(事件当時の佐野屋酒店)
【狭山事件公判調書第二審3640丁〜】
「第六十五回公判調書(供述)」(昭和四十七年)
証人=野口利蔵(四十六歳・警察官=所沢警察署捜査係巡査)
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裁判長=「佐野屋でそういうスコップの話が出た後に、佐野屋で雑談して、それから夕方一旦帰って報告を上司にしてから石田豚屋のほうに行ったというんですか」
証人=「はい」
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阿形弁護人=「そうすると佐野屋で三十分か一時間くらい雑談していたその途中でスコップの話を聞いて、佐野屋を出るまでまた若干の時間があったと、こういうことでしたね」
証人=「はい」
阿形弁護人=「そうするとその出るまでの間に石田豚屋の所在場所は佐野屋さんから聞いているということでしたね」
証人=「はい」
阿形弁護人=「そうすると、佐野屋さんを出てからすぐどこへ行ったんですか」
証人=「聞込みです」
阿形弁護人=「またほかの所へ」
証人=「はい」
阿形弁護人=「佐野屋さんを出て、すぐ近くですか」
証人=「近辺です」
阿形弁護人=「近辺の何軒くらい参りました」
証人=「ちょっと記憶ありません」
阿形弁護人=「この日も十軒くらいやったというんですね」
証人=「はい、平均十軒くらいだったと思います」
阿形弁護人=「佐野屋さんを出たのは何時頃でしたか」
証人=「午前であったか、午後であったか、ちょっと記憶ありません」
阿形弁護人=「そうすると佐野屋さんから、ほかを数軒聞込みした後、署へ帰ったわけですか」
証人=「捜査本部へ帰ったんです」
阿形弁護人=「で、佐野屋さんからスコップのことを聞いたことを報告したんですか」
証人=「はい」
阿形弁護人=「それは書面で報告した」
証人=「書面です」
阿形弁護人=「それが夕方ですか」
証人=「夕方だったと思います」
阿形弁護人=「それからその日はどうしました」
証人=「それから石田さんへ行ったような記憶があります」
阿形弁護人=「それは誰かの指示に基づいて行ったんですか」
証人=「上司の指示を受けて行きました」
阿形弁護人=「上申書による報告をして、それに対して上司があなた方に指示をした」
証人=「はい」
阿形弁護人=「そうして出発したのは何時頃ですか」
証人=「もう薄暗かったような気もします」
阿形弁護人=「石田豚屋へ行けということは、何という人が指示しましたか」
証人=「当時の捜査主任官がちょくちょく変わっていたのでちょっと記憶がありません」
阿形弁護人=「上申書の名宛人とは別の人ですか」
証人=「別の人です」
阿形弁護人=「やっぱり佐野屋へ聞込みに行ったあなたと吉田さんの二人で行けと、そこまでの指示ですか」
証人=「私と吉田刑事で行ったと思います」
阿形弁護人=「そういう指示ですか」
証人=「はい」
阿形弁護人=「二人で行けと言ったから二人が行ったわけですね」
証人=「はい」
阿形弁護人=「それで石田豚屋の石田一義さんと会ったわけですね」
証人=「はい」
阿形弁護人=「初めに何と言ってあなたは話を切り出しましたか」
証人=「記憶はありませんけれども、いずれにしてもスコップのことを聞き出したと思います」
阿形弁護人=「どういう風に話をしたんですか」
証人=「スコップが盗まれた事実について」
阿形弁護人=「スコップがなくなってませんか、とか何とか、そんなことを聞いたんですか」
証人=「そのくらいのことは聞きましたけど」
阿形弁護人=「スコップがなくなったと聞いたんだが本当ですかと、そういうことを聞いたんですか」
証人=「はい」
阿形弁護人=「そしたら石田さんはどう言いました」
証人=「取られていることは事実だと」
阿形弁護人=「取られているということは誰かに話してあるんだという風なことは話の中で出て来ましたですか」
証人=「出なかったと思います」
阿形弁護人=「どうしてあなた方警察官が盗まれたことを知っておるんですかと、よくご存じですねとか、そういう風な反応はなかったですか」
証人=「ちょっと記憶ありません」
阿形弁護人=「よく捜しに来てくれた、待ってましたという風な反応だったですか」
証人=「・・・・・・・・・」
阿形弁護人=「それとも訪ねて来たのが意外であったような反応でしたか」
証人=「・・・・・・・・・ちょっと分かりません」
阿形弁護人=「記憶ないわけですか」
証人=「はい」
(続く)