょう」

山梨検事=「そういう風に嘘を言ったと、こういう意味ですか」

証人=「そうですね」

山梨検事=「どうなんですか」

証人=「だからそういう風に言ったでしょうね、当時は。だから親父がそういう風にうち(家)の仕事を兄貴とやっていたと言って、もちろんだから別件逮捕された時もそういう風に言ったからそれと同じようなことを言ったんじゃないんですか」

山梨検事=「そういう風に言えと言われたから、その通り言っていたと、こういうことですか」

証人=「ええ、そうです」

山梨検事=「そうすると、この尋ねに来たのはいつ頃ですか」

証人=「十九日が水村正一と野球見に行った、その前の日曜日かも知れないですね、十二日頃かな」

山梨検事=「親父とそういう打合せをしたのはいつ頃でしょうか」

証人=「だからその前後じゃないですか、とにかく石田義男が警察に聞かれたと言われたんだからその前後じゃないですか。その前じゃないですか。親父がどこから聞いて来たか、その点分からないですけど、自分は十五日頃だと思ったですけどね、親父に言われたのは。だからそういうのを聞かれてみるとそれよりもっと前かも知れないですね。自分のメモには十五日となっているんですけど」

山梨検事=「石田は十九日頃だと言っているんですがね」

証人=「十九日というのはあり得ないですね、西武園へ野球見に行ったんですから。これは水村正一もここで述べているように十九日は西武園へ野球見に行ったんだから、午前中は仕事をしているんだからそういうことはあり得ないです。これは間違いないです。その前の日曜日ですね、そうすると十二日です」

(続く)

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○実は五月一日の朝、石川被告は仕事に行くと家族に告げ家を出るが、西武園などで遊び、この日は仕事をサボっていた。

狭山事件が発生し、石田養豚場の出入関係者らが疑われてゆくなかで、父=富造は、一雄の五月一日のこの事実を知らぬまま本人に「もし警察に五月一日の行動を問われたら兄貴と働いていた」ことにしておけと言った。これは息子が事件前に養豚場で働いていたゆえ、あらぬトラブルに巻き込まれぬよう心配し、家族で口裏を合わせたものだった。

このことが石川一雄の明確なアリバイを示せない原因となってしまう。

(千葉刑務所の待合室で息子の一雄との面会を待つ父親の石川富造氏。"一雄は無実"と訴え続けたが一九八五年十一月二十三日に亡くなった。写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用)

○そして狭山事件とは全く関係ないが、元気でな、ドウデュース。