アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1025

『原文を読みやすくするために、句読点をつけたり、漢字にルビをふったり、中見出しを入れたり、漢字を仮名書きにしたり、行をかえたり、該当する図面や写真を添付した箇所があるが、中身は正確である』

写真は事件当時の佐野屋。

【公判調書3204丁〜】

                  「第六十回公判調書(供述)」(昭和四十七年) 

証人=中田健治(三十四歳・農業)

                                            *

山上弁護人=「五月一日夜、登美恵さんが脅迫状にしたがってお金を持って行ったということがありますか」

証人=「はい」

山上弁護人=「二回張込んだ」

証人=「はい」

山上弁護人=「一日の時には現金を持って行ったんですか。それとも紙包みですか」

証人=「紙包みです」

山上弁護人=「登美恵さんが紙包みを持って五月一日に行くというのは、誰々とどこでご相談になったんですか。これは今まで全然出ておりませんのでちょっと聞きたいんですが」

証人=「・・・・・・」

山上弁護人=「これは登美恵さんが、怖いと嫌がったようだし、最初のお金を持って行くということを誰々とどこで話されたんでしょうか」

証人=「・・・・・・本当にあの時は夢中でしたから・・・・」

山上弁護人=「紙包みは誰が作ったんですか」

証人=「警察の方だと思います」

山上弁護人=「場所はどこでですか」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

山上弁護人=「あなたのお家で」

証人=「さあ・・・・・・」

山上弁護人=「登美恵さんはどうでしょうか、私は嫌だということを仰ったんじゃないんですか。一回目の時は」

証人=「・・・・・・・・・」

山上弁護人=「ありありとその時の情景が浮かびませんですか、重大なことでしょう、妹さんが、登美恵さん(注:1)が殺されるかも知れないんで、警官があなたの家に来て登美恵さんに行ってくれという風にお願いしたんですか」

証人=「そうです」

山上弁護人=「そしてその席にはもちろんあなたも立ち会ったわけですね」

証人=「はい」

山上弁護人=「そして張込みは登美恵さんが危害を加えられては困るからということで、どこどこにするという内容を警察からご相談があったんじゃないんですか」

証人=「最初の五月一日の日のはなかったと思います。五月二日とあるけれども今晩かも知れないというので、何分頃かなぁ・・・・・・」

山上弁護人=「行ったんですか」

証人=「はい」

山上弁護人=「これも途中まであなたが自動車で送って行ったんですか」

証人=「はい、これは自分も佐野屋のすぐそばまで行きました」

山上弁護人=「やはり時刻は二回目のと大体同じですか」

証人=「はい」

山上弁護人=「雨が降っておったんじゃないんですか。あなたが行かれた頃も、航空自衛隊のあれによれば四時二十分から翌朝まで降っておったようになってますが」

証人=「一日の日は降ってました」

山上弁護人=「車に乗せて行った時には雨は降ってなかったですか」

証人=「ええ降ってました」

山上弁護人=「そうすると土砂降りの時、佐野屋の前に立っておったわけ」

証人=「ええ、傘を持って」

山上弁護人=「警官の張込みはなかったと思っているんですか。そういうことは聞いてないというんですか」

証人=「はい、聞いてないんです」

山上弁護人=「あなたは、無駄だったということで登美恵さんを乗せて家に帰ったんですか」

証人=「ええ、その時に警察の方も一緒でしたから」

山上弁護人=「二回目の時に使った紙包みは、これは別に作ったかどうかご存じですか」

証人=「それは警察の方でやったんです。全然こちらは分かりません」

山上弁護人=「お父さんは一回目の時に、命に関わるから現金を包んでくれとか、あるいは、あなたの方から警察にそういう話を申し出たことはあるんですか」

証人=「・・・・・・・・・」

山上弁護人=「ないようですね、もう警察に任しておったんですか」

証人=「警察に任せました」

山上弁護人=「妹の命に関わるから現金を包んでいこうというようなことは、お父さんの口からは出ませんでしたか。五月一日最初の日には」

証人=「・・・・・・・・・」

                                            *

裁判長=「五月一日お父さんが、命に関わることならば現金を包んでいこうということは言ったかどうか覚えてたら答えて下さい」

証人=「覚えてないです」

                                            *

山上弁護人=「今、裁判長がお聞きになったのは、そういうことが出たか出ないかも覚えてないんですか、それとも、どうですか」

証人=「・・・・・・・・・」

山上弁護人=「出なかったから覚えてないというのか、言わなかったから覚えてないんでしょうという言い方もあるが、そういうことは言ったかどうかも分からんという言い方もあるしね」

証人=「もう記憶ないんですが」

山上弁護人=「警察に、じゃ任せなさいと言われてそうする、というようなことを第一回の五月一日の時の、これはあなたとお父さんが決めたんですね。警察のほうが任せなさいということで、あなた方のほうもよろしく頼みますということになったんですか」

証人=「・・・・・・・・・」

山上弁護人=「これは危ないことですよ、犯人が来るんだからこれは大変なことだね。命に関わることなんだから、その点の成り行き、経過の話合い交渉はどういうことだったのか」

証人=「・・・・・・狭山警察署へ行って・・・・・・」

山上弁護人=「第一回目の五月一日のことですね」

証人=「そうです。その時お話し申し上げたら、今晩は今晩で、もう連絡も取れないんだからということで、そこで相当な時間待たされて警察のほうでは電話連絡などしてくれて、それで、その時に向こうではっきり任せなさいということは言ったように記憶しておりますが」

山上弁護人=「あなたの方の、家族の、身内の方々のご意見を警察に提案したことはないんですか、登美恵さんが行かれるについて婦警・・・」

証人=「そうです、女の警察官にして下さいということは言ってました」

山上弁護人=「現金二十万円ということは言ってないんですね、覚えてないというのは」

証人=「ええ、覚えてないです」

山上弁護人=「どういうこと、お金を用意した記憶はありますか。三十分か一時間の間に親戚を駆け回って集めるというようなことは」

証人=「ないです」

山上弁護人=「そうすると、現金のことは関心なかったんですね」

証人=「はい」

(続く)

                                            *

(注:1)原文のまま引用したが、ここは登美恵さんではなく善枝さんを指すと思われる。