アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1169

【公判調書3619丁〜】

                      「第六十五回公判調書(供述)」

証人=高橋乙彦(四十七歳・警察官。事件当時は埼玉県機動隊分隊長)

                                            *

宇津弁護人=「そのあとは別の事件の捜査に回ったんですか」

証人=「捜査じゃありません、警備ですね(注:1)」

宇津弁護人=「その後、狭山事件には全然関係は無くなったんですか」

証人=「ええ、してません。捜索だけでしたから他にはしてません」

宇津弁護人=「時期的に、死体発見後二日くらい捜索に従事して、あとは外れたと言いましたね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「また狭山事件に関係を持つようになるということはよくあることですが、あなた自身はそれはあったんですか、ずっと外れちゃったままですか」

証人=「狭山事件の捜査ですか」

宇津弁護人=「いろいろな、まあ捜査でしょうね、広い意味での。それに全く関係持たなくなったのか、あるいは発見後の、遺留品の捜索に加わってのち、一時的に他の警備に回ったというのか」

証人=「捜索はそれ以後は回っておりませんが、川越分室には行ったことがあります」

宇津弁護人=「狭山事件に関する警備」

証人=「はい」

宇津弁護人=「あとは狭山事件の警備一本ですか」

証人=「それだけですね」

宇津弁護人=「あなたが捜索に具体的に関与されていた時期は捜査本部のメンバーであったわけですか」

証人=「一応捜索だけでしたね。機動隊ですから、一応本部の指揮に入っていたわけです」

                                            *

藤田弁護人=「あなたが山狩りに関与されていた時点で、あなたないし、あなたの隊員あるいは他の捜索隊員、ないし山狩りに従事しておった消防団員たちが、遺留品、あるいはひょっとしたら遺留品じゃなかろうかということで捜査本部へ持って帰る品々はあったと思いますが、そういう物はどういう物があったか、今覚えておりませんか」

証人=「私の分隊では先ほど申し上げたビニールと棒だけだと記憶しておりますが」

藤田弁護人=「他の人から何か、これはひょっとしたら遺留品じゃないかということで捜査本部へ、いろいろな物が落ちてますからね、全く手ぶらで帰るというわけじゃないと思いますが、がらくたを含めていろいろな物を拾って帰ると思いますが、たくさんの方がね」

証人=「はい、私の分隊では無かったように思いますが、細かいところは分かりません」

藤田弁護人=「他の分隊ではそういう物があったかも知れないと思いますか。何もないというほうが不自然ですからお聞きするんですけれども」

証人=「死体の発見の前か、後か知りませんが、自転車の紐とか、ということは聞いておりました。ちょっとそれ以外記憶ないんですが」

                                            * 

城口弁護人=「三日は、一日捜索に従事して、四日は先ほど述べたように入間川の駅から山本製作所の方に走る地図の太い県道に出ることをもって捜索を終える予定だった」

証人=「ええ、午前中は」

城口弁護人=「先ほどのご証言で、芋穴の何か北側の竹藪の方から芋穴発見地点までのその間は、捜索に従事しておったんですね。これは捜索の途中だったんですね」

証人=「はい」

城口弁護人=「あなたその日、芋穴関係についての捜査報告書を作成しましたか」

証人=「はい、しております」

城口弁護人=「何日付でしょうか」

証人=「当日付で出していると思います」

                                            *

山梨検事=「確かめておきたいんですが、普通、山狩りというと犯人が山に逃げ込んだり、被害者が見つからないという時に消防団員などを動員してやられると思いますが、先ほどちょっと曖昧だったんですが、死体が発見された以後に、あなた捜索に従事されたと言われるんですが、死体が発見されて以後の体制ですね、消防団員まで出ましたか」

証人=「死体発見直後の消防団員はちょっと記憶ないんですが」

山梨検事=「むしろ出たと思いますか、出ないと思いますか」

証人=「出ないと思いますが、ちょっと私どもには記憶ないんです」

山梨検事=「そうすると機動隊が残って、いわゆる遺留品を捜索したということですか」

証人=「そうです」

山梨検事=「それも出動は縮小されていったということになるんですか」

証人=「そうです」

                                            *

松本弁護人=「最初に山狩りをする時に一列横隊に並んで順次捜していくというようなことをしたと言われましたね」

証人=「はい」

松本弁護人=「だいたいそういう形でやられたと」

証人=「原則はそれでやっております。条件によって違いますが」

松本弁護人=「そうすると麦畑などを捜索される場合に麦の畦の間の溝を捜索するという形ですか」

証人=「やっております」

松本弁護人=「先ほど五月四日の当日、芋穴に至る過程で、芋穴の北の方から麦畑を南下されたように聞きましたが、その時もそういう体制でしたか」

証人=「その時は一応、山を出て一列になって畦道を通って来たと思います。境でしたから」

松本弁護人=「そこにはやはり麦畑も畦道も溝もありますが、捜索の原則から言えばその段階でもやはり一応、畦道に平行して並んで横隊を形作って、順次捜しながらゆっくり来るということだろうと思いますが、そういうことじゃないんですか」

証人=「結局、山が終わって道路に出る予定だったんですが・・・・・・」

松本弁護人=「山と仰るのは、先ほど桑畑と書いてある芋穴に近い所ですね、その山に至る間の過程ですが、すなわち、ずっと山林の北側を西進して来て、右に民家がある手前で左折をして、麦畑の付近を通って南下された時のことですが、そこも横隊で来られたかということですが」

証人=「・・・・・・・・・」

松本弁護人=「何か遺留物がなかろうかということで、あるいは埋没死体が埋められているんじゃないかということで、畑の中でも横隊でお調べになったんじゃないんですか」

証人=「ちょっと記憶がないんですが、恐らく横隊じゃなくて、そこで終わったんで真っ直ぐに道に出ちゃう予定だったんですが、藪があったのでそっちに行ったのですから、恐らく横隊じゃないと・・・・・・」

松本弁護人=「その辺の麦畑だけを特に調べなくてもいいということにはなりませんね、その当時は畑であろうが藪であろうが、藪はまあ時間がかかるか知れませんが、一応まんべんなく調べていくということであったんでしょう」

証人=「はい」

松本弁護人=「その通過された麦畑付近も、一応遺留品がないかということを頭におきながら南下されたんじゃないんですか、それで藪に突き当たってたまたま芋穴を発見されたということじゃないんですか」

証人=「山を出たら藪があったんで、そこを捜して見ようということで南下したんです。山でもって一応午前中は終える予定だったんですね、そのまま真っ直ぐ出ちゃうということだったんです」

松本弁護人=「一般的に聞くんですが、麦畑についてはやはり麦の中に入ってそれぞれがまあ畦道じゃなくて、麦畑の畝と畝の間を通りながら捜索をしたという事実はありますね」

証人=「あります」

(続く)