アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1098

『原文を読みやすくするために、句読点をつけたり、漢字にルビをふったり、中見出しを入れたり、漢字を仮名書きにしたり、行をかえたり、該当する図面や写真を添付した箇所があるが、中身は正確である』

被害者宅に届けられた脅迫状。手紙の冒頭には「このかみに包んでこい」と書かれ、これはつまり身代金をこの手紙で包み佐野屋へ持参せよとの指示が示されている。身代金と共に、犯行の証拠となる脅迫状を回収しようとの意図が見られる。凡人では中々ここまで頭が回らない。

この脅迫状において特徴的なそれは、書き手の独特の当て字であろう。なぜ、その当て字を選んだのか。そこには書き手の内在的論理、つまり考え方の癖が現われていることは間違いないと思われる。 

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【公判調書3418丁〜】

                  「第六十三回公判調書(供述)」

証人=秋谷七郎(七十五歳・昭和大学薬学部長兼教授、東京大学名誉教授)

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橋本弁護人=「そうしますと、つけペンと万年筆というのは、物理的な構造上同じような性質と理解してよろしいんですか」

証人=「いえ、同じではないです。つまり万年筆というものはご存じの通りにイリジュームとオスジュームという真っ白い天然合金をつけております。メーカーとしてはこれをペン先に、あるいは金ペンの先につける場合でも溶融と申しましょうか、千何百度以上の状態に加熱したその白いイリジュームとオスジュームの合金を溶融するという操作を経ますので、溶融した場合には飴玉のように、水滴のように固まる、球状になる、これが当たり前でありますが、したがってそれを更にまた万年筆メーカーの一般のやり方はあるいは紙の上で、あるいはその他の適当な物で摩耗いたしまして、そして販売するのが一般の姿であり、だいたい私も、本件には関係ありませんが別の、万年筆の鑑定をしたことがありますけれども、非常に万年筆というもの一般には滑達である、滑らかである、球状を呈しているということによって紙面に対する場合は非常にこの、荒れ方を少なくする、ましてや、ただ切りっ放しでプレッサーで作ったつけペンの先とは非常に滑らかさにおいて差がある、一方はざらざらしておる、これがつけペンの姿でありますから、したがってそういうような書いた後の紙上の乱れは万年筆と普通のつけペンとは相当違うというのが一般の事実であります」

橋本弁護人=「そうしますと、つけペンのペン先というのは何で出来ておるんでしょうか」

証人=「鉄です。あるいはそれにクロムメッキしたり、あるいは、白金なんかはやりません、だいたいクロムメッキ、ニクロムメッキが多いようですが、また、メッキせんのもあります」

橋本弁護人=「そうしますと、滑達さにおいて大きな差が出てくる」

証人=「これが一般論です」

橋本弁護人=「したがって紙面に対して、荒れ方が違うんですね」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「それから、つけペンと万年筆のインクですが、これには相違がないんでしょうか。一般論として」

証人=「インクの種類は非常に多種多様にわたっております。インクの中の成分はただ一種類のものじゃありません。二種類以上、数種類の色素をいろいろな具合に配合して作ったのが各メーカーの作るインクでありまして、これはもう全然一定のものではありません。また、同じメーカーであってもロットによって全然違うというのがインクの化学的成分の内容であります」

橋本弁護人=「私がお聞きしたかったのは万年筆に使用するインクと、つけペンに使用するインクとの間に一般に特別の差異が認められるかどうかということです」

証人=「これは使う人が万年筆のインクを使おうと、あるいは普通のインクを使おうと、これはその人の自由でありますから、私の答える範囲ではありません」

橋本弁護人=「一般に、つけペン専用のインクというのを販売されているのを私は知らないんですが、証人はいかがでございますか。端的に申し上げますと、万年筆に使用するインクをそのままつけペンにもしているようだと、こう解しているんですが」

証人=「まあそういうことは私全然責任を持って答える内容じゃございませんから、その人の自由じゃないかと思います」

橋本弁護人=「私の質問していることは、つけペン専用のインクを製造あるいは販売されているでしょうかと、お聞きしているんです」

証人=「そこまで詳しく、私自身は、今あなたが仰るようにそばにインクがありますから、ある時は万年筆に使ってみたり、ある時はつけペンに使ったりしておりますから、これは私の自由でございますので、だいたい言えることは万年筆のインクの性質が非常に昔に比べて良くなったということは言えます。したがっていろんな万年筆に入っても沈殿が起こらない、全世界で進歩しまして、日本もそれに追いつき追い越して、日本の万年筆のインクというものは非常に優秀であることだけはあちこち歩いた時にも自分で実感したことであります」

(続く)

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○証人の述べている事柄は、弁護人の問いに対して的を得ない気がするが・・・気のせいだろうか。