『原文を読みやすくするために、句読点をつけたり、漢字にルビをふったり、中見出しを入れたり、漢字を仮名書きにしたり、行をかえたり、該当する図面や写真を添付した箇所があるが、中身は正確である』
*
【公判調書3267丁〜】
事実取調請求に対する意見②
被告人石川一雄に対する控訴事件につき、弁護人の昭和四十七年二月十五日付事実取調請求に対する意見は左記のとおりである。
昭和四十七年五月十日 東京高等検察庁検事 山梨一郎
*
第二 請求書第二の証人について
(一)番号1高橋乙彦、番号2堤康一について
高橋乙彦については、原審において、既に取調済であり、立証事項中山狩の点については、既に当審において証人関源三の証言で述べられており、死体、或いは芋穴の状況についても証人大野喜平の証言で尽くされており、芋穴附近の桑の木の状態については原審における新井千吉の証言によって明らかであり、何れも改めて取調べの必要はない。
(二)番号3新井千吉について
前記第一で述べたように、当審における証人長谷部梅吉らの証言で明らかであり、改めて尋問の必要はない。
(三)番号11関口実、12斉藤実、13指田春吉、14宮岡貞男について
宮岡貞男については、既に原審において取調済であり他の三名についても、同趣旨で、改めて取調べの必要はないが、特に関口実、指田春吉は、鞄が発見された後において呼ばれて立会人となったもので、立証事項について取調べの必要は乏しい。
(四)番号15福田吉太郎、27中根敏子について
本件万年筆の識別については、原審において山下富子、中田健治らの証言において明らかであり、改めて取調べる必要はない。
(五)番号16小島朝政、17石川六造について
何れも当審において右証人に対し、立証事項について詳細取調済であり、再度その取調べの必要は全くない。
(六)番号18佐野とよ子、19新井千吉、20鎌田良子について
財布、手帳については原審における中田登美恵の証言、被告人の警察官、検察官に対する各供述調書、被告人の原審公判供述等を総合して原審認定事実の立証に十分であり、改めて取調べる必要はない。
(七)番号21増田実太郎、22内田春吉、23小川とら、24鹿野茂、25宇田川昭治、26井上熊造について
本件腕時計捜索の状況には当審において、梅沢茂、鈴木章、石原安儀、飯野源治ら多数証人の取調べを了しており、更に重複して取調べる必要はない。
(八)番号29田中初枝、31石田五郎、32鈴木将、33山崎清次について
右各証人の立証事項は何れも本件には関連がないので取調べの必要はない。
(九)中田武志について
中田武志は昭和二十六年十一月八日生まれで、本件当時十一才の少年に過ぎず、その取調べは相当でない。
(十)番号37金子由治について
右証人の立証事項は被告人の罪責に何らの消長を来たさないものであり、その取調べの必要はない。
(十一)番号38太田拓甫について
狭山事件に関する埼玉新聞記事を日付順に通覧すれば、立証事項に関する記事の如きは、事件発生後の初期の段階において既に雲散霧消してしまっている点に徴しても、その記事の信憑性はないものと断ぜざるを得ないので、改めて、ニュースソースに関する証人の取調べの必要はない。
(十二)番号36宮崎茂景、39野本武一について
右証人の各立証事項については、控訴趣意書において何ら主張していないところである上、主として、証人の意見判断を求めるもので、その必要はない。
(十三)番号40野口利蔵、41吉田福松について
野口利蔵らは当審における証人福島英次らの証言において明らかである如く、堀兼の佐野屋商店からの聞込みによって石田一義方に赴き、一審検察官請求証拠目録(昭和三十八年九月四日付)70番の石田一義作成の被害上申書を作成させたものであって、右上申書の内容は、弁護人側の不同意のため、一審において石田一義の証言として公判に提出され、同証人は控訴審においても同じ内容の証言を行なっているのであり、重ねて、被害上申書徴取の経緯について取調べの必要はない。
*
(続く)