アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1069

『原文を読みやすくするために、句読点をつけたり、漢字にルビをふったり、中見出しを入れたり、漢字を仮名書きにしたり、行をかえたり、該当する図面や写真を添付した箇所があるが、中身は正確である』

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【公判調書3331丁〜】

「第六十一回公判調書(供述)」昭和四十七年六月十五日

証人=中田健治(三十四歳・農業)

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山上弁護人=「それから、登美恵さんがお亡くなりになりましたね」

証人=「はい」

山上弁護人=「これは七月の十四日前後でございますか」

証人=「はい」

山上弁護人=「これは第一に発見なさったのはどなたでしょうか」

証人=「あれは弟の喜代治です」

山上弁護人=「あなたはどこにいらしたんですか」

証人=「私と父は朝食を済ませると畑へ出ていましたから」

山上弁護人=「そうするとあなたが登美恵さんの身に不幸が起こったということを知ったのは何時頃、誰を通して分かったんですか」

証人=「喜代治から言われてです」

山上弁護人=「それは野良仕事をしている所まで知らせに来たんですか」

証人=「そうです。二キロ半くらい離れた」

山上弁護人=「それは何時頃でございますか」

証人=「時間は記憶ないんですがね、ねぎの土寄せをしていた時で、全く時間は記憶ありません」

山上弁護人=「そこであなたとお父さんがお家に戻られたんですか、あなただけですか」

証人=「三人で戻りました。喜代治に父に私」

山上弁護人=「そのあなたが行かれた時には登美恵さんはどうなっていました」

証人=「私は全然その時は見ていません」

山上弁護人=「いやいや、あなたが喜代治さんに知らせられて帰った時ですね、登美恵さんはすでに息を引き取られておったわけですか」

証人=「ええ、もう冷たくなった状態で喜代治が気がついて知らせに来たわけですから」

山上弁護人=「あなたが現場にお戻りになって登美恵さんを見た時にすでに冷たくなっていたということになるんですか、言葉を変えれば」

証人=「ええ、私よか、もう父のほうが先に登美恵を見ていたと思います」

山上弁護人=「場所はどこでした」

証人=「一番奥の部屋です」

山上弁護人=「それは畳の上にそのままお休みだったんでしょうか、登美恵さんは」

証人=「布団を敷いた上です」

山上弁護人=「あなたが戻られた時に布団の上に寝かされていたんですか」

証人=「ええ、私が見た時はきちんと上を向いて寝た状態で」

山上弁護人=「で、証人はその後どういうことをなさいましたか」

証人=「すぐ診療所に来てもらったわけです」

山上弁護人=「これは鈴木さんというお医者さんですね」

証人=「そうです」

山上弁護人=「これはどなたが呼びに行きました」

証人=「有線で連絡したか、行ったか記憶ないんですが」

山上弁護人=「そこでお医者さんが来られて、型通りのことが行なわれたわけですね」

証人=「はい」

山上弁護人=「このお医者さんが箪笥などを何か遺書がないかということで捜されたことがありますか」

証人=「その医者は、これでは私にははっきりしたことも出来ないからというんで、駐在に私から連絡するからということで帰られました」

山上弁護人=「はっきり分からんというのは自殺か何か分からんという意味ですね」

証人=「まあ、そうだったと思います」

山上弁護人=「で、このお医者さんが現場で登美恵さんのことについてお話になった相手は主に健治さんがお相手になったようですね」

証人=「ええ、そうだと思います」

山上弁護人=「その時にお医者さんから遺書はどうなっているか、何か書き残したものはないかという話が出ませんでしたか」

証人=「その時には出たか出なかったか記憶ありません。それで警察が来るようでしたら私は立会いますからということで帰られたんです。それでそのあと警察の方が来られた時にやはり鈴木先生が一緒に立合ってくれました」

山上弁護人=「そしてあなたのご記憶としてはどういうことなんですか、結果的に登美恵さんは」

証人=「自殺ということです」

山上弁護人=「何かお兄さんとして思い当たることはございますか」

証人=「別にありません」

山上弁護人=「そうすると全く分からんということですね」

証人=「まあ報道班の人などにかれこれ付きまとわれていたり、まあ幾分神経質にはなっていたことは事実です」

山上弁護人=「当時、山下初雄さんと夫婦関係にあったようですね」

証人=「夫婦関係と言っても、あれは籍だけが夫婦関係であって、まだその段階までは行ってはいなかったと思うんですが」

山上弁護人=「山下初雄さんはあなたの同級の方ですか」

証人=「ええ、中学の同級です」

山上弁護人=「で、この山下初雄さんは登美恵さんがお亡くなりになる十日前でしたか、一週間前でしたかはっきり覚えませんが、お会いになっているということはあなたはご存じですか」

証人=「・・・・・・ええ、多分、会っていると思います。はっきりした記憶はありません」

山上弁護人=「そうすると、いつ頃式を挙げるとか、いつ頃二人で住むとか、そういう計画にはお兄さんとしてはタッチしてしておられたんですか」

証人=「いや、あんまりそういう細かい点については私には相談もされなかった状態です」

山上弁護人=「この山下初雄さんが登美恵さんが亡くなられた現場に来られたことがありますか」

証人=「・・・・・・いえ、その晩にはなかったと言うんですが」

山上弁護人=「じゃ、あなたのご記憶ではその翌日くらいですか」

証人=「・・・・・・・・・記憶がないんですが」

山上弁護人=「これは入籍されておったことはご存じですね」

証人=「そうです」

山上弁護人=「そしてゆくゆくは一緒に住んで名実共に夫婦になる仲だということはお兄さんは知っていらしたの」

証人=「はい、知ってました」

山上弁護人=「そうすると、早速山下初雄さんのところに知らせなきゃならんということであなたが知らせたんですか」

証人=「それはうちのすぐ隣が仲人さんですから、そちらのほうへ話すのが道だろうと思うし、父ともそういった話をして隣のおじいさんに話しました」

山上弁護人=「山下初雄さんのとあなたのお家とはどのくらい離れているんですか」

証人=「一キロ五百か二キロくらいと思います」

山上弁護人=「登美恵さんが亡くなったことを知らせるのに仲人を通すのが筋なんですか」

証人=「と思うんですが」

山上弁護人=「何がなんでも初雄さんのところへ飛んで行くというようなことではなかったわけですね、あなたのご家庭では」

証人=「ええ、まだ式も挙げていなかったし」

(続く)

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○私は過去に狭山事件関連本において、彼女は事件後、佐野屋前での身代金受渡し時の犯人の声が、石川一雄被告の声と似ていると述べており、そのことが、被告の死刑判決へと繋がったのではないかと危惧していた、という記事を読んだことがある。女性とは弱い生き物であるからして、自身が放った証言が被告の死刑判決の遠因となると、これは証言した本人としては、いたたまれなかったと思われる。とは言え、自死の真相は藪の中であるが。