アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1087

『原文を読みやすくするために、句読点をつけたり、漢字にルビをふったり、中見出しを入れたり、漢字を仮名書きにしたり、行をかえたり、該当する図面や写真を添付した箇所があるが、中身は正確である』

事件当時の狭山近郊。写真は狭山事件裁判資料より。

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【公判調書3379丁〜】

                    「第六十二回公判調書(供述)」

証人=野本武一(六十歳:団体役員=部落解放同盟中央執行委員、同和対策審議会専門委員、埼玉県社会福祉審議会委員)

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山上弁護人=「その後あなたは再び学校に行かれたことがありませんか」

証人=「あります」

山上弁護人=「その時はどうでした」

証人=「その時はすでに学校移転か何かの関係で日誌が紛失したんだろうということで、不可思議にも五月一日の日誌だけがなくなっておったわけであります」

山上弁護人=「それはもちろん同じ中学校のことですね」

証人=「はい」

山上弁護人=「あなたがそれを経験なさったことは間違いないですね」

証人=「はい、間違いありません」

山上弁護人=「その後、その点についてあなたご自身はご調査なさったことはありますか」

証人=「その後、狭山市教育委員会に依頼してその当時の各学校の日誌を調べて頂きました。調査にあたってという回答書が狭山の教育委員会から来ております。そういうことで調査は非協力な態度のために残念ながら完成することが出来なかったわけです」

山上弁護人=「石川くんはアリバイについて、まあ仕事をさぼって荷小屋におったと、こういうような供述をしておりますが、これは部落問題から考えるということができます」

証人=「その点は四十年の八月十一日に政府に提出した同和対策審議会の答申の中でも明らかにしております。それは現代日本における部落差別は部落民に対する市民的な権利が保障されてない、これが差別なんだと。従って市民的な権利とは何か、そのことは部落民に対する職業の機会均等が全く保障されてない、いわゆる近代産業から文字通り締め出されている、これが差別なんだということを教えている、従って石川くんの問題一つ考えて見ましても、なぜ石川くんが職業の機会均等から保障されていなかったかと、そういう人間を作り出した社会の背景というもの、いわゆる部落の人が職業を転々として歩かなければならない現実の姿、従って石川くんがその日仕事をさぼってパチンコをして荷小屋で生活しなければならないという現実は日本における現代の社会が部落差別をそういう風な姿で浮き彫りにしている、その典型的な姿が石川くんの姿となって私は出ているんだと、こう考えます」

山上弁護人=「まあ、今の証人の考え方に対して例えば石川くんが荷小屋におったと、あるいはパチンコ屋に行ったというのは、これは疑えば自分が嘘のアリバイを作るために申立てたのではないかというような考え方もありうるわけですね、その点の真相は部落問題を通じてでないと分からないのだと、こういう趣旨で仰ったわけですね」

証人=「ええ、そうです」

(続く)

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狭山事件が起きた日の午後、石川被告は、たまたま休んでいた入間川駅近くの荷小屋から自転車に乗る学生等を目撃していた。しかし証人の調査によればこの証言を裏付けることが出来ると思われた五月一日の日誌が無くなっていたという。この日の日誌が存在すれば石川被告の証言は裏付けられアリバイは成立し、事件の真犯人は別の者ということになった筈である。

また、事件から数年後、警察の集中捜査を受けた石田養豚場、その経営者の一人、石田登利造氏は西武線の電車に飛びこみ轢死を遂げたが、鉄道会社の記録から、この日の事故記録だけが消えているという記事を読んだ記憶がある。

証人が述べた日誌の件など知ると、これはやはり狭山事件の犯人を石川一雄で押し通すため、何者かがそのために動いたのであろうと思われる。