アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1104

免田事件、財田川事件、松山事件、島田事件。これらは、死刑が確定した被告が再審公判で無罪の判決を受けた冤罪事件であるが、今回、袴田事件の犯人とされ死刑が確定していた袴田巌さんに無罪判決が言い渡された。戦後の再審無罪判決として5例目となる。

写真三点は2024年9月27日付東京新聞より転載。

静岡地裁は本件の主要な証拠は捏造とし、全て否定。検察にとって極めて厳しい結末となっている。

さて、袴田事件再審無罪判決という事実は、狭山事件再審請求にも良き風を吹かせてくれるのか、答えはその風の中にある。

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『原文を読みやすくするために、句読点をつけたり、漢字にルビをふったり、中見出しを入れたり、漢字を仮名書きにしたり、行をかえたり、該当する図面や写真を添付した箇所があるが、中身は正確である』

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【公判調書3430丁〜】昭和四十七年八月四日

                  「第六十三回公判調書(供述)」

証人=三木敏行(五十歳・東京大学医学部法医学教室主任教授)

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宇津弁護人=「そこのところをちょっとお伺いしたいんですが、この表三によっても、まあBについての表現はさておきますと、抗A凝集素の解離、あるいはA型質の存在とか、ということがこの表三、あるいは表四でも同じだと思いますが、全然認められないという結果を導きますか」

証人=「検体封筒封緘部分DというところにAが全然ないという結論をするかということですか」

宇津弁護人=「はい、そうです」

証人=「やはり対照試験というのが血清学的な検査で、化学検査でございませんのでかなり重要視しないといけないと思いますので、やはり私としてはこの成績からAがあると考えるのはかなり不自然であるという風に思います」

宇津弁護人=「つまりBの反応もAの反応も強弱の差はあれ、いずれも認められるという結果にはならないかということなんです」

証人=「これ十枚のところのAの反応を見るか見ないかという、見方になると思うんですが、そうすると濾紙でも十枚使うと出てるものですから、これは封緘部分にAというようなものがあるんでなくて、単に物をたくさん使いましたために非特異的に現われて来たんだろうと、こういう風に考えたわけで、Dのための反応とはちょっと考えないほうがいいだろうという解釈を致しました」

宇津弁護人=「そうするとAに比較すればBの強度の数値はやや多いんですけれども、そのBについては考察にあるように抗B凝集素の解離が認められ、B型質を否定出来ないような成績、という風になっていますが、その辺の分ける根拠ですね、どうなんでしょう」

証人=「これは普通解離試験という試験を使ったわけですが、それを行ないます時に使うそのどれくらいの量のもので検査をするかというものに関わってくるわけで、あんまりたくさんの量を使いますと非常に反応が不正確になるわけです。で、非常に少ないものでやったほうがむしろ反応が正確に出るということになるわけです。この場合、十枚というのは普通、常識的に考えますと限度を超えた量だと思うんです。ですから非常に検査自身としては不正確であるという風に考えます。で、一枚くらいを使った成績が信頼性が高いという風に思いましたのでこういう風な結論を出した次第です」

宇津弁護人=「それは検査方法と申しますか、用いる試薬によると申しますかね、その、微量のほうがはっきり結果が出るんだということは共通の現象なんですか」

証人=「やはり検査方法に最適な条件がございまして、この解離試験の場合には非常に少ない、それは少ないと言いましてもある程度以上超すといけないわけですが、その反応自体に適当な量がございまして、この場合、一か二が最適だと思うんです」

宇津弁護人=「まあ、一と言えども十と言えども物理的には非常に少ないようですね」

証人=「まあ少ないでしょうが、やはり実績から言いますと、かなり多い量だと思うんです」

宇津弁護人=「それから、表四に移りますと、十九ページの同じ封筒封緘部分が検体ですが、これは個数は一と二でやってますね」

証人=「はい」

宇津弁護人=「で、抗Aの欄を見ますとミドリ十字六一〇号の欄を見ますと、食塩水法、それからブロメリン法(注:1)、いずれも一という強度の、反応が出ておりますね」

証人=「これは一じゃございませんで、ちょっと印刷が悪いようでございますが、縦棒なんです」

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裁判長=「その点、この表の中でどの部分が1であって、どの部分が今言われた縦棒だということをちょっと説明して頂きましょうか、例えば今の十七ページの表の濾紙に作った班痕という中の抗Aの二段目の印は1じゃないんでしょうね」

証人=「ええ、これは縦棒でございます」

裁判長=「その欄はみんなそうですね」

証人=「はい」

裁判長=「そうすると細かく見て明らかに数字の1と見られる以外は、みんな縦棒だという風に見たほうがいいんでしょうね」

証人=「はい」

裁判長=「1というのは明らかに最初のこの起筆部から更に曲げてきている、そこで区別するほかないんでしょうね」

(写真は狭山事件公判調書第二審3432丁上段右より五行目より)

証人=「はあ」

裁判長=「それから、十八ページの真ん中の部分の濾紙のみというところの抗Aの上の段のちょっと滲んだようになっている、これなんかも1じゃなくて縦棒ですね」

証人=「はい、縦棒でございます」

(続く)

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注:1   原本では「ブロメリン法」と記載されているが、これはブロメライン(bromelaini)法を指すのかも知れない。とは言え、老生の脳では基本的に理解出来ぬが。しかし、一応ここへ記すとこうである。

○ブロメライン(bromelaini)法:不規則抗体の検出法として用いられる酵素法。やはり・・・全く分からない。