アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 995

【公判調書3109丁〜】

第五十八回公判調書(手続)        昭和四十七年二月十五日

                                           略

福地弁護人=本日の事実取調請求は取りあえずしたものである。というのは本月七日検察官手持ち証拠の開示を受けたのは当弁護人一人であり、その謄写については検察官と交渉中であってまだ謄写ができておらず、その証拠について弁護人間で十分な検討ができていないからである。それで、右証拠の謄写ができそれらを弁護人間で検討した結果によっては本日取調請求したものの一部を撤回し、あるいは更に追加請求することもあり得るわけである。その撤回、追加等については早急に申し出るが、その申し出をするまでは本日取調請求した証拠についての決定は留保されたい。

なお、宮内、上野両鑑定人のいわゆる筆圧痕に関する鑑定については両鑑定人の証人尋問を請求する考えである。その証人尋問は本日指定する公判期日に行なうこととされても差しつかえない。

                                            *

指定告知した次回公判期日

昭和四十七年四月十五日 午前十時

昭和四十七年四月十八日 午前十時

昭和四十七年六月十五日 午前十時

昭和四十七年六月十七日 午前十時

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昭和四十七年三月六日           東京高等裁判所第四刑事部

                                                         裁判所書記官 飯塚  樹

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【公判調書3111丁〜】

         「証拠開示についての弁護人及び検事の陳述」

佐々木哲蔵弁護人

  「弁護人は従来検察官に対し検察官手持ちの証拠で法廷に出されていないもの全部を弁護人に開示するよう求めて来たところ、本月七日にその一部を得、弁護団としては被告人の防御のために非常に有利な、また大事なものを発見したと確信しているものである。そこで、本件に関連して検察官が集めた手持ちの証拠全部を弁護人に開示することを改めて検察官に要求する。

    従来検察官からは開示を求める証拠はそれを特定するようにとの要求があり、弁護人としてはできるだけ特定するのが筋道であるが、本月七日でき得る限り特定して一部開示を得たもののほかは、弁護人としては特定の仕様がなく、とりあえずは本件の関係で検察官が収集した証拠書類、証拠物と言うしか特定の仕方がないわけである。

    証拠の開示は訴訟指揮権によって受けることも場合によっては可能であるわけであるが、今弁護人が言うのはそれによってではなく、本件の性質上、また、検察官は公益の代表者であるという立場から、開示をしてほしいと求めているのである。本件は死刑事件であり、当審は最終の事実審であるところ、まだまだ解明を要する点があるように思うので、悔いのない証拠調をしてほしいわけであるが、そのためには検察官も公益の代表者として是非協力していただきたい。

    なお、弁護人としても実体的事実を追究しているのであるが、検察官が被告人にとって不利な証拠と考えているものであっても弁護人から見れば被告人に不利ではないというものもあるかも知れないのであるから、有利、不利にかかわらず全証拠を開示されたい」

松本弁護人

   「刑事裁判は当事者主義をとっているが実体的事実の発見を目的としており、実体的事実を究明する場合には検察官の弁護人に対する関係証拠全部の開示は不可欠であると考える。このことは、犯罪事実が直接証拠によって証明されず、間接証拠、情況証拠によってしか説明されていないという場合には特に言えることである。というのは、直接証拠は代替性のない証拠であるが情況証拠はその適用いかんによっては非常に代替的であるからである。

   本件捜査過程において被告人が犯行と結び付けられたについては、被告人の血液型がB型であること、被告人が手拭、タオル、スコップ等を入手し得る地位にあったことが非常に有力な証拠とされているが、これらは何れも単なる情況であって、被告人を犯行に結び付ける直接証拠は誤った筆跡鑑定以外にはなく、従って直接証拠は全く欠如しているわけである。そして、被告人以外にも被告人と同じような情況にあったと推測し得る人が多数存在していたと言うことができ、従って被告人に関連する情況証拠だけを検討したのでは足りず、犯行に結び付け得るすべての人についての関係証拠全部を検察官が開示することによって、被告人にとって正しい防御ができるものと考える次第である。

   しかしながら、まだ膨大な証拠が開示されていないということが推測され、当弁護人個人が指摘できるものでも次のものがある。

前回の諏訪部証人の証言によれば、スコップ発見現場の北西方約三百メートルの地点付近で地下足袋が発見され、それを押収し、発見現場について実況見分をしたということであるから、その地下足袋及び実況見分調書。死体発見現場東方の林の中に発見された小屋につき捜査員が撮影した写真を見たということであるから、その写真。スコップ発見地点の足跡について実況見分をしたということであるから、その調書。また、同証人はあることを認めなかったが当然あると思われる本件犯行に使用された「寿」の文字のあるビニール風呂敷についての捜査書類。

なお、被害者の時計の保証書、それがなければ紛失した等についての捜査報告書等。品触れの見本に使用した時計についての報告書。死体発掘現場から発見された丸京青果の荷札。被害者の死体の顔面に相当するところにあったビニール片についての捜査関係書類。

被害者中田善枝についての交友関係、特に男友達についての供述調書その他捜査関係書類。同被害者が被害当日学校を出発した点についての捜査関係書類。

中田健治の五月一日の全行動について究明した捜査関係書類。    

被告人の五月一日から五月四日までの、あるいはその前後の行動に関する捜査書類。この点については、被告人は五月二日には川本保男らと映画を見に行っているし、五月四日には水村正一、石川太平と被害者の死体発掘を見に行っているのでこれらの者を含めて捜査した書類があるはずであり、なお、被告人の父母、兄六造、妹美智子らの供述調書等もあると考えられる。

また、石田豚屋関係の人たちにつき血液型、筆跡等を調べたのであればその資料。奥富玄二の遺書の筆跡についての鑑定書。

死体発掘の際の実況見分調書に添付されている写真が少なく、もっとあるはずであるからその写真のネガフィルム及び印画。

死体の鑑定書に添付の写真も少なく、胃の内容物、死斑等も鑑定書の文言でしかわからないが、これらの写真もまだあると思うのでその写真。

以上のもの及びその他全部の検察官手持ちの証拠を開示されたい」

福地弁護人

「当弁護人は本月七日検察官からその手持ち証拠の一部の開示を受けたが、その中には、ポリグラフ関係、被害者の本件当日の足取り関係、スコップについての捜査書類、鞄発見経過についての捜査報告書、五月二日夜の佐野屋付近の張込み関係についての捜査報告書、実況見分調書、被害者の家族の供述調書等があった。これらは検察官手持ちの証拠のごく一部であると思うが、このごく一部のものでも当審で争点となっていることの解明に多くの手掛かりを与えるものであると思われるのである。従って、全証拠が開示されれば本件の真相解明に役立つ証拠も現われるであろうと考えられるので、全証拠を開示するよう要求する」

宮沢弁護人

「当弁護人は、本件の捜査は非常に主観的な捜査に陥っていたのではなかろうかと考えているのであるが、この捜査について特徴的に言えることは捜査に当たった警察官が捜査報告書を丹念に作っていることでありその量は莫大なものであると考えられるのであって、検察官が手持ち証拠を全部開示すればその捜査自体を検討する重要な手掛かりになると思うのである。たとえば、脅迫状に書かれた『少時』についての捜査書類、本件時計の捜索に関する捜査報告書、同時計が被害者のものであったかどうか等についての捜査報告書、手拭いについての捜査書類等もあるはずであり、本件のようにはっきりした証拠がない場合これらのものが事案の解明に役立つと思うので、検察官はすべての手持ち証拠を開示されたい」

山梨検事

「証拠開示は、検察官が立証をする段階で弁護人が反対尋問のために証拠を開示せよというのが普通のケースである。ところが本件では出すべき証拠は一審で全部出しているのであり、こういう段階での証拠開示となると現在その必要性があるかどうか疑問である。しかし、検察官としては、弁護人が具体的必要性を示して一定の証拠の閲覧を求めた場合その閲覧が被告人の防御のため特に重要であり、かつ、これにより罪証隠滅、証人威迫等の弊害を招来するおそれがなく、相当と認められるときは閲覧させることを考えてもいい、という昭和四十四年の最高裁判所判例の趣旨に則って今日まで来たわけである。そして、検察官は本月七日に相当程度の手持ち証拠を弁護人に閲覧させたわけであるが、弁護人がそれに基づいて更に証拠調請求をするということであると証拠開示は何のためにするのかということになってしまうのであり、むしろ、閲覧させたものについては全部弁護人が証拠とすることに同意して証拠調をし、その証拠について弁護人がなお確かめたい点があるという場合には裁判所にそれに関連する証拠調の必要性を判断してもらうこととする、というのであればいいと思う。

弁護人は、証拠開示を受けた結果、被告人の防御に必要なものがあったという風に言うが、どの程度必要であるのか検察官にはわからないし、ただ、手持ち証拠が当然あるはずだから開示せよと言うのでは一概にその要求に応ずるわけにはいかない」

松本弁護人

「弁護人としてはまず検察官手持ちの全証拠を弁護人に開示してもらい、弁護人が必要と考える証拠は弁護人が取調請求するという形にすべきであると考える」

佐々木哲蔵弁護人

「証拠開示については、なお急速に検察官と話合いの場を持って話合いを進展させたい」

山梨検事

「話合いをすることは結構である」

                                                                               以下余白

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本文とはまったく関係ないが、うちの近所に馬がいたのだ。

一心不乱に草を喰うこの馬は、どうやらこの近くで飼われているようで、放し飼いではなさそうだ。