図面二〇四九丁裏面。下はその拡大写真。
何と記入された文字にまで二本線が見られるではないか。
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【公判調書3156丁〜】
「第五十九回公判調書(供述)」(昭和四十七年四月)
証人=上野正吉(六十四歳・東邦大学医学部教授)
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城口弁護人=「これは、極めて、平行して、きれいに出てるわけですね。あたかも、私の目で見ますと、同時に二つの線が写ったんじゃないかと感じられる面もあるんですが、いかがでしょうか」
証人=「なかなかいい考えだと思いますが、どういうことで出来ますか」
城口弁護人=「そこを一つご鑑定いただきたいという面もあったのですが」
証人=「不思議です。あとで骨筆でしたにしては、あまりに平行で、あなたの仰る通りです」
城口弁護人=「ちょっとその点ではっきりしない」
証人=「ええ、分かりません」
城口弁護人=「今ご推察したことと関係するのかと思うんですが、片や、道路などにおいては二重になっておって、字の部分のいくつか、『入間川エキ』とか『入間川タクシー』ですね、については二重になってますが、その他の、図面の上部にある部分については一重ですね」
証人=「一重のもありますね」
城口弁護人=「これは、非常に、上の方に揃ってありますね」
証人=「はい」
城口弁護人=「これとの関係はいかがでしょうか」
証人=「不思議ですね」
城口弁護人=「何か、今の点についてお考えいただけることがあるでしょうか」
証人=「今思い付けませんが、どうしてこういう綺麗な平行線がつくれるか」
城口弁護人=「それから同じ図面で、先ほど裁判長からも質問があった点ですが、鑑定書十八ページの第六項のところで質問があったと思いますが、表面には、骨筆による溝があるのに、裏面にはこれが写し出されていない部分が多数ヵ所で見られる、という点ですね。これを強いて考えれば、三度目の複写で片面カーボンを用いたためという考え方も成り立つというのですが、これはどういう形でやると片面カーボンでこういう風に写し出される可能性があるのですか。これは先ほど聞いたものですね」
証人=「片面カーボンですと、この紙の裏には写らないわけですね、相手の方には写るけれども、そう見ざるを得ないわけです。筆圧痕があるけれども、裏にはないということは、片面カーボンです」
城口弁護人=「それが、今見ていただいたように道路部分、もしくは『エキ』だとか『タクシー』という字の表示、これは二重に写し出されているわけですね」
証人=「はい」
城口弁護人=「そうしますと、写り得る、いわば両面カーボンのごときものが入ってないとおかしくなるかと思うんですね」
証人=「あなたの仰ることは分かりません」
城口弁護人=「明確に二重に写し出されておりますね。先ほどのあなたのお考えですと、一つは、最初、上から鉛筆で書いた場合に出来ただろうというのが一つと、もう一つは骨筆などで、その後で書いただろうということで二重に出来ただろうというお話がありましたね。そしてその平行線は極めて精密なので不思議に思うというお話でしたが、もし、二回目の話で二重に写るならば両面カーボンが入っている可能性の方が強いだろうと思うのですが、それはいかがでしょうか」
証人=「両面カーボンで二重に写るということは」
城口弁護人=「二回目の場合ですね、私もこの部分がどうして出来たか分からないから、質問がはっきりしないのですが、少なくとも裏面に写し出された部分と写し出されていない部分があるということですからね、片面カーボンで書いたとした時に、全然写らないというのが合理的な考え方じゃないかと思うんですが、それが片面カーボンを用いたために、そういう写らない部分も、写った部分も出てくるということをお考えになった根拠ですね、そこの問題なんです」
証人=「写らない所は、この私の鑑定書の赤線で書いてある所だけですよ、限られております」
城口弁護人=「そうですね」
証人=「あとの道路とか、説明の文句は全部両面カーボンで出されております。だからその部分が、山みたいな模様ですね、波型のその部分に随分、片面写し出されてない所があるわけです」
城口弁護人=「どうして両面カーボンでその部分が写らないとお考えでしょうか、それともその部分、極めて部分的な、その部分だけ、片面カーボンを使ったと」
証人=「そんなことはありません」
城口弁護人=「そういうことは全然考えないですね」
証人=「はい」
城口弁護人=「そうすると使ったにも拘らず、この部分だけが写し出されてないわけですね」
証人=「鑑定書の十四ページのところに赤い表示がなされている部分です、この部分というのは、そのことを指しています」
城口弁護人=「ちょっとよく分かりませんか」
証人=「私には何のことやら分かりません、これは」
城口弁護人=「そうしますと、鑑定書十八ページの後ろから四行目、『これは強いて考えれば、三度目の複写で片面カーボンを用いたためという考え方も成り立つが』という部分ですね、この点について不明ということですか」
証人=「ですから、それはこちらに写ってないから、筆圧痕がある以上、こちらのほうに写すための操作が取られた、それが写すためなら片面カーボンということです」
城口弁護人=「その点だけを捉えればですね」
証人=「そうです」
城口弁護人=「すると、十四ページのところの赤く示された部分が写ってないのは、他との関係ですね」
証人=「他との・・・・・・」
城口弁護人=「簡単に言えば、写っていない部分だけが片面カーボンを使ったと、こういうことになりますか」
証人=「そんなことは、出来っこないじゃないですか」
城口弁護人=「そうすると、これはちょっとおかしいと思うんですが」
証人=「あとの所は、完全に一致すれば片面カーボンでいいわけです」
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裁判長=「ちょっと弁護人、鑑定書で、どこにあるかということを、鑑定書の文字で、部分を言って下さい」
城口弁護人=「ちょっと書かれてないようですが」
裁判長=「書かれてないならば、あなたの所見についてお尋ねになるならいいけれども」
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城口弁護人=「はい、そうです、もう一度申し上げますと、鑑定書十四ページのところにある図面おもての『があど』という部分から『入間川エキ』という部分に向かってくねくねとした線が書かれ、特に『があど』という部分の辺りに赤く示されたところは、裏面では出ていないとされているわけですが、おもての状況は、二度に書かれたものであるということは、間違いないのですか」
証人=「二度というのはどういう意味ですか」
城口弁護人=「二重に書かれてますね」
証人=「二重ですね、裏側は一重です」
(続く)
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こちらの図面は二〇四九丁の表。