アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1055

写真は事件当時の狭山市近郊。

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『原文を読みやすくするために、句読点をつけたり、漢字にルビをふったり、中見出しを入れたり、漢字を仮名書きにしたり、行をかえたり、該当する図面や写真を添付した箇所があるが、中身は正確である』

【公判調書3296丁〜】(昭和四十七年六月十五日)

                     「第六十一回公判調書(供述)」

証人=中田直人(四十一歳・弁護士)

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橋本弁護人=「それでは、川越分室に移されてからのち、起訴されるまでの間、証人がどの程度接見をしたか、接見の日時と回数をお聞きします。起訴された日は三十八年の七月九日になるわけです」

証人=「私が、再逮捕後接見したのは、六月十八日の朝と、六月二十日のこれも午前中だったと思いますが、それから六月二十八日と、七月の六日です」

橋本弁護人=「都合、四回接見しておりますね」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「証人以外の弁護人が接見してることもありますか」

証人=「はっきり覚えているのは、六月二十六日には、石田さんが確か一人で接見してる筈です。それ以外に、七月の初めとか、七月の九日に起訴されたわけですが七月の八日頃に、橋本さんと石田さんが一緒に面会してるのではないかと思います」

橋本弁護人=「六月十九日に橋本が単独で接見したということを知っていますか」

証人=「はい、知っています。六月十八日に再逮捕後先ほど言ったような経過で接見したわけですけれども、川越警察の物々しさといい、それから石川くんの態度といい、警察官の、我々に接する態度といい、何か、狭山署時代とは全てにおいて掌を返したということをひしひしと感ぜられました。で、私は石田さん橋本さんと、警察は、いわば恐喝未遂さえ起訴し得なかった警察、警察官が再逮捕に踏み切った以上、相当過酷な取調べが始まるだろう、これまでも違法だと言ってきたような捜査がさらに続けられるだろうから、ともかく我々としては、まずそれを監視すると同時に、足繁く川越署分室に通って石川くんに接見し、元気付けることだという風に考え、相談しました。それで十九日の日に橋本さんに行って頂いたわけです。ところが橋本さんは、接見は出来たんですけれども、五分間という風に、非常に厳格に時間を限られ、いわば、けんもほろろな取扱いをされたと、ただその接見の間に、石川くんが飯を食っていないということを言っているという風に報告を受けましたので、何をおいても翌日会わなければならないと思って、二十日に石田さんと行ったわけです」

橋本弁護人=「そうしますと、六月十八日に証人が準抗告をして接見をし、十九日に橋本が接見し、更に六月二十日に、証人が石田さんと共に接見したと、連日この三日間接見したことになりますね」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「六月二十日の接見時間は、どの程度ですか」

証人=「五分です」

橋本弁護人=「もちろん接見禁止の処分がなされておったんですね」

証人=「はい。六月二十日のことですが、実は、行きましたところ、会わせられないということだったのです。どうしても会わせない。で、確か私は原検事の姿か何か見かけたんで、原検事がいるじゃないか、検察官に会わせろと言って原検事に会いました。会ったのは分室の新しい裏門を入った右手の方に、剣道場といいますか、むしろ柔道場でしょうね、畳がありました。柔道場がありまして、押収した自転車なんかが沢山あったんですが、畳の広い中に原検事と三人でぽつんと坐りました。会わせろ、会わせないという押し問答が始まりました。原検事もまた、会わせないと、かなり突っぱねていたのですけれども、橋本さんが、昨日会った時に、食事をしないということを聞いて来てる、これは大変なことだから、そのことだけでも知りたいから何としてでも会わせろということで、それでは五分間ということで会ったわけです。なお、その際、原検事は、今日はまあそういう特殊な理由があるならば五分間結構ですが、これからは、一週間から十日はどんなことがあっても会ってもらっては困るという言い方をしました。このことでも、それは大変けしからんことだということで、かなり長い間、私と石田さんは原検事とやり取りをしました。その上で五分間会ったわけです」

橋本弁護人=「六月二十日には、被告人の勾留質問があったようですが、この勾留質問の時間と、証人が接見をした時間とは、どちらが早いのですか」

証人=「私どものほうが早いと思います。勾留尋問があった時間はいつかは、当時正確には私は知りませんでした」

橋本弁護人=「五分間接見をした時の被告人の態度はどんな工合でしたか」

証人=「橋本さんから食事をしてないと聞いたけれども、心配してる、何をおいても身体を大事にすることが大事だから、食事はしなきゃいかんというようなことを言いましたが、石川くんは、その時せんべいは食ったというようなことをちょっと言って、あまり多くを言いませんでした。そして調べの模様なども聞きたかったんですけれども、そんな時間もあまりなくて大変しょげてる様子を非常に心配しながら、私としては、ともかく元気を出して、食事をして身体を大事にするようにということを繰り返し言って帰りました」

橋本弁護人=「すると、原検事がその日以降は、当分の間は面会させないということを証人に伝えたようですが、当分の間というのは、いつまでという風に期限を切ったわけですか」

証人=「期限を切ったと言いますか、何か、一週間とか十日ぐらいはだめだというようなことを、しきりに言ってまして、捜査上必要だと言うので、そういう捜査上必要だと言うのはまことにけしからんことだということを言っておったのですが、そういう程度だと思います。それで私は、二十二日でしょうか、橋本さんに行ってもらったんだと思いますね、接見するように。その結果は、橋本さんは、原検事に会って結局接見は遂にさせられなかったという風に聞いていますが」

(続く)