アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1176

晴天であれば、狭山市の近くを流れる入間川河川敷からは富士山を眺められ、その景観を存分に味わえる。保温ポットに入れた熱燗をちびり、ちびり飲みながら河川敷の隅で過ごすひと時は格別である。

狭山事件公判調書第二審3637丁〜】

             「第六十五回公判調書(供述)」(昭和四十七年)

証人=野口利蔵(四十六歳・警察官=所沢警察署捜査係巡査)

                                            *

橋本弁護人=「その石田豚屋の家というのは、犬をたくさん飼っていたでしょう」

証人=「ええ」

橋本弁護人=「犬がたくさんいることは見ましたね」

証人=「ええ」

橋本弁護人=「その犬に吠えられたという記憶はありますか」

証人=「吠えられたような記憶があります」

橋本弁護人=「その石田豚屋の犬のいる家の真向かいにもう一つ豚舎があるんですよ、道路を隔ててすぐ前ですがね。その豚舎を見なかったですか」

証人=「見ません」

橋本弁護人=「あなたの記憶では豚舎は一箇所しか見ないという記憶なんですか」

証人=「・・・・・・その豚舎の点については記録を見なければ思い出せません」

橋本弁護人=「その石田さんの家から豚舎に行くには途中で橋を渡りますね」

証人=「ちょっと分かりません」

橋本弁護人=「橋を渡る時、ドラム罐に気付かなかったですかね」

証人=「・・・・・・・・・・・・分かりません」

橋本弁護人=「その豚舎の前に農家がありますね」

証人=「・・・・・・・・・」

橋本弁護人=「その家には聞込みに行かなかったですか」

証人=「・・・・・・戸門さんといううちですか」

橋本弁護人=「ええ、そうです」

証人=「行ったことあります」

橋本弁護人=「それはいつでしょうか」

証人=「ちょっと記憶がないんですけど」

橋本弁護人=「その石田さんの豚小屋に行った日と同じ日ですか、それより前ですか」

証人=「あの戸門さんは私はこの狭山事件の前から知っておりまして、あそこの倅を私がちょっとしたことで調べたことがあるんです」

橋本弁護人=「それじゃ堀兼に聞込みに行った時、一番最初、戸門さんを訪ねたわけですか」

証人=「留守だったと思います」

橋本弁護人=「訪ねてみたけれども留守だった」

証人=「はい」

橋本弁護人=「戸門さんを訪ねたのは何日か、日にちは分かりませんか」

証人=「ちょっと分かりません」

橋本弁護人=「一回目訪ねたとき留守で、それから二回目訪ねて」

証人=「・・・・・・主人か倅に会ったような気がします」

橋本弁護人=「あなたが知り合いというのは、戸門さんのうちの誰と知り合いなんですか」

証人=「戸門勇さんだと思います」

橋本弁護人=「そうすると、二回目に訪ねて、主人か息子に会ったことがあると」

証人=「はい」

橋本弁護人=「それは石田豚屋のスコップの話を聞いて石田豚屋に行った日より前になりますか」

証人=「はっきりしたことは分かりません」

橋本弁護人=「その戸門さんでどういう話を聞きましたか」

証人=「別にこれという話はありませんでした」

橋本弁護人=「スコップのことは聞かなかったですか」

証人=「聞かなかったです」

                                            *

阿形弁護人=「一般捜査というのは巡回連絡を兼ねてやっていたという話でしたね」

証人=「はい」

阿形弁護人=「一日平均十軒くらいと」

証人=「そういう記憶であります」

阿形弁護人=「それで雑談などもいろいろやって、一軒ごとに訪ねて行ってるわけですね」

証人=「はい」

阿形弁護人=「佐野屋の主人とはどんな話をしたんですか」

証人=「ちょっと記憶ありません」

阿形弁護人=「一般的にどんなことを話すんですか。やっぱり狭山事件のことについてですか」

証人=「いずれにしても当時は狭山事件の話であの周辺はもちきりでしたから、その話だったと思います」

阿形弁護人=「佐野屋でも、おそらくそういうことね」

証人=「はい」

阿形弁護人=「そのほかに事件と関係のないようなことも話はしたんですか」

証人=「したと思います」

阿形弁護人=「たとえばどんなようなことですか」

証人=「たとえば佐野屋さんの商売上のこととか、景気はどうだとか、そういうようなことを聞いたような気もします」

阿形弁護人=「スコップが盗まれたというのは、どんなきっかけでこの佐野屋さんが話をし出したんですか」

証人=「ちょっと記録を見なければ分かりません」

阿形弁護人=「記録には書いてあったんですか」

証人=「報告書には書いてあると思います」

阿形弁護人=「スコップのことを、あなたのほうから口に出したわけじゃないんですか」

証人=「はい」

阿形弁護人=「そういう証言でしたね」

証人=「はい」

阿形弁護人=「どんなきっかけでということは、確かに捜査報告書に書いたことは間違いありませんか」

証人=「はい、あると思います」

阿形弁護人=「石田豚屋で盗まれたんだと話をしたと、こういうことですか」

証人=「はい」

阿形弁護人=「それですぐに二人で石田さんの所へ行ったわけですか」

証人=「はい」

阿形弁護人=「石田さんの家は前から知っておりましたですか」

証人=「知りません」

阿形弁護人=「佐野屋さんに道順を教えてもらったわけですか」

証人=「佐野屋さんであったか、誰か、ちょっと記憶がありませんけれども、教わって行きました」

阿形弁護人=「佐野屋でなければ、どこで教わるんでしょう」

証人=「いずれにしても教わって行ったことは事実です」

阿形弁護人=「ですから佐野屋さん以外の人に教わるとしたら」

証人=「佐野屋さんだと思いますけど、はっきりした記憶は申し上げられません」

阿形弁護人=「地名を聞いたわけですか、それとも道順を略図でも書いてもらって」

証人=「道順を教わったような記憶があります」

阿形弁護人=「スコップのことを聞いて、すぐに飛び出したわけですか」

証人=「その日の夕方帰って上司に報告して、それからだったと思います」

阿形弁護人=「そうじゃなくて、佐野屋さんにスコップのことを聞いてから、もうそこで聞込みを打ち切ってすぐ飛び出したのか、それともそのまましばらくまた雑談でも続けていたのか」

証人=「その後しばらく居たような記憶がします」

(続く)