アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1122

『原文を読みやすくするために、句読点をつけたり、漢字にルビをふったり、中見出しを入れたり、漢字を仮名書きにしたり、行をかえたり、該当する図面や写真を添付した箇所があるが、中身は正確である』

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【公判調書3476丁〜】

「筆跡などに関する新しい五つの鑑定書の立証趣旨について」

                                                                弁護人:山下益郎

                                           (二)

2「磨野久一鑑定書について」

(前回より続く) 横書きの問題については本鑑定人の調査の結果、昭和二十四、五年当時の小学校においては国語指導方針は縦書きであったこと、また現在も小学校国語指導においては縦書き指導を主体としていることが明らかにされたのであります。そして「通常、通信文もしくは用件を知らせようとする文を横書き表記出来るためには、相当の練習を必要とする。当時の小学校学習において横書きの機会は比較的少なく、特に作文や自分の意思を表示をするために横書きすることのほとんどなかったことから考えても、脅迫状の筆者は横書きに慣れていることが推定される」という判断を示しました。

当て字の問題について、通常、漢字で書くべき言葉であることが意識され、しかもその漢字が思い出されない場合に用いられるのに、脅迫文は、仮名で書くことが明瞭な場合に漢字を用いているのが特色であり、特に漢字「知」を「チ」の音に当てず「シ」に当てて用いることは、筆者が「知る」を意識して用いていることを示すものであります。すなわち「チ」と読むのは音読みであって小学校低学年でも容易に記憶できるが、「シ」と読む訓読みは必ずしも低学年では容易ではないのであります。特に語幹「シ」を認識していることを示すものであって、これを「はなしたら」に当てているのは相当高度の学力を有す者がその書き手であることを示すものであります。

文章表現上の特質については、段落についても脅迫文はその区切りも妥当であります。金額表示も正確であり「金二〇万円」と、「金」を付していることは筆者の職業を示すと共に、それは取引能力に優れて、慣れていることを示すものであります。

それに引き替え、上申書は横書きに慣れない者の手になることが一見して明らかであります。

行が乱れ、しかも全体として右下がりになっています。脅迫文に比べると筆勢が全くなく、これは一字一字を意識して書いていることを示すものであります。本鑑定書の内容に関する詳細な弁論は割愛しますが、本鑑定書およびさきの大野鑑定書はいずれも新しい角度から脅迫文および上申書を分析したものであります。弁護団は当審において初めて、このような論点を明らかにするものでありますが、当裁判所が謙虚にこれらの鑑定書の主張に耳を傾けることを強く要請するものであります。

(続く)

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引用した写真は"差別が奪った青春"部落解放研究所・企画・編集=解放出版社より引用。