アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1172

    公園のベンチで妄想に耽っていたところ、履いていた偽コンバースに赤トンボが止まった。

    老生が子どもの頃、駄菓子屋には「昆虫採集セット」なる玩具が売られていて、箱の中には注射器と謎の液体入り容器が二つ入っていた。注射器にこの謎の液体を入れ終えると、気分はもう危険な医者である。

    近くの田んぼへ向かい、片っ端からトンボを捕まえてはこの注射を打ちまくった。緑色の小さなカエルにも相当数打った。皆あの世行きである。

    目の前の赤トンボは靴から離れず、老生は遠い過去を想い涙目になり、赤トンボを気の済むまで休ませた・・・。

狭山事件公判調書第二審3628丁〜】

             「第六十五回公判調書(供述)」(昭和四十七年)

証人=野口利蔵(四十六歳・警察官=所沢警察署捜査係巡査)

                                            *

橋本弁護人=「スコップのことについて捜査報告書を作成したと、こういうことですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「そうしますと、スコップのことについて何か捜査をしたわけですか」

証人=「いや、これは私の記憶ですけど一般捜査で聞込んだような記憶があります」

橋本弁護人=「あなたの言われる一般捜査というのは、どういうことを言うんですか」

証人=「当時は地区別に捜査範囲を分けて、狭山事件の内容に対する聞込み捜査です」

橋本弁護人=「そうしますと、二人一組になるわけですか」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「二人一組になって、ある特定の地域を軒並み戸別訪問をして、そして事件に関係あることは何でも聞いて来ると、そういうことを一般捜査というんですか」

証人=「はい」

橋本弁護人=「五月二日から捜査に入ったと言いましたね」

証人=「そういう記憶があります」

橋本弁護人=「それであなたはどの地区の担当になったんですか」

証人=「毎日その地域が違ったわけです。毎日違うということは結局、巡回連絡を兼ねておりますから、その地域が終わればまたほかの地域ということです」

橋本弁護人=「たとえば一日にどのくらいの地区を回るということだったですか」

証人=「十軒前後じゃなかったかと記憶しております」

橋本弁護人=「平均の話ですね」

証人=「平均です」

橋本弁護人=「先ほど半月ほど捜査に従事したというお話でしたね」

証人=「はあ」

橋本弁護人=「五月二日から半月というと、五月十七日頃までこの事件に関係して捜査に従事したということになるわけですね」

証人=「そういうことです」

橋本弁護人=「五月二日から五月十七日頃まで、あなたの捜査は全て一般捜査ですか」

証人=「はい」

橋本弁護人=「そしてだいたい平均十軒くらいずっと回って聞込みをして来たと」

証人=「はい」

橋本弁護人=「たとえば狭山市と言いましても大変広うございましてね、いくつかの、元は町や村が一緒になって市を作ったようですね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「被害者の居住地は元堀兼村と言いまして、堀兼なんですが、あなたのその担当した地区というのは部落名、あるいは町名で言いますとどういう所なんでしょうか」

証人=「堀兼地域です」

橋本弁護人=「堀兼の中がまたいくつかの部落に分かれていますね。赤坂とか」

証人=「はい」

橋本弁護人=「堀兼の中の、どの部分ですか。それとも堀兼全部ですか」

証人=「ちょっと記憶ありません」

橋本弁護人=「堀兼以外の地区でも聞込みをやっておりますか」

証人=「・・・・・・やりました」

橋本弁護人=「どの地区でしょうか」

証人=「私、地元が所沢ですから、所沢市内へも行った記憶があります」

橋本弁護人=「それはどんな事柄でですか。所沢と言いますと、一般捜査の対象としてはやや離れ過ぎていると思いますが」

証人=「その点ちょっと記憶がないんですけど、所沢ということは記憶があります」

橋本弁護人=「何かこの事件に関係のある、タオルの出所を尋ねるとか、手拭いの出所を尋ねるとか、あるいは、誰か被疑者の足取りを洗うとか、そういう特定の事柄で、所沢へ行ったんじゃないんですか」

証人=「いずれにしても所沢へ行ったことは記憶あるんですが、どういう捜査で行ったか、ということはちょっと記憶がないんですけど」

橋本弁護人=「行った時期はいつ頃ですか」

証人=「・・・・・・・・・」

橋本弁護人=「被害者の死体が発見されましたね、五月四日のことですが」

証人=「はい」

橋本弁護人=「この日の記憶はありますか」

証人=「日にちについては記憶ありません」

橋本弁護人=「死体の発見された当日は、あなたはどこでそういう捜査をしていましたか」

証人=「いずれにしてもこの狭山事件の捜査ですけど、どういう仕事をやっていたかということはちょっと記憶ありません」

橋本弁護人=「所沢に行ったというのはその死体が発見されるより前ですか、後ですか」

証人=「・・・・・・前のような記憶です」

橋本弁護人=「死体が発見される前ですか」

証人=「はい」

橋本弁護人=「どういう事柄で行ったかは思い出さないというんですね」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

(続く)