○五月四日、被害者の遺体が発見された。
【公判調書3615丁〜】
「第六十五回公判調書(供述)」
証人=高橋乙彦(四十七歳・警察官。事件当時は埼玉県機動隊分隊長)
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藤田弁護人=「先ほど死体発見後の山狩りで、カバンなんかを捜す目的だったということを仰いましたが」
証人=「はい」
藤田弁護人=「カバンの他にもこういうものが落ちてないか気を付けなさいと指定されているものがあったと思うが、それを思い出して頂きたいんですが、どういうものを捜すようにと言われましたか」
証人=「カバンの他には今、ちょっと記憶ないんですが」
藤田弁護人=「物によっては上からざっと見て捜すものもあるし、細かいものなら草の根をかき分けて捜さなければならないのだから、捜すものに自ずから特定があると思いますが」
証人=「重点は恐らくカバンだったと思いますが」
藤田弁護人=「それ以外のものは」
証人=「捜索している間に必要があれば恐らく上げたと思いますが」
藤田弁護人=「特に上からの命令でこういうものを捜せということで現在記憶にあるのはカバンだと」
証人=「そうですね」
藤田弁護人=「それ以外のものも具体的に言われておった記憶ありますか」
証人=「ちょっと現在記憶ないんですが」
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宇津弁護人=「死体が発見されたのちにカバンなど遺留品の捜索に従事したそうですが、その後の捜索には証人は何日くらい関与されたと仰いましたか」
証人=「二日くらいだと思います」
宇津弁護人=「その捜索隊としてのあれは証人がその捜索を外れたのちも全体としての捜索は行なわれていたようですか」
証人=「その点は聞いてませんが、恐らくやっていたんじゃないかと思います」
宇津弁護人=「そうすると証人のあなたは他の任務に移っていったということになるんですか」
証人=「ええ、結局他の事件が出来て他に回ったということです」
宇津弁護人=「証人が見分したところでは死体発見したのち、遺留品の発見ということで何日くらい捜索隊が投入されたか分かりますか」
証人=「自分がやったのは二日くらいですが、あと、投入されても半分くらいだと思いますが。他の事件が出て」
宇津弁護人=「半分くらいというと、どれくらいですか」
証人=「出てるかどうか記憶ないんですが、あっても半分くらいだろうということです」
宇津弁護人=「二個小隊ということになるんですか」
証人=「二個分隊ですね」
宇津弁護人=「遺留品の捜索というのは、死体発見の穴を一応の起点としましたら、そこから畑を経由して例の雑木林の方にもずっと捜索は行なわれたわけでしょうか」
証人=「恐らく死体の、現場の付近を重点としてやっていると思いますが」
宇津弁護人=「その広がりは」
証人=「恐らく相当広範囲にやっていると思います」
宇津弁護人=「そして今度はちょっと話がずれますが、死体発見前にいわゆる山狩りをしたその付近も、再び遺留品の捜索をする時に同じ所を行なったということもあるわけですか。同じく重なった部分があったのかということですが、山狩りを行なった範囲と遺留品の捜索とが」
証人=「重なった所もあったかも知れません」
宇津弁護人=「死体発見前のことですが、証人はのちに死体が発見された地点から例の雑木林にかけての山狩りに関与されたことがあるんですか」
証人=「死体発見前ですか」
宇津弁護人=「ええ」
証人=「同じ所をやっただろうかということですか」
宇津弁護人=「死体発見前に、その死体発見現場から雑木林の付近を山狩りしたのに参加されたかということです」
証人=「発見当日ですね、その前はその手前をやっていると思います」
宇津弁護人=「当日はどうですか」
証人=「その当日はそこをやってて・・・・・・」
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裁判長=「死体発見のか何か、ともかく山狩りというのは一日、二日はやってないでしょう」
証人=「やってません」
裁判長=「三日に初めてやって四日に死体が発見された、その後もあなたは二日くらいやっている、その間に全般として考えると、同じ所もダブってやったこともないでもない、ある部分は重なってやった所もある」
証人=「はい」
裁判長=「四日より前、発見される前に、その時に死体が発見されたような場所、その近辺の山狩りをしたのにあなたが従事したことがあるかということですが」
証人=「ありません、それは」
裁判長=「三日、四日発見前にはそこをやったことはない。重なってやってない」
証人=「ありません」
裁判長=「他の人はどうかということは」
証人=「それは分かりません」
(続く)