アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1179

狭山事件公判調書第二審3644丁〜】

             「第六十五回公判調書(供述)」(昭和四十七年)

証人=野口利蔵(四十六歳・警察官=所沢警察署捜査係巡査)

                                            *

松本弁護人=「五月二日から十七日まで聞込みをされたんですか」

証人=「はい」

松本弁護人=「そういう聞込み班というものはあなたと吉田さんの班以外にも相当多数おられたわけでしょうね」

証人=「そうです」

松本弁護人=「あなたが担当されたのは主として堀兼地区ということでしたね」

証人=「はい」

松本弁護人=「堀兼地区にあなたの班以外にそういう二人で班を作って聞込みをされるという方々はどのくらいおられましたか」

証人=「・・・・・・三十組から五十組前後はいたと思います」

松本弁護人=「これが常時、五月二日から十五日間くらい、ずっと聞込みに回っておったと、こういうことになりますか」

証人=「はい」

松本弁護人=「これは堀兼地区だけについて今証言されているんですね」

証人=「いや、全部の捜査員です」

松本弁護人=「堀兼地区について言えばどの程度だったか、分かりますか」

証人=「二十組くらいは出てたんじゃないかと思います」

松本弁護人=「堀兼地区は約何戸くらいの家があるんでしょうね」

証人=「分かりません」

松本弁護人=「そうすると証人と吉田刑事がお回りになった範囲の家は、一日平均十戸くらいと仰ったんですが、全体で何戸くらいありますか、ざっとしたご記憶でいいんですが」

証人=「・・・・・・三、四十軒は回ったと思います」

松本弁護人=「そうすると、日数の割合には回った数は少ないんですね」

証人=「そのほか捜査以外の雑役のようなこともありましたから」

松本弁護人=「時によっては一つの家にしか回らないというようなこともあったわけですか」

証人=「はい、重複した家もあります」

松本弁護人=「あなたはこの佐野屋に行って、三十分ないし一時間お話をなさって、その話の中からスコップの問題を聞いたと、先ほど言われましたね」

証人=「はい」

松本弁護人=「それは、佐野屋に巡回班が行ったのはあなたと吉田刑事が初めてではもちろんありませんね」

証人=「初めてじゃないと思います」

松本弁護人=「佐野屋というのは事件のいわば重要な位置をもっている家ですから、もちろんあなた方が初めてではないでしょうね」

証人=「はい」

松本弁護人=「そうすると、佐野屋には五月二日の夜、まあ、厳格には五月一日の夜以降ですけれども、つまり脅迫状に金を持って来いと指定してあった、それに合わせてあの辺に待機したわけですけれども、そういうことが行なわれて以後は、ほとんど常時と言っていいくらい捜査員の方々が佐野屋の店に出入りしておられたのと違いますか。つまり堀兼地区だけで二十組くらいの刑事が捜査員で動いていたということですから、そういう状態ではございませんでしたか」

証人=「そういうことです」

松本弁護人=「あなた方が佐野屋に行ったのは初めてでしたね」

証人=「はい」

松本弁護人=「あなた方は一般捜査という形で行かれたわけでしょう」

証人=「はい」

松本弁護人=「あなたが佐野屋の聞込み専門で特に指名されて行かれたというわけじゃないですね」

証人=「はい」

松本弁護人=「どの範囲の家庭を回るかということはだいたい上司から指示があったんですか」

証人=「その朝、指示があるわけです」

松本弁護人=「その日は佐野屋を含む何軒くらいの家に聞込みに行けという指示があったんですか」

証人=「何軒くらいとは限定されませんけれども、その日も十軒くらいは聞込みしたんじゃないかと思います」

松本弁護人=「だいたい上司の指示に従って、計画に従って聞込みをなさったんですね」

証人=「はい」

松本弁護人=「それはそうすると、その地域はあなた方の聞込み班が初めて行ったんでしょうか。それともすでに一日前、あるいは二日前、三日前という風にほかの班が一応聞込みされておって、尚且つ、非常に犯行に関係が深い場所ですから佐野屋というのは、だからもう一度行って来いという風なことでもあったんでしょうか」

証人=「いや、地域別に分かれまして、私達は偶然にそちらへ行ったわけです」

松本弁護人=「あなたが行かれた時に、本部の捜査員とかそういう風な人達が行っておりませんでしたか」

証人=「おりませんでした」

松本弁護人=「しかしあなた方が、つまり二日の張込みがあって、それで犯人を取り逃がしたその後、佐野屋の周辺をめぐって三日なんかは全面的な現場検証が行なわれておりますけど、その日は別として、それ以後初めてあなた方が行かれたというわけのものじゃないでしょう」

証人=「その点は分かりませんけれども、恐らく前にも何人かは行ってるんじゃないかと思います」

松本弁護人=「恐らく店でもありますから、捜査員は絶えず立ち寄っているでしょうね」

証人=「はい」

松本弁護人=「佐野屋には清涼飲料水とか、ちょっとそこで喉を潤すというようなものも売ってましたでしょうね」

証人=「はい」

松本弁護人=「そういう意味ではあなた方も利用なさったんじゃないんですか。つまり捜査の途中でそこへ立ち寄って、別に佐野屋ということに意味があるわけじゃないんですけど、そういう小売店ですから、そういう所へちょっと立ち寄るということはなかったですか」

証人=「私はありません」

(続く)

                                            *

○早朝、とある駅前のゴミ捨て場に古本が捨てられており、私は素早く近づいた。

・・・日本残酷物語?これは確か古書価が千円から二千円くらいするはずだ。その下の"情事の計算"は高くて千円ほどだったな。さらにその下は・・・視線を感じ辺りを見回すとパトカーがゆっくりと近づいていた。後ろ髪を引かれながら私は駅内へと向かった・・・。