アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 994

【公判調書3104丁〜】

               「第五十七回公判調書(供述)」(昭和四十七年)

証人=諏訪部正司(四十八歳・浦和警察署刑事第一課長)

                                           *

石田弁護人=「中田善枝さんが中学時代の同級生である男子高校生と一緒に帰宅することも、たびたびと言いますか、何回かあったというような事実も掴んでおられたんではありませんか」

証人=「それは掴んでおりません」

石田弁護人=「同じく、善枝さんの付近の同じ女子高校生の人で、入間川分校に通っている女子高校生で別の通学路を学校に通学路として届け出ていた人もいましたですね」

証人=「私はその捜査の復命は直に私聞いておりません」

石田弁護人=「そういう趣旨の復命書が当時、集められ、報告されていたことはご存じですね」

証人=「はい」

石田弁護人=「善枝さんの交友関係とか通学路であるとか、そういった関係の捜査というのは相当長期間続けられたでしょうか」

証人=「それは長期間はやっておりません」

石田弁護人=「いつ頃まで」

証人=「死体発見の四日までが主としてやっておられました」

石田弁護人=「全体であたられた数は、もう一度念のためにお伺いしますが何人くらいでしょうか」

証人=「恐らく、どうも記憶がはっきりしませんが、五、六人くらいの程度じゃないかと思います。その後に増えたのかは分かりません。不審者として捜査したような場合には、それは分かりません。それが同級生であるかないかと、そこまで掘り下げたことは聞いてません」

                                            *

山梨検事=「一回目の被告人宅の捜索の際に、証人は天井裏を見たという証言を先ほどなさいましたね」

証人=「はい」

山梨検事=「具体的に天井裏を見たというのは、どういう風なことをやられたんですか」

証人=「記憶が、ただ天井裏を見たと」

山梨検事=「見たというのは、天井へは、どこか上がり口があるんだろうと思うんだがね」

証人=「押入れか何かが開いてまして、そして、そこへ上がって見たという」

山梨検事=「=「上がってというのは、どういう風に上がったんですか」

証人=「押入れは通常の場合は天井上がり口というのがあるんですが、そこをどかして上がった記憶が・・・」

山梨検事=「上がったというのは、押入れに上がったという意味ですか」

証人=「天井へ上がったという、こういう風な・・・」

山梨検事=「天井へ上がって、それからどうしましたか」

証人=「天井へ上がって、まあ、見渡す限りのところを」

山梨検事=「明かりは真っ暗でしょう」

証人=「これは懐中電気・・・・・・・・・割合に明るかったですね。懐中電気を使ったですね。天井裏明るかったですよ」

山梨検事=「そうすると、そのうえ上がって、そして見渡したというわけですか」

証人=「そういうことです。身体中、足まで上がったという意味ですね」

山梨検事=「そうすると、天井裏這い回ったということはやったんですか」

証人=「そこまでやりません」

山梨検事=「一旦、天井裏へ上がって、辺り四方を眺めたと、こういうことですね」

証人=「はい」

山梨検事=「では、天井の梁の向こう側やら、そういうところには幾らでも、まだあると言えばあるわけですね、隠してあるということになれば」

証人=「そういうことも考えられます」

山梨検事=「普通、まあ、天井裏までよくやれというのは、捜索なんかの際、よく言われることなんですけれどもね、実際の実情はどうなんでしょうか、その程度のものでしょうか」

証人=「まあ、残念ながら、その程度ということですね」

山梨検事=「それから、その時ですか、あるいは二回目ですか、井戸をやられたということがありましたがね、井戸の中まで捜索したということ記憶ありますか」

証人=「はい、あります」

山梨検事=「これは、あの他人の敷地内だということなんですがね、令状か何か持って行ったですか」

証人=「直接、その私自身が責任者として行ったんではなく、それをやるからというんで、ついて行った記憶があるんですが、令状でやったかどうか、ちょっと記憶がありません」

山梨検事=「令状でやれば、書類が残っているんですがね」

証人=「残っていれば令状ですね。たまたま、まあ、あの端緒というのが、そこに何かあれですね、証拠品があるという意味の聞込みを得たんで実施したと記憶してます」

山梨検事=「それは被告人の敷地内ではないんですね、その場所は」

証人=「敷地内と言ってもいいぐらいの・・・・・・あれは名前が違ってましたね。とにかく、そのすぐ、被疑者の敷地と本当に接近してた、隣り合わせていたと、境界を隣り合わせていたと、こういう風な記憶があります」

山梨検事=「それから、これも先ほど弁護士さんが聞かれたことなんだが、ビニールの風呂敷の出所について捜査をしたか、しなかったかという問題なんですが、先ほどは弁護士さんは実況見分書に書いてある中田健治の言ったことということだけを引用してあなたに尋ねられたんだが、一審では中田健治が証人に出てね、あのビニールの風呂敷は善枝が自分の自転車の荷台の下に敷いてあったものだという証言をしているんだが、そういう調べをしているんじゃないですか」

証人=「その点、やってますね。忘れてしまったもんですから、ああいった証言をしましたが」

                                            *

裁判長=「じゃ、今のところ、ちょっと、検察官の言われるのはね、また、弁護人のさっき言われるのもね、検察官の言われるのは、原審の七回公判の三十八年十一月二十一日に中田健治が出てきて、裁判所の証人として宣誓の上、証言をしたときに、そう言っているということを検事は言っている、それから、弁護人と検事が、今、最後に言われたのは、捜査官として捜査の時代にその点の捜査をしたかということなんですよ」

証人=「ただ、それだけで打ち切ってしまったんですね」

                                            *

山梨検事=「今の意味はどういう意味ですか」

証人=「ということはですね、そういう風に具体的というか、話を、ヒントを得ると思い出すんですが、記憶が忘れてしまうわけですが、確かに今言われたようなあのビニールは今、検察官の言われたように中田健治ですか、これがそういう話をしたということが浮かびましたですが」

                                            *

裁判長=「いや、検事の言われたのは、話をしたというのがね、そこが曖昧になっていけないんだね。つまり、裁判になってから、公判で証人として言ったのをあなたがそういう話を聞いたというのか、それとも、警察、検事の手にある時分、まだ起訴もされない、裁判にならない時分、捜査段階において、その点を追及して、このビニールの赤い模様のあるお祝いの風呂敷というものを、どこから得たかということを、捜査を進めたかどうかということを聞いているわけです。それを答えて下さい」

証人=「ですから、そのあれですね、捜査はやっておりません」

                                            *

山梨検事=「だからね、こういうことなんですよ、警察の段階で、要するに、中田健治証人が法廷へ出たというのは、法廷で初めてそういうことを言ったのか、捜査段階でもそういうことを言っていたのかどうか、ということです」

証人=「捜査段階でも言ってたと思います」

山梨検事=「それについては何か上申書か、供述書があったのか、なかったのか」

証人=「恐らく、あるとすれば、清水警部あたりが取っていると思います」

山梨検事=「だからそういう風にその風呂敷が結局、中田家から出たものだということで、出所が判ったので、それで捜査を打ち切ったと、そういう意味なんですね。あなたの言わんとするところは」

証人=「そういう意味です」

山梨検事=「それからあなたはね、ポリグラフの承諾書を何回取ったですか」

証人=「取れば一回ですね」

山梨検事=「前回の十一回公判調書にも、一度のように記憶してますと言ってますね」

証人=「はい」

山梨検事=「そうすると、まあ、これは実は三回あったんですね、三回の中に一度の承諾書を証人がお取りになったと、こう聞いていいわけですか」

証人=「その点、記憶が薄いもので、一つは必ず取ったということだけはありますけれど、書類があるとすれば、その方が正しいが、一つだけは記憶があります」

山梨検事=「要するに、問題は五月二十三日にあなたが取ったという記憶があるのか、ないのか。先ほどの弁護人の質問は五月二十三日のポリグラフがあるはずだから、承諾書も当然その日に取ったはずだという、こういうお尋ねなんだが、あるいは、二回目の承諾書を取ったかも知れない、三回目の承諾書を取ったかも知れない。そうすると、五月二十三日から、かなり遅れた時点であるかも知れないと、こういうことになるわけだが、その点を」

証人=「書類に残っている以外には記憶が忘れたということきり、申し上げられませんですね」

山梨検事=「それから、これは念を押して伺っておきますが、死体発掘現場付近にあった山小屋の写真とか実況見分調書、これは、まあ、検察庁にはないんですが、これは先ほどあなたはそういう写真やら、実況見分を見たという風なことを仰ったんですが間違いないですか」

証人=「書類になければ自信がありませんですね」

山梨検事=「あるいは、検察庁に送らないで、警察にあるということも考えられるわけですか」

証人=「これもあれです。私どもは直接、見分もやっておりません。口頭報告で聞いた記憶を先ほどは申し上げました」

                                            *

松本弁護人=「写真を見たと言ってる」

証人=「写真は、何かあそこに雑誌があったという話と、あとの『りぼんちゃん』という本との混同しているような記憶になってしまったんで」

松本弁護人=「先ほどビニールの寿の風呂敷について検事さんが聞いたところが、これは被害者が持っておったというようにあとでこの法廷で健治が証言しておると、つまり、裁判所で証言しておるということについて、それから記憶を喚起されて、結局、そうであったかも知れない、捜査を打ち切ったんだと、こう答えましたね」

証人=「はい」

松本弁護人=「ということは、私、一問に要約いたしますけれども、そうするとあの祝の風呂敷については、その製造元について調査していないことはもちろん、健治以外のほかの人々、栄作さんであるとか、あるいは登美恵さんであるとか、という風な兄弟、親戚関係含めて、一切調べをしないで、健治に対する発問だけで、上申だけで捜査を打ち切ったと、こういう意味ですね」

証人=「はい」

                                                                  (以上  佐藤房未)

昭和四十七年二月二十一日   東京高等裁判所第四刑事部

                                                      裁判所速記官  佐藤治子

                                                      裁判所速記官  重信義子

                                                      裁判所速記官  佐藤房未

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被告宅の家宅捜索状況の写真。捜索は井戸すら徹底的に行なわれたが、それが隣人の敷地内に掘られたものだったとは新事実である。