アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 1005

【公判調書3141丁〜】

                    「第五十八回公判調書(供述)」

証人=高村 巌(六十一歳・文書鑑定業)

                                            *

橋本弁護人=「話は変わりますが、被検文書と照合文書とを通じて、一番たくさん使われている文字は何であるか調べましたか」 

証人=「それは調べたと思います。記憶に今、残っておりませんが、あると思います」

橋本弁護人=「あなたはこれ一番初めに『か』から始まりまして一つ一つ個々の文字の類似点を指摘しておるわけですね」

証人=「はい。違う字も指摘しておると思いますが」

橋本弁護人=「『か』という字から始まって、『ぶ』という字まで、個々の文字の類似点相違点を指摘しておりますね」

証人=「はい」

橋本弁護人=「個々にあげられた文字、これは何と呼ぶんですか。専門家は」

証人=「・・・・・・・・・」

橋本弁護人=「検査の対象にした文字を」

証人=「いや、これはこれだけを検査の対象にしたというんじゃなくて、このサンプリングしたものは大体これが第三者には分かりいいんじゃないかと思うものを出したんで、他の文字についてもやっておるわけです」

橋本弁護人=「全文字について検査はしましたか」

証人=「全部と言えるかどうか分かりませんが、この文字については、この中で最も分かりやすいものが、鑑定書の中に私が任意に選び出して来ているんですから」

橋本弁護人=「そうすると殆どの文字について検査したと」

証人=「ええ」

橋本弁護人=「そうすると鑑定書にあげたのはどういう風に表現したらいいですか。任意のものですか、何等かの基準があったのですか」

証人=「これは説明するために最も適当だと思われる文字を抽出したわけです。そして出したんですね」

橋本弁護人=「説明するために、というとどういう意味ですか」

証人=「鑑定書を読む人に分かりよく説明するためです」

橋本弁護人=「鑑定書を理解しやすくするためにということですか」

証人=「ええ。昔は、写真がない時代はあんまりこういう説明はされなかったらしいんですが、アメリカなんかでも事件によっては写真などは付けておりません。私はFBIに行って見て参りましたけれども、写真など付いてないのがありましたね、結論だけを出して。しかしこういう写真があれば、こういうものかということが鑑定書をお読みになる方にもお分かりになると思います。向こうでも付けないものも付けるものもありますが、日本では大体鑑定人は付けておると思います」

橋本弁護人=「そうするとここにあげた『か』から『ぶ』までの各文字について、特別の基準があってこれをあげたわけじゃなくて、単にあなたの、鑑定書を理解しやすくするため便宜かかげたものだと」

証人=「そうです」

橋本弁護人=「類似点の多い文字の順序にあげたわけじゃないんですか」

証人=「そういうわけでもないかと思いますが・・・、その一番最初に・・・」

橋本弁護人=「『か』ですか」

証人=「『か』という字が一番最初に、一番上欄にあったので、最初に『か』を持っていったんじゃないかと思いますが」

橋本弁護人=「何に」

証人=「被検文書の一番上欄に」

橋本弁護人=「ありますけれども一番最初は『子供の命がほ知かたら』で、『の』ですね、平仮名で言うと。その次が『か』ですね」

証人=「ああ、そこのところはどういう理由だったか、今記憶しておりませんけれども」

橋本弁護人=「被検文書、照合文書、両文書の中で最も多く使われているということで選び出したという、そういう配慮はしなかったんですか」

証人=「そういう配慮をしたかどうか記憶が、今、だいぶ前のことでよく分かりませんですね」

昭和四十七年二月二十三日 東京高等裁判所第四刑事部

                                                     裁判所速記官 沢田怜子

写真は被検文書、すなわち脅迫状の『の』と『か』(正確には"が") である。弁護人の言わんとすることは百も承知するが、脅迫状の書き出しは「このかみにツツんでこい」とある。

するとこの「このかみにツツんでこい」という文言は被検文書には含まれなかったのかもしれない。

                                            * 

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【公判調書3144丁〜】

                     「第五十九回公判調書(手続)」

○押送に関する被告人の発言

   被告人は証人宮内義之介の尋問に先立ち、特に発言の許可を求め、次のとおり発言した。

(発言の内容)

法廷の出入りのため廊下の所を通る時、解放同盟の人達が応援のため日比谷公園に集まっているのが見えると思って、看守の人達が壁を作ります。それが今日は特にひどかったので、私には、それが解せないので抗議しました。

行く時も帰る時も廊下へ入る境目の手前、つまり、日比谷公園が見える所の手前で、一旦止まれと言って、看守が壁になったので抗議したのです。それに対し、警備隊長が「君の指図を受ける必要はない」と言いました。私は、拘置所の指図に従わなければなりませんが、出かける前に指示して、黙ってそうすればいいと思うのです。

やっていけないとはいいません。やっていいから、わざわざ見えるようになってからやるのが不可解なのです。

そういう事は、検事がやらせているのだろうと思います。

前もって「今日は壁を作るから」と言っておいてくれればいいのです。

                                                                                       以上

                                            *

(続く)