アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1174

当時の石田養豚場。近くを流れるのは不老川。

手前が不老川であり、写真はここにかかる権現橋の北西端付近から豚舎方面(ほぼ東方)を撮影したもの。

同豚舎を西方から撮影した写真。

不老川の土手近くにあった石田養豚場のスコップの様子。

狭山事件公判調書第二審3632丁〜】

             「第六十五回公判調書(供述)」(昭和四十七年)

証人=野口利蔵(四十六歳・警察官=所沢警察署捜査係巡査)

                                            *

橋本弁護人=「その盗まれたという人は石田さんと言いましたか」

証人=「はあ」

橋本弁護人=「盗まれたという人の所へ行って、さらにその人から聞込みをするということはしなかったんですか」

証人=「石田さんは豚屋さんのような記憶があります」

橋本弁護人=「盗まれたというのは、豚屋の経営者ですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「その豚屋の経営者の所へは行かなかったんですか」

証人=「・・・・・・行って、盗まれた上申書を作成した記憶があります。被害上申書です」

橋本弁護人=「盗まれた本人から被害上申書を作成してもらったわけですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「それは佐野屋からスコップの話を聞いたという日と同じ日ですか、それとも別の日ですか」

証人=「その日のような記憶がします」

橋本弁護人=「盗まれた現場へも行って見たわけですか」

証人=「確か現場へ行った記憶があります」

橋本弁護人=「どんな現場か簡単に仰って頂けますか」

証人=「豚舎じゃなかったかと記憶しております」

橋本弁護人=「その豚舎は何か特徴がありますか」

証人=「記憶ありません」

橋本弁護人=「全然記憶ないですか」

証人=「ありません」

橋本弁護人=「その豚舎に豚はいましたか」

証人=「いたような記憶があります」

橋本弁護人=「何頭くらいいましたか」

証人=「ちょっと記憶ありません」

橋本弁護人=「百頭を超えますか」

証人=「いや、そんなにはいなかったと思います」

橋本弁護人=「豚舎のまわりは畑ですか」

証人=「畑です。小さな川が近所にあったような記憶がします」

橋本弁護人=「川のそばの豚舎と、そういう記憶ですか」

証人=「確かな記憶ではありませんけれども、そんなような気がします」

橋本弁護人=「その現場には誰に案内してもらったんでしょうか」

証人=「・・・・・・石田さんでなかったかと思うんですけど、それも確かなことは申し上げられません」

橋本弁護人=「被害者本人という意味ですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「石田さんの豚舎は二つ以上あるんですが」

証人=「ちょっと分かりません」

橋本弁護人=「先ほど川が流れておったと言いましたね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「川のそばの豚舎という意味ですか」

証人=「ええ。そういう記憶が・・・・・・」

橋本弁護人=「川のそばの土手にドラム罐などは置いてなかったですか」

証人=「ちょっと記憶ありません」

橋本弁護人=「豚舎の入口付近に犬はいませんでしたか」

証人=「そう言われるといたような記憶があります」

橋本弁護人=「吠えませんでしたか」

証人=「・・・・・・吠えられなかった記憶・・・・・・」

橋本弁護人=「そこに行った人は、あなたと吉田刑事と、その被害者本人と、それからその他にもいましたか」

証人=「三人だけだったと思います」

橋本弁護人=「そうすると現場へ行って、被害者からスコップを盗まれたという状況を直接あなたは聞いたということになるわけですか」

証人=「ええ」

橋本弁護人=「それで被害上申書を作ってもらって、それも上司に提出した」

証人=「ええ、この被害上申書は確か吉田刑事が作成したような記憶があります」

橋本弁護人=「本人に代わって、代筆をしたというんですね」

証人=「はい、二人一組で確か吉田刑事が当時の状況を作成したんだと思います」

橋本弁護人=「そのスコップが盗まれたという聞込みをしたのは何日か、覚えておりますか」

証人=「覚えておりません。全て記録を作成しておりますから、その記録が正しいので、その記録を見れば分かると思います」

橋本弁護人=「つまり正確に話を聞いた通り記録を作ったと」

証人=「はい」

橋本弁護人=「捜査報告書ですね、あなたが仰るのは」

証人=「はい」

橋本弁護人=「捜査報告書というのは、その日付で使ってあるんですか」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「後になって、あとの日付で作るということがあるんじゃないんですか」

証人=「そういうことはありません。その日のうちに全部作るんです」

橋本弁護人=「先ほどスコップの現物が発見されたのは聞いておるという話でしたね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「スコップの現物を見ましたか」

証人=「見ません」

橋本弁護人=「じゃその現物を被害者にあなたが見せて、これに相違ないかという確認はとってないんですか」

証人=「その後の捜査は私は従事しなかったです」

橋本弁護人=「スコップが発見されたのは何日か覚えておりますか」

証人=「覚えておりません」

橋本弁護人=「あなたが聞込みをした日と、現物が発見されたという日はどれくらい接近しておりますか。それとも同じ日ですか」

証人=「私には分かりません」

橋本弁護人=「そうすると佐野屋からスコップのことを聞き出したのはあなたとしては全く偶然ということになるんですか」

証人=「はい」

橋本弁護人=「あそこに聞けばスコップのことは分かるだろうという狙いがあって聞いたわけじゃないんですか」

証人=「そういう狙いは全然ありません。私はあそこの堀兼村は全然知りませんから、応援の立場で行きまして、全然村の様子は分かりません」

橋本弁護人=「その佐野屋の主人は、石田豚屋でスコップがなくなったということをどうして知っているかということを聞きませんでしたか」

証人=「聞きません」

(続く)