アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1180

(狭山事件について語りたく、この猫に近づくも早々に拒絶される。しかし、じゃ君は佐野屋って知っているかいと迫るが、下校中の女子小学生らがこちらを指差しているのを見、老生は足早に帰宅した)

狭山事件公判調書第二審3647丁〜】

             「第六十五回公判調書(供述)」(昭和四十七年)

証人=野口利蔵(四十六歳・警察官=所沢警察署捜査係巡査)

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松本弁護人=「そうすると私が非常に疑問に思いますのは、佐野屋というのは事件の焦点を為す家でありますから、佐野屋の主人というのもこの方は非常に捜査に協力する方ですから、捜査員にいろんな事情聴取をされている、そういう人ですからあなた方が一般捜査でいらっしゃって、そういう、ある意味では非常に重要なニュース、つまりスコップがどこで紛失しているということを聞いたというようなことを探知されるというのは、何かそこによほど格別の事情でもなければちょっと不自然のようなんですがね」

証人=「いずれにしても雑談の中からそういう聞込みがあったと思います」

松本弁護人=「積極的な申し出じゃないんですね、いわば雑談の中で出てきたことですね」

証人=「はい」

松本弁護人=「佐野屋の主人はこの善枝ちゃん殺しの事件には非常に強い関心を持っておられたでしょうね」

証人=「はい」

松本弁護人=「と、そういうことについて佐野屋の主人があなたに向かって言われた雰囲気ですね、そういうことを思い出せませんか」

証人=「・・・・・・それほど重要視しないで話してくれたような記憶があります」

松本弁護人=「そうすると、こういうことではないんでしょうか。確実な話ではなくて、たくさんスコップを使っておるのは例えば豚屋があって、そこでよくスコップを使っているから、ある程度分かりやしないか、というような意味の話が出たんではありませんか」

証人=「違います」

松本弁護人=「それにしてもあなたのご記憶が、あまりにも非常に重要な、しかもあなたが非常に関係深いことについて、薄らいでおられるのが残念なんですけれども」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

松本弁護人=「それから、その日に石田豚屋に行かれましたね」

証人=「はい」

松本弁護人=「この石田豚屋もあなた方が初めてじゃなくて、それまでに捜査員が何べんも行ってたんじゃありませんか」

証人=「恐らく行っておると思いますが、私には確かなことは分かりません」

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山梨検事=「(弁護人に開示した昭和三十八年五月六日付の証人作成の報告書を示す) これはあなたの作成したものですか」

証人=「はい」

山梨検事=「あなたの字ですか」

証人=「ええ、報告書はそうです」

山梨検事=「それを見ますと先ほど中田弁護人の説明を当てはめていきますと、まず報告書を書いて、で、本部へ持って行って、それで被害上申書をもらって来いというんでもらって来て、またそれを付けて報告書を出したという、その二回目の報告書ではないかと思うんですがね」

証人=「はい」

山梨検事=「検察庁にはそれしか来てないんですが、その報告書の前の方に、前回報告の通りとありますね」

証人=「はい」

山梨検事=「最初に作ったやつがもう一通あるわけでしょうか」

証人=「はい」

山梨検事=「その文書のおもてを見て下さい。先ほどあなたと吉田刑事がどちらが上席かと、その文書だけから見るとあなたのほうが先に書いてあるんで、まあ当然、今日あなたが証人として呼ばれたと思うんですけど、その点はどうなんですか」

証人=「確か報告書を作成したのは私です。上申書は吉田刑事が私と一緒に行って作ったんです」

山梨検事=「実際に石田豚屋と話したのは先ほどの証言のような内容だということですか」

証人=「はい」

山梨検事=「それからこれは弁護人があるいは問題にするかと思うんで確かめておきたいんですが、石田豚屋に行った時に犬が吠えたかどうかという問題ですね、まあ、あなたは先ほどの証言で豚屋の豚小屋がいくつあったかということも、スコップがいくつあったかということもあまり記憶がないようなんでね、しかし犬は記憶があるというんだが、犬は、吠えたから、ああ犬がいたかということが記憶に残ったと思うんですが、どうですか」

証人=「・・・・・・・・・」

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中田弁護人=「豚小屋の方の犬は吠えなかった、自宅の犬は吠えたという先ほどの証言を前提にして今聞いておられるんでしょうね」

山梨検事=「いずれにしても犬が吠えたから、犬がいたということが記憶に残っているんじゃないかと聞いているんです」

証人=「・・・・・・はっきりした記憶はありません」

山梨検事=「はっきりした記憶がないというのは吠えなかったという記憶なんですか、吠えたという記憶なんですか、それがはっきりしないというんですか」

証人=「はい」

山梨検事=「いずれともはっきりしないというんですか」

証人=「はい」

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昭和四十七年八月三十日       東京高等裁判所第四刑事部

                                                裁判所速記官  重信義子  印

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○以上で第六十五回公判は終える。