アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1094

『原文を読みやすくするために、句読点をつけたり、漢字にルビをふったり、中見出しを入れたり、漢字を仮名書きにしたり、行をかえたり、該当する図面や写真を添付した箇所があるが、中身は正確である』

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【公判調書3387丁〜】

                    「第六十二回公判調書(供述)」

証人=野本武一(六十歳:団体役員=部落解放同盟中央執行委員、同和対策審議会専門委員、埼玉県社会福祉審議会委員)

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山上弁護人=「部落解放同盟は石川くんが全く無罪であるという立場に立っておりますね」

証人=「そうです」

山上弁護人=「これはどういう根拠に立つものでしょうか」

証人=「私どもはこの裁判の法廷において一つ一つ明らかにされております事件の本質、私どもも傍聴致しておりますが、全く納得のいかない、国民自身も納得のいかない過程においてわずか六ヶ月間という短期日で裁判を終了して、もっとも基本的な人権を守らなければならない日本の法律の中で死刑の判決が出されたということ、このことに対して私どもは憤りを感じております。と同時にこの法廷で明らかにされております事件の数々、そういうものが全く糾弾されずに終わるということであっては断じてならない、例えば私どもが法廷で傍聴している中で明らかにされつつあります万年筆の問題にしても、あるいは鞄の問題にしても、あるいは脅迫状の問題にしても、死体の側から出てきたと言われている玉石の問題、あるいは棍棒の問題、あるいは残土の問題、そういう問題が一つ一つ明らかにされていかずに、その真相がいわゆる第一審と同じような考え方のもとに判決が下されると、これは差別裁判であると言わなければならないわけです。したがって私どもはその真相が一つ一つ明らかにされると同時にこの裁判の持つ背景、いわゆる部落問題、これが真に究明されているならば、明らかに石川くんの真実というものは裁判長の考え方によって無罪であるということが私は成されるであろうという考え方を持っております」

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山梨検事=「あなたは一審で、ずっと傍聴をしておられたと仰ったんですが、初めから終わりまで欠席されずに傍聴されましたか」

証人=「二回ばかり欠席しました」

山梨検事=「何回と何回ですか、欠席したのは」

証人=「何回と何回ということは今わかりませんが」

山梨検事=「どの段階でしょうか、初めの頃でしょうか」

証人=「いや、初めの頃はずっと行っていましたから」

山梨検事=「最後のほうでしょうか」

証人=「はい」

山梨検事=「裁判長の質問には答えられなくて、間違いありませんとばかり言っていたと、そんなような状態でしたか、被告人の態度は」

証人=「そうです」

山梨検事=「記録を見ましても被告人が直接、証人に尋ねてるところがありますね、どうですか」

証人=「その時は私は傍聴していませんから」

山梨検事=「そういうことがありますよ」

証人=「そうですか」

山梨検事=「それから裁判長の問いに対してはっきり被告人質問というので答えていることもあるでしょう」

証人=「その点は間違いありません、その通りですと答えている」

山梨検事=「それだけですか」

証人=「私の聞いてるのはそういうことしか言わなかったわけです」

山梨検事=「事実についていろいろ裁判長から尋ねられて答えているところがあるでしょう」

証人=「それはどういうことですか」

山梨検事=「事実についてですよ」

証人=「だから事実について、私の傍聴の範囲ではそういうことだということです。私が傍聴した範囲内で」

山梨検事=「そういう点につきまして弁護士さんあたりに、被告人が原審でどういう答えをしたかということをご認識の上で運動をされるならしていただきたい。

あなた自身が調べられたという唯一の点、これは学校の校誌をお調べになったという事実、これについてお聞きします。学校学校と言われましたが何学校でしょうか」

証人=「東中学校です。新校舎のある学校ですね」

山梨検事=「事件当時は建築中だった学校ですね」

証人=「ええ、私が行ったのは新校舎が出来上がってからです」

(続く)

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逮捕時(1963年)の石川一雄氏。少年の面影が残っていた。

東京高裁での判決公判に出廷した石川一雄氏(1974年)。

二枚の写真を対比すれば、奪われた青春の重さを痛感する。写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用。