アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1183

【公判調書3661丁〜】 

                   「第六十六回公判調書(供述)」昭和四十七年

証人=市村美智子(二十三歳)

    裁判長は証人に対し、前回の宣誓の効力を維持する旨を告げた。

    なお、別紙速記録記載の時期に証人は悪寒を訴え、貧血症の兆候が見受けられたので、裁判長は証人に対する尋問を中止し、同証人に対して退廷を許した。

                                            *

裁判長=「今年二月八日に五十六回公判廷で証人として証言して途中のままになっているため、今日は続きをするため来てもらったんだが、具合はどうですか、よくなったんですか」

証人=「はい、よくなりました」

                                            *

山梨検事=「この前の石田弁護人の質問は、前に一番初めに事件当時、警察や検察庁で調べられたことはないかということで、あなたは初め、ないと答えて、その後になって、いや調べられたことがあるという風に言い直したようですが、そこの辺のところでお終いになっていると思いますが」

証人=「この前は気分が悪くて、よく覚えてないんですけれども」

山梨検事=「その点はどうですか、当時警察なり検察庁なりで駐在でもいいんです、調べられたことはないですか。あるんですか」

証人=「あります」

山梨検事=「そしてその時はどういうことを聞かれたわけですか」

証人=「一日にはお兄さんが何時頃帰って来たかとか」

山梨検事=「要するに石川一雄が何時頃帰って来たかということですか」

証人=「はい。それから濡れて来なかったかとか、りぼんちゃんという本があったかどうかとか、それくらいです」

山梨検事=「それで、この前あなたがここで証言した内容と、事件当時あなたが警察なり検察庁の人に述べたこととは同じですか、違いますか」

証人=「・・・・・・、同じ・・・・、よく記憶ないんですが、多分同じだと思います」

山梨検事=「初めねぇ、あなた五月一日の日には学校を早退さしてもらったという記憶がはっきりしているんで、その日の記憶はそれに基づいてこうこうでした、という風に説明したことはないですか」

証人=「分かりません、あんまり記憶ありません」

山梨検事=「あなたがこの前この法廷で、被告人は五月一日の日には何時に寝たかというのに対して、夜の九時半頃には家の人が皆寝ましたと、こういう風な証言をしておるんで、そのことが正しいかどうかということを念を押して聞いているんですが」

証人=「その通りです」

山梨検事=「しかしもう、八年も経っている昔の話だから、事件当時にも同じことを聞かれているから、事件当時は八年前の話だから、その時にあなたは五月一日というのは、その時さえ、あなたが聞かれている時点というのは一ヶ月近く経っているわけだから、五月一日はどうして記憶あるのかというと自分は学校を早退したからよく覚えている、その日はこうこうこうでしたという説明をしている、ところが、その学校を調べてみるとあなたが早退した日は五月一日ではないんだなあ。もう、三十八年の時点ですらあなたの記憶は曖昧だったわけだねぇ。それが、そんなにはっきり言えるのは何故だということを、まあ検察官としては聞きたいんです」

証人=「父がいつも十時頃になると皆に寝るようにうるさいんです。ですから皆十時前には寝るようにしてました」

山梨検事=「皆うちの父さんがやかましいから寝ることになっていた、だから皆五月一日も寝たでしょうと思います、ということですか」

証人=「・・・・・・・・・」

山梨検事=「そんならそうで話は分かるんですがそういう意味ですか」

証人=「・・・・・・・・・」

山梨検事=「どう」

証人=「いつも寝ていたように記憶します」

山梨検事=「いつも寝ていたような記憶がするんで一日も寝ていたように思いますと、こう言われるんですね」

証人=「はい」

山梨検事=「そうすると、まあ話をちょっと変えますけれども、五月一日には六造兄さんも九時半頃から寝ていたということになるんですか」

証人=「ちょっと分かりません」

山梨検事=「どうして六造兄さんだけ分からないの、被告人は分かって六造兄さんは分からないの」

証人=「一雄さんが帰って来てから私と一緒に、テレビを見ていたのも寝るのも一緒だったから」

山梨検事=「あなたの記憶は先ほどの説明だと五月一日かどうかはっきりしないが、お父さんがやかましくて早く寝ろというので九時半頃には家の人は皆寝てると思う、だから五月一日にも寝ていたと思うと、こういうことだね、あなたの説明は」

証人=「はい」

山梨検事=「ということになれば、六造兄さんだって寝てることになるんじゃないか、一雄さんだって寝てれば六造兄さんだって寝てると、六造兄さんは親父の言うことを聞かないという理屈があるならば別ですけれどもね」

証人=「一緒だったと思いますけれどもよく記憶はありません、はっきりした記憶はありません」

山梨検事=「(昭和三十八年六月九日付石川美智子の検察官に対する供述調書、および三十八年六月二十八日付石川美智子の検察官に対する供述調書を示す)」

                                            *

中田弁護人=「それは私どもに開示されてないんじゃないんですか」

山梨検事=「いや前回お見せしたと思いますが」

中田弁護人=「いや見てませんよ、見せて下さい」

山梨検事=「それでは弁護人がご覧になっている間に、寝る部屋のことを聞いておきますが、被告人は、その当時はどの部屋に寝ておりましたか」

証人=「六畳の部屋です、玄関入って左側です」

山梨検事=「玄関入ってすぐの四畳半じゃないの」

証人=「六畳です」

山梨検事=「清と一緒に四畳半に寝ていたんじゃないんですか」

証人=「・・・・・・・・・」

山梨検事=「あなたは」

証人=「六畳です」

山梨検事=「同じ部屋ですか」

証人=「はい」

山梨検事=「それから六造は」

証人=「奥の六畳だと思います」

山梨検事=「当時は今と間取が、あるいは違うのかも知れませんが、三十八年頃の間取とあるいは違うのかどうか、三十八頃の間取は覚えていますか」

証人=「・・・・・・・・・」

山梨検事=「あの調書によると一雄と清が玄関入ってすぐの四畳半に寝ていたと、私は六畳間に寝ていたと、六造さんは奥の四畳半に寝ていたと、こうなっているんですがね」

証人=「・・・・・・・・・、はいその通りだったと思います」

                                            * 

中田弁護人=「結構です」

山梨検事=「それでは、あなたの小川検事に対する調書なんですが、見て下さい。二通あるんですがね」

(この時証人は、本人の検事調書を見ている内に気分が悪くなり退廷した)

 

昭和四十七年九月五日           東京高等裁判所第四刑事部

                                                      裁判所速記官  沢田怜子

                                            *

○今回出廷した証人は石川一雄被告人の妹である。

    考えてみれば冤罪に巻き込まれるということは、親や兄弟そして親戚と、本人を含め関係者らが丸ごと地獄へ突き落とされるという恐るべき事態に見舞われることがわかる。また被害者側もその苦しみ悲しみが消えることはない。

   では写真の生き物はどうであろうか。

   衣食住の"食"だけ常に留意しておけば、あとはご覧の通りである。憲法も何もなく無税にして自由であり、ましてや冤罪など存在しえない素晴らしき世界に生きている。

   したがって己の寿命が尽きたならば、ぜひとも彼等の仲間に入りたいと願う老生は、本日もこうして念を送っているのであるが、たとえばこの猫は、それを受信しているのかどうか不明である。