アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1186

【公判調書3671丁〜】

(写真は事件当時の石川一雄被告。二十四歳だった彼は、捜査当局のリークにより駆け付けた共同通信社の記者によって、逮捕前という絶妙なタイミングで撮影されていた。事件とは無関係ゆえのこの表情であったが、その背後には冤罪など"なんのその" 、"どうでもいい"という猛烈な組織が迫っていた)

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               「第六十六回公判調書(供述)」(昭和四十七年)  

証人=石川一雄被告人

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山梨検事=「(東京高等裁判所昭和41年"押"第20号の4   石川一雄手紙十七通のうち九月六日付の手紙を示す)その手紙の一番最後に(句)として歌が書いてあるんだな」

証人=「はい」

山梨検事=「君は歌というのはいつ頃からやりだしたの」

証人=「いつ頃やりだしたか分からないですけど、ただこれは多分法廷に行ってお袋が泣いているところを見てそう読んだと思うんですね、自分としては」

山梨検事=「第一回公判が三十八年の九月四日だわね」

証人=「はい」

山梨検事=「その手紙が九月六日だから」

証人=「だから公判後ですね」

山梨検事=「公判後作ったんだと、こういうことだな」

証人=「はい」

山梨検事=「"母の声  ふとふりかえり  母なみだ" 大した歌を読むんだな」

証人=「まあ大した歌じゃないですね」

山梨検事=「この句を作る前にいろいろ推敲をして、一番初め作った句からいろいろ推敲しておったんじゃないの、その当時」

証人=「そんなことないと思いますね」

山梨検事=「何か担当さんに」

証人=「森脇担当というのがいるんですね、その森脇担当というのが短歌とか、そういうのをやっていたらしいですね。そういうのといろいろやったから、あるいは書いたかも知れないですね。そういうのをやってみないかとノートをくれたか、そういうのを見せてくれたか分からないですけど、そういうのを見て、じゃ自分もやってみようかなという気になったんですね」

山梨検事=「九月四日にあなたが作ったのは、"声聞けど見るに見られず母の顔" というのを作ったんだが、それがいろいろ」

証人=「そんなのは作ってないでしょう、載ってますか、それに」

山梨検事=「身分帳にね」

証人=「それは担当が作ったんじゃないんですか。あまりに上手すぎるんじゃないですか。誰が考えても当時の自分からしたらちょっと考えられないですね」

山梨検事=「担当も君のために句を作るような暇はないでしょう」

証人=「そんなことないです。手紙書いてくれるんだから、そういう暇は十分あるんじゃないですか。キャッチボールもしてくれたんですよ、自分は東京拘置所は違うけど、浦和の場合は、自分は十二時とかそういう休みにわざわざ担当の付き添いでキャッチボールをやってくれるんですよ。そういう風に暇があるんですよ。そういう暇はどうするんですか、それは暇がないというんですかね」

山梨検事=「まあ九月四日の公判の時のことを思って作ったんだろうと思うと、こういうことですね」

証人=「はい、そうです」

山梨検事=「今でも句を作ってるの」

証人=「今は作ってません、前は作ったけど」

山梨検事=「いつ頃まで」

証人=「四十三年頃までですね」

山梨検事=「なぜやめたの」

証人=「無罪訴えるのに忙しいからそんなのしている暇ないですよ」

山梨検事=「また少し話は変わるが、あなたが高橋から借りたオートバイを東島に貸して壊されて、で、水村修理屋へ持って行って、その代金のことで東島が払うのか、自分が責任を負わなければならんのかということで、ごたごたしたということがありましたか」

証人=「ごたごたした?自分は警察に行ったです。で、幾日だったかな、三十八年・・・・・・四月、ちょうど事故があった日だから、埼玉銀行の前で自動車事故のあった日なんですが、ちょっと日にちは分からないですね、四月、もっと前ですね、三月、ストーブを焚いていたからね。狭山警察で、そこへ警察へ自分は行ったですね。自分は実はこういうわけで単車を相手から借りて、又貸ししたら事故を起こした、それがちょうど関源三さんがその事故のとき立ち会ったものですから、関源三さんが当時立ち会ったからと、自分が言ったら、東島に代金を払わせるにはどうしたらいいですかと言ったら、東島から、自分は車を借りて事故を起こしたという署名を取って来いと言ったですね。そうでなければ受け付けることは出来ないと。それからその翌日、水村修理工場へ行って、実はこういうわけで東島に貸したんだけど、正ちゃんて、自分は言っていたですけど、正ちゃん、東島のうち(家)へ行ってくれないかと言ったですね。そしたらお前のことだからよく知っているから、よし、行ってやろうということで東島の家に行ったですね。で、東島はちょうど夜八時頃だったかな、自分たちが行ったのが分かったらしくて便所へ飛び込んじゃったですね、で、親父さんはいくら言っても東島は今いないと言ったですね。で、正ちゃんが何か今、男が便所へ飛び込んだから開けてみようというので便所へ行ったら東島は便所に隠れていたですね。それで正ちゃんと東島と自分と三人で相談して話し合って東島が金を払うということで、そこで自分はもうタッチしないということで正ちゃんと約束したですね」

山梨検事=「そのいきさつについては一審でも水村の奥さんが証人として出ているようなんだが、その警察へ行った時にはあなたとしては何を相談しに警察へ行ったの」

証人=「だから自分は代金を払う必要はないと思ったですね、車を貸しただけだから」

山梨検事=「自分が壊したんじゃないんだから、東島が払うのが相当だというのでそれを何するために警察へ行ったの」

証人=「水村正ちゃんというのは、自分が修理工場に出したものですから自分が事故を起こして自分が代金を払うものと思ったわけですね。だけど自分としては東島が壊したものだから、それで東島の家へ行ってくれと言ったわけです」

山梨検事=「水村に言ったわけだな」

証人=「東島に言ったら払わないと言ったですね。それじゃ困るからというので狭山警察へ行ったです」

山梨検事=「だから行って何するために」

証人=「こういうわけで自分はただ車を知ってる修繕工場へ、東島が壊したやつを持って行っただけだと。もしそれが事実だったら東島の署名を持って来いと言ったですね。その事件を起こしたことを。それから嫌になっちゃったですね」

山梨検事=「むしろその、当然東島が払うべきものであると、お前さんの理屈の通りなら東島が払うのが相当じゃないかという風に警察は説明してくれたんじゃないんですか」

証人=「いや、だからそれがもし事実だったらもちろん警察は自分が訴えるだけだから、相手もいることだから、相手の言うことも聞かなきゃ分からない、だから東島がこの車を壊したとかなんとかいうことを、東島の署名を取ってくれば、警察の方でやってくれると言ったんです。それを自分は署名を取らないままで狭山事件になったんです」

(続く)