アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1019

『原文を読みやすくするために、句読点をつけたり、漢字にルビをふったり、中見出しを入れたり、漢字を仮名書きにしたり、行をかえたり、該当する図面や写真を添付した箇所があるが、中身は正確である』

【公判調書3189丁〜】

                  「第六十回公判調書(供述)」(昭和四十七年) 

証人=中田健治(三十四歳・農業)

                                            *

川越高校入間川分校(当時)

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山上弁護人=「それから五月一日、車で善枝さんをお迎えに行かれましたね。その行かれたのが六時五十分頃と言っておられる。その、車で迎えに行かれる直前まで何か菜っぱの仕事をしておったということですが、誰が一番初めに心配し出したんですか」

証人=「それは早くから心配はし始めておりました。雨が降り出すと一緒に」

山上弁護人=「誰が」

証人=「登美恵と自分が話合いながら仕事をしておりました。こうもり一本持って行っただろうかと言いながら仕事をしておったように記憶しておるんですが」

山上弁護人=「その時に車で迎えに行ったらどうだというようなことは誰が言い出したんですか」

証人=「荷造りが終わってからもう暗くなるから迎えに行こうということで行ったように記憶しておりますが」

山上弁護人=「それは誰が迎えに行ったらどうかと言ったんですか」

証人=「自分です」

山上弁護人=「あなたが誰にも言われなかったけれども車で行こうということで、思いついたんですか」

証人=「はい」

山上弁護人=「かつて善枝さんは無断外泊したということありますね」

証人=「・・・・・・・・・」

山上弁護人=「それははっきりしているんじゃないんですか。善枝さんが内田あきこさんのところへ雨の強い日に外泊したので翌朝登美恵さんが怒ったというようなことを、内田あきこさんのところに外泊したことありますね」

証人=「はい。一度あります」

山上弁護人=「これは無断で外泊したんですね」

証人=「そうですね」

山上弁護人=「その時には車で、わざわざ学校までは迎えに行ってませんね、あなた」

証人=「その時は行ってません」

山上弁護人=「何年生の時ですか、中学の」

証人=「記憶ないですが」

山上弁護人=「中学一年頃じゃないんですか。この事件のある二年くらい前じゃないですか」

証人=「その頃は、私まだ会計事務所に行ってた時期だと思いますが、そういうことは記憶ないんですが」

山上弁護人=「あなた公判廷でも言ってるように思うが、とにかく無断外泊して姉さんに怒られたということは知っておるんですか」

証人=「あまり自分は記憶ないんですが」

山上弁護人=「外泊ということがあったということは知っておるんですね」

証人=「はい」

山上弁護人=「あなたのところは当時電話が入っておりましたか」

証人=「入ってません」

山上弁護人=「私が調べたところでは、農協を通じて有線が入ってませんでしたか」

証人=「当時有線は入ってました」

山上弁護人=「これは学校なんかには間接ですが電話がいけるんじゃないですか」

証人=「中学は出来ます」

山上弁護人=「高校は」

証人=「高校は出来ません」

山上弁護人=「どうして」

証人=「農協を通さないと出来ないんです」

山上弁護人=「農協を通せば出来ますね」

証人=「はい」

山上弁護人=「私、分からないのは無断外泊した時にどなたも迎えに行ってないようだけれども、電話で確かめるということを一日には思い付かれませんでしたか。わざわざ車で迎えに行くというのは、その五月一日だけですね」

証人=「雨が強く降っていたもので、ただそういう気持になったろうと思うんです。ものすごい雨でしたから」

山上弁護人=「篠突く雨ということですね」

証人=「はい」

山上弁護人=「それで六時五十分頃というのはどうして分かるんですか。公判で六時五十分と仰っているからお聞きするんですが、五月九日付の中田健治さんの供述調書に、あなた五月九日頃自宅で警察官に調べられたことありますね」

証人=「はい」

山上弁護人=「その第二項に六時五十分頃出ましたということを言ってますが、それから公判調書の方は六時四十分頃でしょうか、と言ってますね。最初に警察で言った六時五十分というのは、どこから出て来たかということですが、日がそっちの方も新しいから記憶の方も・・・・・・」

証人=「あるいは調書を作る過程で、そういった何分ということも言ったんだと思うんですが、七時よりは前だったから五十分というようなそういうことで、じゃ十分くらい前かなということで述べたんじゃないかと思いますが、時計を持って歩いて、はっきりそういった点を記憶して調書の時に述べたということでもないんですが、はっきりした時間的な数字まで記憶しておりませんから」

山上弁護人=「まあそうすると大体のところを言ったわけですね」

証人=「弁護士さんも考えて見て下さい、遡って十年前の十分の差とか、何時何分前とかいうことは、はっきり分からないわけですから」

山上弁護人=「そういうお答えならば結構です。六時五十分と仰っておられるから、時計を見て仰ったのかを確かめておるわけですから。甚だ迷惑だというお気持ちはわかりますが、六時五十分とはっきり言っておるから、例えば七時前後とかいう仰り方ならば、ですが、とにかく何かをご覧になったんですかと聞いたわけです。昔のことだからわからんという風に言われたが、それはそれで結構でしょう」

証人=「・・・・・・」

山上弁護人=「この時に車を出したのはどこから出したんですか。車庫と納屋がありますが」

証人=「車庫だと思います」

山上弁護人=「それであなたは学校に行かれて入曾の方も回られてお帰りになったようですが、この時は時計を持っていかれましたか」

証人=「持っていったか、いかないか記憶ありません」

山上弁護人=「五月九日付の、私が先ほどご説明した調書によれば、相当詳しく時間が書いてあるんですけれども、あなたの記憶を思い出していただくために入曾駅にはあなた午後七時十五分か六分頃行ったようになっている、時計を見て確かめたものではありませんと言ってますが、それであなたが時計を持っておってそれを見たわけではないという趣旨なのか、駅には時計があると思いますが、駅の時計をも見なかったという意味なのか、どういうことですか」

証人=「駅の時計も見た記憶はありませんが」

山上弁護人=「そうするとまあ、六時四十分か五十分かはともかくとして、車に乗って迎えに出る時も、駅でも時計を見たことはないわけですね」

証人=「ええ」

山上弁護人=「そうするとあなたは、あなたの時計を腕にはめておったかどうかはどうです」

証人=「それも記憶ありません」

山上弁護人=「そうすると迎えに行って帰ってから時計を見たことはありますか」

証人=「食事をしながらだか、見たことあるような気もしますけども」

(続く)

(当時の入曾駅)

(証人の車。この写真は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用)