アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1162

芋穴と桑の木。石川被告人の自供によれば、被害者を殺害後この芋穴に逆さ吊りにし、その縄の端を写真右側に見える桑の木に結びつけたという。

この後、被告人は被害者宅へ脅迫状を届けに向かったとされる。なぜ逆さ吊りかという疑問は捜査関係者らは全く持たなかったようだ。

【公判調書3604丁〜】

                      「第六十五回公判調書(供述)」

証人=高橋乙彦(四十七歳・警察官。事件当時は埼玉県機動隊分隊長)

                                            *

城口弁護人=「中に入れた隊員の名前は覚えていますか」

証人=「名前は覚えていないんです」

城口弁護人=「あなたの隊の者ですね」

証人=「私の分隊だと思います」

城口弁護人=「堤という人ではなかったですか」

証人=「ちょっと記憶がないんです」

城口弁護人=「その現場で当然、普通元あった状態で先に写真を撮ると思いますが、そのような措置をとりましたか」

証人=「上に引上げて、それで捜査本部員がいたので撮らしたんです」

城口弁護人=「どういう写真を撮ったんですか」

証人=「引上げて捜査本部員に引渡したので・・・・・・」

城口弁護人=「立ち会ったかどうかも記憶ないんですか」

証人=「引渡して、その時はすぐ今度は死体発見になりましたのでそっちの方に回ったと思います」

城口弁護人=「もう一度最初にあったような状態に、穴に戻してそれを写真に撮ったということもしなかったですか』

証人=「戻して撮ったかも知れませんが、ちょっとそこのところは分かりません」

城口弁護人=「あなたが芋穴から棒なり何なりを発見する前には、芋穴があるとか、棒があったとか下にビニールのようなものがあったという話は出てないですね」

証人=「出てません」

城口弁護人=「何か変化があったり発見されたものがあったり、これはという物を見つけた時は無線機なども持っておったようですが、そんなもので連絡をとるようなこともあるわけですか」

証人=「連絡をとるようなことはあります」

城口弁護人=「それはなかったんですね」

証人=「なかったです」

城口弁護人=「結局、そういう物があったとかいうことについてはあなたは聞いてなかったんですね」

証人=「はい」

城口弁護人=「あなたが自ら穴の中に入ってその状況を見たというようなことについてはその時はなかったですね」

証人=「穴の中には私は入りません」

城口弁護人=「隊員に、中に何かあるか捜せということを言ったんでしょうね」

証人=「ええ、それはもともと捜索ですから指示してあります」

城口弁護人=「これは時間にして何時頃でしたでしょうか」

証人=「ちょっと時間は忘れましたが、午前中だと思いますが」

城口弁護人=「少なくとも上からのぞいて下に棒があるとかいうのははっきりしたんですね」

証人=「はい」

城口弁護人=「白いビニールについてはどうも記憶ないようですが、今はどうですか、記憶は戻りましたか」

証人=「上からのぞいた時はちょっと見えなかったような気もするんですが、覚えてないですね」

城口弁護人=「棒というのは色としても黒っぽいものに近いですが、ビニールの風呂敷は白いですね、そうすると白いもののほうがはっきりすると思いますが」

証人=「ちょっと記憶ないんです」

城口弁護人=「穴から発見されたのは棒とビニールだけだったと、こういうことですね」

証人=「はい」

城口弁護人=「ボタンなどは落ちていなかったんですね」

証人=「ボタンは記憶ないんです」

城口弁護人=「発見されたかどうかについて記憶ないんですか」

証人=「はい」

城口弁護人=「発見されなかったんじゃないんですか」

証人=「はい、発見されません」

城口弁護人=「穴の周りなんですけれども、入口の周りにどういうものがありましたか。作物とか、木とかそういうものについては」

証人=「あそこは麦畑と記憶しておりますが」

城口弁護人=「何か農道が近くにあったと言いましたね」

証人=「農道に接してあるわけです」

城口弁護人=「何か農道と穴の近辺に桑の木はどうですか」

証人=「ありました」

城口弁護人=「どれくらいの高さのものですか」

証人=「そうですねぇ、二メートルくらいかとも思いますが」

城口弁護人=「決して小さくないものですね」

証人=「はい」

城口弁護人=「何本くらいあったようなご記憶ですか」

証人=「一本だと思いますが」

城口弁護人=「一本というのもはっきりしないんですか」

証人=「くらい、という○○(印字不鮮明)ですね」

城口弁護人=「一本とは断定出来ないと」

証人=「農道の、丁字路の先ですか、そこに一本くらいと思いますが」

城口弁護人=「桑の木について何か捜索というか、そういうことはしましたか」

証人=「桑の木は捜索しません」

城口弁護人=「じゃ、そこに何か痕跡があるとかないとかについては注意も払わなかったと」

証人=「ええ、払ってません」

城口弁護人=「死体を発見された時間と、あなたが芋穴に棒などがあるということを見た時とは時間的に死体発見のほうがあとのようですか」

証人=「死体の前です」

城口弁護人=「芋穴のほうが前」

証人=「はい」

城口弁護人=「あなたがそれを引き出して本部員に渡している、その間に死体の発見があったということですか」

証人=「そうです」

(続く)

                                            *

弁護人がボタンの点について触れているのは、被害者が着用していた制服の上着のボタンが一つ足りないことと関連しているだろう。このボタンが芋穴の中で発見されていない事実は、死体を芋穴に吊るしたとの石川被告の自白をわずかだが崩している。

    行方のわからない制服のボタンはどこかに存在していたわけであり、事件解明にあたり重要な意味を持つこのボタンの捜索をなぜ警察は怠ったのか、謎である。