アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1170

 

【公判調書3622丁〜】

                      「第六十五回公判調書(供述)」

証人=高橋乙彦(四十七歳・警察官。事件当時は埼玉県機動隊分隊長)

                                            *

山梨検事=「あなたは現在、遺留品としてカバンだけの印象が残っていると言われましたね」

証人=「はい」

山梨検事=「それは被害者がカバンを持った女学生だということでカバンという印象が残っていると」

証人=「はい、現在ですね」

                                            *

裁判長=「芋穴の中に何かあるというので堤巡査を中に入れましたね」

証人=「はい」

裁判長=「堤巡査だけですか」

証人=「ええ、一人だけだったと思います」

裁判長=「それは何か、命令する時にどんな風に命令したかもちろん覚えていないと思いますが、一般的に言って、そういう穴の中には光線も通りにくいし、綿密に調べなければならないと思いますが、どういう風に、あなたは調べろという風に命令をしたと思いますか。その時言ったことは覚えてないと思いますが、覚えていればもちろんいいんですが」

証人=「芋穴の中に棒みたいな物が見えたんですが、で、中に入れて、中を、奥を捜せと言ったんですが」

裁判長=「例えば昼間だから底まで太陽の光が入って、一見して何が入っているか微細な点まで分かる状態だったんでしょうか。それとも、横穴もありますからね、光が通らず灯りか何か持って来なければ完全な捜索は出来ないような状態だったのか」

証人=「あんまり明るくはっきり見えるところではなかったんです。

裁判長=「何か燈火の補助手段を使うということはなかったんですか」

証人=「ええ肉眼だけです、入って」

裁判長=「そうするとビニールの風呂敷と、それに棒、これは上から見えていて見逃すはずは無いが、もっと詳細に見なさいということは特に言わなかったの、よく見てみろということは」

証人=「言ったんですが、その二つだけを出して来たんです」

                                            *

裁判長=「(東京高等裁判所昭和41年"押"第20号符5号棍棒を示す) これがそれだというんだが、だいたいそれらしいんですか」

証人=「だいたいこれだと思います」

裁判長=「これはあなた方としては当時何だと思ったんですか」

証人=「上から見た時は簡単に棒が置いてあるという頭だったんです」

裁判長=「すぐ直後に死体が発見されたでしょう、近所で。そういうことと何か関係があるのか、ないのかということは全然考えなかった」

証人=「出した時はまだ考えてなかったんです」

裁判長=「すぐ死体が発見されたあと、その方に行ってしまって、再度、死体発見の場所が近いわけだからあれは何か関係があったんじゃないかということを誰かが言ったか、あなたが考えてもいいんだが、再びその場所に戻って、もう少し綿密に見ようかなという考えは起こさなかったわけ」

証人=「死体のほうの警備にかかってしまったので・・・・・・」

裁判長=「そこには二度と戻って来なかったんですか」

証人=「来ません」

裁判長=「それを渡しただけで」

証人=「ええ」

裁判長=「のちになってでも、あなたはその棒について考えたことがある」

証人=「棒ですか・・・・・・何ですか」

裁判長=「この事件の発展していく経過は知ってるでしょう、その時点で考えてみて、あの棒は関係があったのかなあ、関係があったとすればどういうものだったかということは全然考えなかった」

証人=「現場近くにあったから、何か関係があるとは思ってましたけれども」

裁判長=「何かというのは」

証人=「何か関係があるんじゃないかという漠然としたものです」

裁判長=「それ以外は考えなかった」

証人=「はい」

裁判長=「そのほかの人は、その点について、何かあなたと話したようなことはなかったですか」

証人=「棒についてですか」

裁判長=「棒とか、ビニールの風呂敷が、端っこが切れているような物について、その風呂敷のほうはあなた関係があるかないかということを考えた」

証人=「想像は結局、先ほど申し上げたように現場の近くの穴に落ちてたというので、何か関係があるんじゃないかという漠然としたことです」

裁判長=「誰かと話し合ったこともないですか」

証人=「話し合ったことはありません」

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昭和四十七年八月三十一日   東京高等裁判所第四刑事部

                                                裁判所速記官  沢田怜子  印